17:15 〜 19:15
[SMP28-P14] 脱蛇紋岩化反応で生じるブルーサイト/オリビン界面の理論的解析:
分子動力学計算からの検討

キーワード:分子動力学計算、オリビン、ブルーサイト、トポタキシー、鉱物界面、脱蛇紋岩化
ウェッジマントル浅部では、アンチゴライト(Mg, Fe)6Si4O10(OH)8とブルーサイトMg(OH)2が脱水して、オリビン(Mg, Fe)2SiO4を形成する。近年、Nagaya et al. (2022)により、この反応におけるブルーサイトとオリビンとの間のトポタキシーが報告された。これが正しいとすると、従来考えられてきた反応条件やウェッジマントルの鉱物分布に大きな影響を及ぼす可能性があるため、ブルーサイト-オリビンがトポタキシャルな関係であるかを明らかにすることは極めて重要である。本研究では、ブルーサイトが脱水してオリビンが生成する際の界面構造に着目し、分子動力学(Molecular Dynamics: MD)計算を用いて、蛇紋岩中のブルーサイトの結晶方位は、新たに生成するオリビンの結晶方位を制約するかを、理論的に解析した。
Nagaya et al. (2022)で用いられた天然および実験の資料では、反応界面としてブルーサイト(brc)の(001)面(001)brcが確認できる。このブルーサイト/オリビン(ol)界面においては、ブルーサイトのc軸に対して、オリビンのc軸がわずかに(~20°)傾いていることが示された。極図を用いて結晶方位を再現し方位関係を調べたところ、(001)brcに対して、オリビンの(011)olが平行であった。(001)brcおよび(001)olは、共に結晶外形に現れる安定な面である。一方、(011)olは(001)olよりも安定性が低く(de Leeuw et al., 2000)、結晶外形にも現れない。より安定性の低い(011)olと(001)brcが界面をつくる要因を検討するため、(001)brc 、(001)ol 、(011)olで切断した結晶構造モデル、および(001)brcとオリビン各面との界面構造モデルを作成して、MD計算で表面・界面のエネルギーを比較した。脱蛇紋岩化反応は脱水反応であり、反応界面に水が存在すると考えられるため、オリビンの切断面に水素を付加したモデルについても計算をおこなった。MD計算はソフトウェアMXDTRCL (Kawamura, 1998)を使用し、ポテンシャルパラメータは、各鉱物の結晶構造をよく再現するSakuma et al.(2003)およびMiyake(1998)によるものを用いた。なお、本研究では、オリビンのMg端成分であるフォルステライトMg2SiO4について計算をおこなっている。
MD計算の結果、オリビンの結晶表面としては(001)olが最も安定となった。これは従来の結果と整合的である。一方、切断面に水を付加したときの表面エネルギーは、オリビンの(001)面に水を付加した(001)ol+Hよりも(011)ol+Hの方が小さく、安定であった。さらに、水を付加したオリビンとブルーサイトとの界面エネルギーを比較したところ、(001)brc/(011)ol+H界面が、よりエネルギーが小さく、安定となることがわかった。
ブルーサイトが豊富な蛇紋岩中では、Si4+ ⇔ 4H+の置換が起こることが知られている(Kempf et al., 2018)。そこで、(001)ol+Hおよび(011)ol+Hの表層1レイヤー分のSi4+を4H+で置換した界面モデルを計算したところ、(001)brc/(011)ol+H界面の方がより安定であることがわかった。これは、ブルーサイト表面におけるオリビン形成初期のSi4+が乏しい環境でも、この界面が形成されやすいことを示唆する。以上のように、(001)brc/(011)ol+H界面がより安定であったことは、天然の結果と整合的であり、脱蛇紋岩化反応におけるブルーサイトとオリビンのトポタキシーを支持するものである。
引用文献
1. Nagaya, T. et al., 2022. Contrib. Mineral. Petrol. 177, 87.
2. de Leeuw, N. et al., 2000. Phys Chem Min 27, 332–341.
3. Kawamura, K., 1997. Japan Chemical Program Exchange #77
4. Sakuma, H. et al., 2003. Surface Science 536, 1–3, L396-L402.
5. Miyake, 1998. Mineral. Jour. Lett. 20, 4, 189-194.
6. Kempf, E.D., Hermann, J., 2018. Geology 46 (6): 571–574.
Nagaya et al. (2022)で用いられた天然および実験の資料では、反応界面としてブルーサイト(brc)の(001)面(001)brcが確認できる。このブルーサイト/オリビン(ol)界面においては、ブルーサイトのc軸に対して、オリビンのc軸がわずかに(~20°)傾いていることが示された。極図を用いて結晶方位を再現し方位関係を調べたところ、(001)brcに対して、オリビンの(011)olが平行であった。(001)brcおよび(001)olは、共に結晶外形に現れる安定な面である。一方、(011)olは(001)olよりも安定性が低く(de Leeuw et al., 2000)、結晶外形にも現れない。より安定性の低い(011)olと(001)brcが界面をつくる要因を検討するため、(001)brc 、(001)ol 、(011)olで切断した結晶構造モデル、および(001)brcとオリビン各面との界面構造モデルを作成して、MD計算で表面・界面のエネルギーを比較した。脱蛇紋岩化反応は脱水反応であり、反応界面に水が存在すると考えられるため、オリビンの切断面に水素を付加したモデルについても計算をおこなった。MD計算はソフトウェアMXDTRCL (Kawamura, 1998)を使用し、ポテンシャルパラメータは、各鉱物の結晶構造をよく再現するSakuma et al.(2003)およびMiyake(1998)によるものを用いた。なお、本研究では、オリビンのMg端成分であるフォルステライトMg2SiO4について計算をおこなっている。
MD計算の結果、オリビンの結晶表面としては(001)olが最も安定となった。これは従来の結果と整合的である。一方、切断面に水を付加したときの表面エネルギーは、オリビンの(001)面に水を付加した(001)ol+Hよりも(011)ol+Hの方が小さく、安定であった。さらに、水を付加したオリビンとブルーサイトとの界面エネルギーを比較したところ、(001)brc/(011)ol+H界面が、よりエネルギーが小さく、安定となることがわかった。
ブルーサイトが豊富な蛇紋岩中では、Si4+ ⇔ 4H+の置換が起こることが知られている(Kempf et al., 2018)。そこで、(001)ol+Hおよび(011)ol+Hの表層1レイヤー分のSi4+を4H+で置換した界面モデルを計算したところ、(001)brc/(011)ol+H界面の方がより安定であることがわかった。これは、ブルーサイト表面におけるオリビン形成初期のSi4+が乏しい環境でも、この界面が形成されやすいことを示唆する。以上のように、(001)brc/(011)ol+H界面がより安定であったことは、天然の結果と整合的であり、脱蛇紋岩化反応におけるブルーサイトとオリビンのトポタキシーを支持するものである。
引用文献
1. Nagaya, T. et al., 2022. Contrib. Mineral. Petrol. 177, 87.
2. de Leeuw, N. et al., 2000. Phys Chem Min 27, 332–341.
3. Kawamura, K., 1997. Japan Chemical Program Exchange #77
4. Sakuma, H. et al., 2003. Surface Science 536, 1–3, L396-L402.
5. Miyake, 1998. Mineral. Jour. Lett. 20, 4, 189-194.
6. Kempf, E.D., Hermann, J., 2018. Geology 46 (6): 571–574.