日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS08] 地殻構造

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:三浦 誠一(海洋研究開発機構)、東 龍介(東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター)

17:15 〜 19:15

[SSS08-P03] 飛騨山脈及びその周辺における三次元S波減衰構造の解析

*岡田 翔矢1勝間田 明男1堀田 耕平1 (1.富山大学)

キーワード:S波減衰、トモグラフィ、飛騨山脈

飛騨山脈の周辺では, 地震波が大きく減衰することが以前から知られている. 例えば, 溝上・他 (1983) では, 飛騨山脈西側で発生する地震波動の振幅の減衰は著しく, 東側では検知できない場合が多いことを指摘した. 飛騨山脈およびその周辺における地震波の異常減衰を理解するためには, その定量的, 空間的把握が必要となる. しかし, これまでの研究では, 解析領域が必ずしも飛騨山脈を主対象としていなかったり, 地殻のどの部分で減衰が激しいのか必ずしも明確ではなかったりする. そこで本研究では, 減衰の程度を表すQs値をトモグラフィックインバージョンにより推定し, 飛騨山脈及びその周辺の三次元減衰構造を明らかにすることを目的として解析を行なった.

本解析では防災科学技術研究所 K-NET 及び KiK-net強震計の加速度強振記録, Hi-net地震計のイベント波形データ, 臨時観測地震計の波形データを用いた. 震源の緯度, 経度, 深さ, モーメントマグニチュードは防災科学技術研究所F-netの値を用た. K-NET, Kik-netでは436個の地震, Hi-netでは727個の地震, 臨時観測点では288個の地震データを解析に使用した.
本研究では, 三次元トモグラフィックインバージョンによる手法 (中村, 2009) を用いて飛騨山脈及びその周辺のQs値の推定を実施した. このとき, 1ブロックの大きさを緯度0.1°×経度0.1°×深さ10kmとした. 地震jによる観測点iでの加速度フーリエスペクトルは以下のように表すことができる.
αij(f) = Saj(f)・Ge・(ρj βj / ρSB βSB)0.5・gi(f)・exp(-πfΣTijk/Qk(f))
ここで, Saj(f)は震源での加速度フーリエスペクトル, Geは震源距離の逆数, ρSBは地震基盤における密度, βSBは地震基盤におけるS波地震波速度, ρjは震源での密度, βjは震源でのS波地震波速度, giは観測点におけるサイト増幅特性, Qk(f)k番目のブロックでのQs値. Tijkk番目のブロックを通過するのに要する時間である. LSQRプログラム(Paige and Sunders, 1982)を用いてブロック毎の-πf/Q(f)kを推定した(図). また, 解像度の解析としてチェカーボード解像度テストを実施した.

深さ0-10kmでは, 飛騨山脈周辺に異常減衰が確認された. 深さ10-20kmでは, 立山と焼岳, 乗鞍岳の間に異常減衰域が確認された. また, 深さ20-40kmでは火山フロント背弧側に高減衰域が確認された. 深さ40-60kmでは, 相模湾から北側に低減衰域が伸びている. これは沈み込むフィリピン海プレートを反映していると考えることができる.

深さ0-10kmにおける異常減衰域と隆起速度が速い地点 (藤原・他, 2005) が一致している場所があり, 飛騨山脈もその一つとなっている. 隆起速度が速いことで大きな亀裂が内部に生じ、その亀裂に流体が入ることで異常減衰域となっている可能性がある. 実際に源内・他 (2002) によると, 飛騨山脈直下の超低密度域は岩石の溶融だけでは説明できないことが指摘されている.

謝辞
本研究では防災科学技術研究所K-NET, Kik-net, Hi-netの観測データ, F-netのメカニズム解を使用しました.