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[SMP29-P02] 鉱物結晶にみられる流体包有物の形成過程の数値計算
キーワード:流体包有物、結晶成長、フェーズフィールド法、数値計算、不純物、鉱物
鉱物の多くは、マグマや熱水などの流体の中で形成される。流体中で鉱物結晶が形成される際、鉱物結晶の成長とともに、鉱物周辺の流体が鉱物内に捕獲されることがある。この捕獲された流体を流体包有物という。流体包有物は流体が取り込まれたときの状態を保った小さな閉鎖系とみなせることから、人の手や目が及ばない場所の情報を記録しているという点で有用である[1]。流体包有物の解析における問題点として、流体包有物の組成からバルク(界面から十分離れた液相)の組成、すなわち鉱物の形成環境を直接的に推測できないという点が挙げられる。鉱物に取り込まれにくい不純物成分は、鉱物の成長にともなって鉱物結晶と流体の界面(以後、単に「結晶表面」と呼ぶ)近傍に濃集するため、バルクの組成と結晶表面近傍の組成は一般に一致しない。さらに、流体包有物が鉱物内部に取り込まれた後も、流体包有物内部における成分の拡散や包有物壁面における結晶成長によってその組成が変化するため、結晶表面近傍の組成と流体包有物の組成もまた一致しない。すなわち、流体包有物の組成が鉱物の形成環境をそのまま反映しているとは限らない。成長する鉱物結晶表面近傍の組成と流体のバルク組成との違いについて、従来は結晶表面近傍における流体組成分布の解析解に基づいて検討されてきた[2]。しかし、この解析解は界面の変形や流体の取り込み、すなわち流体包有物の形成過程を扱っておらず、流体包有物の組成が何によって決定されるのかについては明らかになっていなかった。
本研究では、流体包有物の形成過程を数値計算で再現することで、流体包有物の組成が何によって決まるか調べることを目的とした。二成分系の希薄溶体を想定し,過冷却状態における鉱物結晶の成長過程をフェーズフィールド法[3]に基づいて数値計算した。その結果、液相が固相内に取り込まれる過程が再現された。流体包有物は固相中で列をなして連続的に配列しており、これは自然界の鉱物中にも見られる現象である。流体包有物の組成、固液界面近傍の液相の組成、バルクの液相組成を比較したところ、これらの組成はすべて異なっていることがわかった。また、固相に取り込まれてからある程度時間が経過した流体包有物の組成は、流体包有物のサイズと相関があることもわかった。流体包有物の組成のサイズ依存性は、固液界面の曲率効果(ギブス・トムソン効果)を考慮した平衡組成の理論式とよく一致した。今回の計算結果は、流体包有物は流体が固相に取り込まれた瞬間の情報をそのまま保存しているとは限らず、取り込まれたあとの周囲の固相との平衡状態によって決定されることを示唆している。
参考文献
[1] 佐脇貴幸(2003). 岩石鉱物科学, 32, 23–41.
[2] Baker, D. R. (2008). Contributions to Mineralogy and Petrology, 156(3), 377–395.
[3] Kim, S. G., Kim, W. T., and Suzuki, T. (1999). Physical Review E, 60(6), 7186–7197.
本研究では、流体包有物の形成過程を数値計算で再現することで、流体包有物の組成が何によって決まるか調べることを目的とした。二成分系の希薄溶体を想定し,過冷却状態における鉱物結晶の成長過程をフェーズフィールド法[3]に基づいて数値計算した。その結果、液相が固相内に取り込まれる過程が再現された。流体包有物は固相中で列をなして連続的に配列しており、これは自然界の鉱物中にも見られる現象である。流体包有物の組成、固液界面近傍の液相の組成、バルクの液相組成を比較したところ、これらの組成はすべて異なっていることがわかった。また、固相に取り込まれてからある程度時間が経過した流体包有物の組成は、流体包有物のサイズと相関があることもわかった。流体包有物の組成のサイズ依存性は、固液界面の曲率効果(ギブス・トムソン効果)を考慮した平衡組成の理論式とよく一致した。今回の計算結果は、流体包有物は流体が固相に取り込まれた瞬間の情報をそのまま保存しているとは限らず、取り込まれたあとの周囲の固相との平衡状態によって決定されることを示唆している。
参考文献
[1] 佐脇貴幸(2003). 岩石鉱物科学, 32, 23–41.
[2] Baker, D. R. (2008). Contributions to Mineralogy and Petrology, 156(3), 377–395.
[3] Kim, S. G., Kim, W. T., and Suzuki, T. (1999). Physical Review E, 60(6), 7186–7197.