日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP28] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:永冶 方敬(東京学芸大学)、山岡 健(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)

17:15 〜 19:15

[SMP28-P15] XRDを用いた変成岩の後退変成作用の特徴と空間パターンの可視化: 三波川変成帯の東五良津岩体の例

*田邉 凌雅1松野 哲士1ダンダル オトゴンバヤール1、大坂 恵一2宇野 正起1岡本 敦1 (1.国立大学法人 東北大学大学院 環境科学研究科、2.公益財団法人 高輝度光科学研究センター(JASRI))

キーワード:三波川変成帯、水和反応、UMAP, PCA、XRDリードベルト解析

沈み込み帯プレート境界における流体活動は、大規模な元素移動や地震活動などの動的プロセスを考える上で非常に重要である。流体活動の直接的な証拠は、深部まで沈み込んだ岩石が上昇する際に受ける後退変成作用による加水反応が挙げられる。Okamoto et al. (2005)では、三波川変成帯の塩基性片岩中の角閃石の累帯構造に着目し、後退変成作用の後期に成長するアクチノ閃石の成長割合を指標として後退変成作用の空間的不均質性を議論した。しかし、薄片を用いたEPMAによる分析は高解像度であるが、分析領域が狭く、多試料に対して実施するにはコストが膨大である。本研究では、三波川変成帯別子地域に産する東五良津岩体とその周囲の塩基性片岩を対象として、エクロジャイト相に達した変はんれい岩の後退変成作用について、多数の試料に対して高精度XRD測定を行い、XRDスペクトルに対する次元圧縮によりその特徴を抽出し、その地域における空間パターンを明らかにすることを試みた。
 四国三波川変成帯別子地域の東五良津岩体はざくろ石含有変斑れい岩であり、深さ70kmほどのエクロジャイト相まで沈み込んだ後に、上昇期に複数段階の後退変成作用を受けている(Ota et al., 2005)。この岩体の周囲には塩基性片岩や泥質片岩が分布する。我々は岩体の周辺部から内部へ2つのルートで計82試料を採取した。試料は、薄片を作成するとともに、粉末化した試料を放射光施設Spring-8 のビームラインBL19B2にて高精度にXRD測定を行った。XRDスペクトルはリートベルト解析で鉱物量比の定量化を進めているが、同時にスペクトルデータに対して、主成分分析(PCA)とUMAPという2つの手法を用いて次元圧縮を行った。PCAは、データの分散が最大となる線形な軸を取ることで次元圧縮を行う手法であり、UMAPは多次元データを低次元に落とし込む方法であり、入力されたデータが似ている試料毎にクラスターが形成される。本発表では、各試料について、次元圧縮したXRD測定結果と、リートベルト解析から求めた鉱物量比・地図上の分布・鉱物組成・薄片観察との関係性に対して考察した。
 PCAの結果について説明する。PC1, PC2, PC3の寄与率はそれぞれ0.28, 0.17, 0.10であり、PC1の成分は主に角閃石・緑簾石・斜長石が増加し石英が減少することを意味していた。また、UMAPによる2次元への次元圧縮を行った結果、図のように試料は6つのクラスターに分かれた。クラスター2, 3, 4の試料は変斑れい岩中に分布した一方、クラスター1, 5, 6の試料は変斑れい岩および塩基性片岩のエリアに分散した。また、各クラスターは異なる加水反応の段階を示していると考えられるが、特にクラスター1からクラスター2へ向かってPC1の得点が増加することがわかった。クラスター1の鉱物組み合わせはザクロ石・緑泥石・緑簾石・角閃石・フェンジャイト・パラゴナイト・石英・斜長石・チタン含有鉱物であり、そのうち含水鉱物(緑泥石・緑簾石・角閃石・フェンジャイト・パラゴナイト)の量比が大きい一方でザクロ石の含有量は小さく、後退変成作用を受けている塩基性片岩の地質区分に分布した。クラスター2も同様の鉱物組み合わせであり、鉱物量比としては含水鉱物の量が減った代わりにザクロ石の量が増加して、地図上では後退変成の程度が弱い変斑れい岩体との境界部に分布した。またいずれのクラスターも面構造が発達していた。よってPC1は、変形に伴って起こった加水反応(特にザクロ石を含水鉱物に置き換える反応)の有無を示すと解釈される。
 本発表の、XRDスペクトルデータの次元圧縮に対する予察的な結果は、先見的な知識がなくとも後退変成作用の特徴を定量化、可視化できる可能性を示している。今後、試料の鉱物量比、鉱物組成、組織(結晶サイズや定向配列など)の特徴と、次元圧縮結果のより詳細な対応を行うとともに、フィールド全体で加水反応の程度や様式について議論する。

参考文献
・A. Okamoto and M. Toriumi (2005). J. metamorphic Geol., 23, 335–356
・Ota et al. (2004). Lithos, 73, 95-126, doi: 10.1016/j.lithos.2004.01.001