日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP29] 鉱物の物理化学

2025年5月28日(水) 10:45 〜 12:15 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:近藤 望(岡山大学惑星物質研究所)、髙木 壮大(Korea University)、萩原 雄貴(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:髙木 壮大(Korea University)、萩原 雄貴(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

10:45 〜 11:00

[SMP29-06] アルカリ金属イオンがカンラン石の炭酸塩化反応に与える効果

*興野 純1長谷川 拓紀2、岡田 慧3山口 航佑2 (1.筑波大学生命環境系地球進化科学専攻、2.筑波大学理工情報生命学術院生命地球科学研究群(博士前期課程)地球科学学位プログラム、3.筑波大学理工情報生命学術院生命地球科学研究群(博士後期課程)地球科学学位プログラム)

キーワード:カンラン石炭酸塩化、地質学的炭素貯留、マグネサイト結晶化、添加材効果、シリカ不動態膜

カンラン石の炭酸塩化は,大気中のCO2を回収しマグネシウムケイ酸塩と反応させ安定な炭酸塩鉱物に変換する鉱物炭酸塩化(MC)の一形態であり,長期的なCO2固定の有望な手法である.本研究では,地質学的炭素貯留(GCS)において重要なカンラン石の炭酸塩化反応に対するアルカリ金属イオンの影響を評価した.著者らは,米国San Carlos産のカンラン石を用い,水熱実験を通じて,温度,反応時間,および添加剤がカンラン石の炭酸塩化反応に及ぼす影響を体系的に調査した.特に,Li+,Na+,K+などのアルカリ金属イオンや,CaCl2,アモルファスシリカといった添加剤に注目した.結果として,反応温度は反応速度および生成物の種類の両方に強く影響することが分かった.放射光X線回折(XRD)および熱重量分析(TG)により,140–180℃ではハイドロマグネサイトが炭酸塩鉱物として主要な生成物となり,180–200℃ではマグネサイトが主要生成物になることが明らかになった.200℃でマグネサイトの結晶サイズが最大となったが,変換率は180℃が最大となった.この温度を超えると,溶液中の炭酸イオン(CO32-)および重炭酸イオン(HCO3-)の活性が低下し,反応速度が減少した.また,反応時間も重要であり,マグネサイトの生成は10日まで顕著に増加したが,20日を超えるとSiに富む不動態膜がカンラン石の粒子表面を覆うため変換率は一定化した.添加剤は,カンラン石の炭酸塩化効率および炭酸塩鉱物の生成に顕著な影響を与えた.LiClはマグネサイトの結晶化を著しく促進し,良好な菱面体結晶を形成した.Li2CO3はCO2供給源およびpH緩衝剤として作用し,炭酸塩化効率を大幅に向上させる最も効果的な添加剤であった.一方,CaCl2は方解石の生成を優先的に促進し,アモルファスシリカはカンラン石粒子の表面にSiに富む不動態膜を強化することで炭酸塩化反応を抑制した.走査型電子顕微鏡(SEM)観察により,添加剤の種類に応じた生成物の形態および結晶性の差異が確認された.本研究は,カンラン石の炭酸塩化の最適化における反応条件の重要性を示している.特にLi+およびNa+などのアルカリ金属イオンが,マグネサイトの形成を通じて効率的なCO2固定を促進する重要な役割を果たすことが明らかとなった.また,Siに富む不動態膜の抑制が長期的な炭酸塩化速度向上のための重要な課題であることも示された.これらの結果は,効果的なGCSシステム設計および鉱物炭酸塩化を活用した持続可能な炭素管理戦略の可能性に重要な知見を提供する.今後は,これらの知見を露頭スケールに拡げることで,GCS技術の実用化に応用できる可能性がある.