17:15 〜 19:15
[SMP29-P07] 鉱物のカイラルフォノン研究
キーワード:カイラルフォノン、ラマン分光法、円偏光、水晶
Oishiら(2024)は水晶に円偏光レーザーをc軸方向から入射させてラマン測定をすると、右回転と左回転の円偏光でラマンピーク位置がシフトすることを発見し、これがカイラルフォノンによるとした。シフトが生じるのはEモードだけであり、右水晶と左水晶ではシフト方向が逆になる。最も大きい695 cm-1モードのシフトは1.5 cm-1に達し、中程度の分解能を持つラマン分光装置で十分測定できる(円偏光が必要だが)。カイラルフォノンは辰砂でも見つかっており、螺旋状構造と円偏光しているフォノンの相互作用で説明されている(佐藤ら、2024)。
鉱物学的観点からは、螺旋状構造を持つ構造に限定されるが、これが新しいカイラリティ(右左)決定法として使えることを意味する。顕微ラマン分光法を使うことで微小な結晶についても非破壊で迅速にカイラリティを決めることができるだろう。本発表では既存の顕微ラマン分光装置をカイラルフォノンが測定できる装置への改造方法とそれを使った測定結果について述べる。
我々の場合は自作の488 nmレーザー励起顕微ラマン分光装置の対物レンズ直前に1/4波長板を回転マウントに入れて光路に挿入して、この1/4波長板を回転することで円偏光を発生させている。直線偏光したレーザーが光軸から45度右に回転した1/4波長板に入ると右円偏光が生じ、45度左に回転した場合は左円偏光が生じる。我々はソーラボのピエゾ駆動回転マウント(ELL14)を使用しており、PCからpythonコードで回転角度を自由に制御できる。なおこの配置の場合、ラマン散乱も1/4波長板を透過することになる。さらに分光器前のコリメートされている光路に偏光子(アナライザー)を回転マウント上に設置する。蛇足だが、1/4波長板を1/2波長板と交換すると角度分解偏光顕微ラマン装置として使うこともできる。
最初に改造した装置の性能確認のためにOishiら(2024)の再現測定を行なった。使った試料は右および左水晶0001面単結晶薄板で、クリスタルベースから購入した。これらの試料に80 mWの直線偏光レーザーを円偏光に変換して、20倍対物レンズで試料に集光して、そこから発生するラマン散乱を観察した。右円偏光または左円偏光を照射し、ほぼEモードのみが観察されるアナライザー方位で180秒露光の測定を行なった。使った分光器の仕様は焦点距離500 mmであり、1200 g/mmの回折格子を使った。液体窒素冷却CCD検出器を使っている。
695 cm-1モードの結果をFig. 1に示す。上側が左水晶、下側が右水晶で、赤が右円偏光、青が左円偏光を照射したスペクトルである。両者には明らかにシフトが認められ、左水晶と右水晶で逆方向になっている。他のEモードについてもOishiら(2024)の結果を定量的に再現することができた。これを利用すれば水晶のカイラリティを判定できる。水晶球でも同様に測定したが、エアリースパイラルで決めた左右と対応した。水晶のカイラリティは他の方法でも判別できるが、この方法は非破壊測定であり、形状に関わらず適用できる。ただc軸方向に結晶を向ける必要はある。
現在は同様な螺旋構造を持つクリストバライトとキータイトでカイラルフォノンが見られるか挑戦しているところであり、それらについては当日に発表する。
引用文献
Oishi et al. (2024) DOI: 10.1103/PhysRevB.109.104306
佐藤ら(2024) 日本物理学会誌, vol.79, 123.
(この研究には発表者の「挑戦的研究(萌芽)2024-2025」予算が使われた)
鉱物学的観点からは、螺旋状構造を持つ構造に限定されるが、これが新しいカイラリティ(右左)決定法として使えることを意味する。顕微ラマン分光法を使うことで微小な結晶についても非破壊で迅速にカイラリティを決めることができるだろう。本発表では既存の顕微ラマン分光装置をカイラルフォノンが測定できる装置への改造方法とそれを使った測定結果について述べる。
我々の場合は自作の488 nmレーザー励起顕微ラマン分光装置の対物レンズ直前に1/4波長板を回転マウントに入れて光路に挿入して、この1/4波長板を回転することで円偏光を発生させている。直線偏光したレーザーが光軸から45度右に回転した1/4波長板に入ると右円偏光が生じ、45度左に回転した場合は左円偏光が生じる。我々はソーラボのピエゾ駆動回転マウント(ELL14)を使用しており、PCからpythonコードで回転角度を自由に制御できる。なおこの配置の場合、ラマン散乱も1/4波長板を透過することになる。さらに分光器前のコリメートされている光路に偏光子(アナライザー)を回転マウント上に設置する。蛇足だが、1/4波長板を1/2波長板と交換すると角度分解偏光顕微ラマン装置として使うこともできる。
最初に改造した装置の性能確認のためにOishiら(2024)の再現測定を行なった。使った試料は右および左水晶0001面単結晶薄板で、クリスタルベースから購入した。これらの試料に80 mWの直線偏光レーザーを円偏光に変換して、20倍対物レンズで試料に集光して、そこから発生するラマン散乱を観察した。右円偏光または左円偏光を照射し、ほぼEモードのみが観察されるアナライザー方位で180秒露光の測定を行なった。使った分光器の仕様は焦点距離500 mmであり、1200 g/mmの回折格子を使った。液体窒素冷却CCD検出器を使っている。
695 cm-1モードの結果をFig. 1に示す。上側が左水晶、下側が右水晶で、赤が右円偏光、青が左円偏光を照射したスペクトルである。両者には明らかにシフトが認められ、左水晶と右水晶で逆方向になっている。他のEモードについてもOishiら(2024)の結果を定量的に再現することができた。これを利用すれば水晶のカイラリティを判定できる。水晶球でも同様に測定したが、エアリースパイラルで決めた左右と対応した。水晶のカイラリティは他の方法でも判別できるが、この方法は非破壊測定であり、形状に関わらず適用できる。ただc軸方向に結晶を向ける必要はある。
現在は同様な螺旋構造を持つクリストバライトとキータイトでカイラルフォノンが見られるか挑戦しているところであり、それらについては当日に発表する。
引用文献
Oishi et al. (2024) DOI: 10.1103/PhysRevB.109.104306
佐藤ら(2024) 日本物理学会誌, vol.79, 123.
(この研究には発表者の「挑戦的研究(萌芽)2024-2025」予算が使われた)