日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS04] Seismological advances in the ocean

2025年5月29日(木) 09:00 〜 10:30 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:水谷 歩(東北大学災害科学国際研究所)、利根川 貴志(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)、久保田 達矢(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、座長:久保田 達矢(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、水谷 歩(東北大学災害科学国際研究所)

10:00 〜 10:15

[SSS04-05] S-net・Hi-netの近地・遠地地震データによる日本列島下の3次元速度構造

*鈴木 基矢1趙 大鵬1豊国 源知1 (1.東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)


キーワード:S-net、遠地地震、地震波トモグラフィー、日本海溝

沈み込み帯におけるプレート境界地震の発生は、主にプレート境界面の構造不均質にコントロールされると考えられている。近年は、スラブ下のマントルに存在する高温で流体を含む上昇流 (subslab hot mantle upwelling, SHMU)の存在が、スロー地震や海溝型巨大地震、巨大噴火の発生に影響を及ぼす可能性が指摘されている (e.g., Bodmer et al., 2018; Fan & Zhao, 2021; Zhao & Hua, 2021; Toyokuni et al., 2022)。日本では、2011年東北沖地震(Mw 9.0)を契機として、防災科学技術研究所によりS-net(Seafloor observation network for earthquakes andtsunamis along Japan Trench)が設置されており、特に東日本前弧域で浅部・深部構造モデルの大幅な改善が見込める。既に、S-netにおける近地地震の到着時刻データを用いた走時トモグラフィーが行われつつある (例えば、Hua et al., 2020; Yu & Zhao, 2020; Zhao et al., 2022)。一方、遠地地震は、P波データがFan & Zhao (2021) で一部利用されたが,P波・S波ともに近地・遠地データを利用してリージョナルトモグラフィーを行った先行研究はまだない.
本研究では、2017年1月-2024年6月に発生した遠地地震 (M > 6.5)のうち176個について、Hi-net (High sensitivity seismograph network Japan) 及び S-netの記録を同時解析した。その結果、P波で125,725個、S波で85,946個の到着時刻データを得た。このうち、S-net観測点のデータ数は、P波で14,755個、S波で12,485個である。さらに、近地・遠地地震データを同時に用いるインバージョンを行い、日本列島下の深さ700 kmまでの3次元P波・S波速度構造モデルを求めた。その結果、沈み込む太平洋プレートを反映する厚さ約90 kmの高速度異常や、マントルウェッジ中の上昇流を反映し、背弧域の深さ約150 kmから活火山直下へ続く低速度異常が明瞭にイメージングされた。これらは沈み込み帯の特徴的な構造であり、従来の陸域地震観測網のみを用いた地震波トモグラフィー (e.g., Zhao et al., 2012; Liu & Zhao, 2016) の結果と共通している。太平洋スラブ下の深さ100-300 kmには、北海道沖下と房総沖下を中心として振幅が大きい低速度異常が見られ、中間地点である宮城沖では連続性が途切れた。途切れ部分は,2011 年東北沖地震(Mw9.0)の破壊域と対応しているように見える。これは、Fan & Zhao (2021)と同様の結果である。より深部では、北海道沖の地下にマントル遷移層(410-660 kmの深さ範囲)からスラブと平行に浅部へ連続する低速度異常が見られるほか、東北南部から伊豆諸島にかけて地下深さ600-700 kmに顕著な低速度異常が見られた。太平洋スラブ下の低速度異常は、マントル深部からのSHMUがスラブに沿って浮力で上昇し、スラブの屈曲部の下に溜まったものを見ている可能性がある。先行研究では、SHMUの浮力が沈み込むプレート形状の変化を引き起こし、プレート境界面の固着を増加させることで海溝型巨大地震の破壊域をコントロールする可能性が指摘されており、本研究の結果はこれを支持・補強するものとなった。