日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP29] 鉱物の物理化学

2025年5月28日(水) 09:00 〜 10:30 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:近藤 望(岡山大学惑星物質研究所)、髙木 壮大(Korea University)、萩原 雄貴(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:近藤 望(岡山大学惑星物質研究所)、萩原 雄貴(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

10:15 〜 10:30

[SMP29-05] キータイトの低温相転移

*神崎 正美1 (1.岡山大学惑星物質研究所)

キーワード:キータイト、シリカ多形、相転移、示差走査熱量計、密度汎函数法計算

キータイト(keatite)は天然では非常に稀なシリカ多形であるが、非晶質シリカを出発物質とした水熱合成では比較的生じやすい。キータイトは石英、クリストバライトといくつかの共通点がある。どれもSiO4四面体からなる螺旋構造を持ち、ゼロから負の体積熱膨張係数を示す。ただしゼロから負の体積熱膨張係数を示すのは石英とクリストバライトいずれも高温相のみである。キータイトは室温から250 oC程度まで負の体積熱膨張係数を示すが、これまで温度誘起の相転移は報告されていない。神崎(鉱物科学会年会2023)は密度汎函数計算および古典的MD計算からキータイトに低温・高圧で変位型の相転移が存在する可能性を報告している。もし室温以下に相転移があるとすると、室温のキータイトは実は高温相となり、負の体積熱膨張係数は石英とクリストバライトと同様に高温相の振る舞いとして統一的に理解できる。これは古典的MD計算からも支持された。しかし、転移の実験的な証拠はまだない。我々は以前に-100 oCでの放射光粉末X線回折測定を行ったが、期待される転移は起きてなかった。そのためさらに低温で転移が存在すると予想された。本研究ではキータイトの低温での示差走査熱量計(DSC)測定を行い、相転移の検出と転移温度決定を試みた。また、さらに詳しい密度汎函数振動数計算も行った。
 DSC測定等のためにキータイトの合成をまず行った。silicic acidとイオン交換水だけを出発物質として、150 MPa、600 oC、24時間で水熱処理した。生成物は顕微ラマン分光法で同定した。ほぼキータイトだけの試料を得た。低温DSC測定は学内や近隣に使える装置がないために日本サーマル・コンサルティングに依頼して測定してもらった。TAインスツルメンツのDSC2920を使用した。11.42 mgの試料を液体窒素温度から室温まで10 oC/minで昇温しながら測定した。-152 oC付近で吸熱ピークが観察され、ベースラインの変化も見られた。吸熱ピークの解析から転移点は-161 oCとなった。また吸熱ピークがあることから1次相転移と推定される。これは神崎(2023)のソフトモードによる2次転移の予想と矛盾する。
 神崎(2023)は密度汎函数振動計算からソフトモードを見つけたとしたが、このB1モードの圧力変化をさらに詳しく調べると実はもう1つ高周波数側のB1モードとこのモードが圧力誘起共鳴をしていたことが判明した。その結果、実際にはもう1つのB1モードがソフト化していることが分かった。しかし、このB1モードの変位は相転移における変位とは対応していない。そのためソフトモードとは言えず、2次転移するという当初の描像は成り立たなくなった。DSCで吸熱ピークが見られてもいいのかもしれない。この辺りは石英の転移と似ている。
 現在、転移をさらに調べるために液体窒素温度近くでのキータイトのラマン測定を試みているところである。ただ低温での測定が難しく、まだうまく測定できていない。また室温においても高圧下では転移が期待される。以前高圧ラマン測定も実施しており転移らしき変化が見られているが、さらに実験を重ねているところである。それらの結果は当日報告する。