17:15 〜 19:15
[SSS08-P04] 短周期強震記録に基づく能登半島周辺の三次元減衰Qs構造の推定(その2)
―二重スペクトル比による検討-
キーワード:二重スペクトル比、減衰構造、能登半島
1.はじめに
中村・他 (2024, JpGU)では,トモグラフィ解析により令和6年能登半島地震(Mj7.6)の震源域周辺における三次元S波減衰(Qs)構造を求めた。その結果、能登半島北岸の震源域周辺の深さ0-20km付近において、東西方向に伸びる強いS波の減衰域が推定された.
奥能登地方である珠洲周辺では2020年末ごろから群発地震活動が継続し,低速度異常域の存在などから,地震活動に対する流体の寄与が議論されている(Nakajima, 2022, EPS; Kato, 2023, GRL; Amezawa et al., 2023 GRL).
中村・他 (2024)で推定された高減衰域も先行研究と同様に流体の存在を示唆すると考えられる。しかしながら、能登半島近傍に集中する震源分布と陸域に限られた観測点の配置では,Qs値と震源特性・サイト特性との間のトレードオフを十分に解消することができず,減衰構造を詳細に検討することが難しい。そこで、本研究では二重スペクトル比法(Twofold Spectral Ratio method:TSR法)を用いて,より高い空間解像度でQs値を制約することを試みた。TSR法では,2つの観測点で観測された2地震の観測記録に対して二重スペクトル比を計算する.これにより,震源特性とサイト特性がキャンセルされ、伝播経路の特性のみを取り出すことができる (松澤・他, 2003, 地震)。
2.データ及び手法
本研究では,防災科学技術研究所のK-NET及びKiK-netの地表観測点で計測された加速度記録から二重スペクトル比を計算した。2024年1月から7月までに発生したMj 7.5以下の地震のうち,F-netでメカニズム解が求められている地震を解析に適用した.なお,非線形応答の影響を避けるため,PGAが100 cm/s2を超える観測記録を除外した.
観測点1及び観測点2において地震Aと地震Bの加速度記録が得られたとき,TSR法により,観測スペクトル値FからQs値が以下として計算される(松澤・他, 2003, 地震).
-πf Qs-1 = ln-CTSR / DDTT ,
ここで,
ln-CTSR = ln(FA*r1A ) + ln(F2B *r2B) - ln(F1 B *r1 B) - ln(F2A *r2 A),
DDTT = r1 A /Vs + r2B /Vs - r1 B /Vs - r2 A /Vs,
であり,rは震源距離、VsはS波速度(3.5km/s)である.ln-CTSRは幾何減衰を補正した二重スペクトル振幅である.一つ一つのペアからQ値が求まるがDDTTが小さいほどばらつきが大きくなり、震源位置が一致するとQs^-1が無限大になる。そこで、多くの地震と観測点のペアにより求めたDDTTとln-CTSRの関係のプロットから最小二乗法により傾きを求め(図1)、それよりQs値を求めた。
対象とした地震と観測点のペアを次に示す(図2):
領域1
1-1 ISK003(輪島)- ISK006(富来)ペア
1-2 ISKH06(志賀)- ISK015(大町)ペア
領域2
2-1 ISK001(大谷)- ISK003(輪島)ペア
2-2 ISK015(大町)- ISKH03(内浦)ペア
ペア1-1と2-1の観測点は令和6年能登半島地震の震源域直上に位置する.一方,ペア1-2と2-2の観測点は、震源域のやや南側に位置する。
3. 結果及び考察
TSR法により推定されたQs値の特徴は以下に示す特徴を持つ(図2): 領域1と2において震源域直上の観測点ペア(1-1,2-1)においてQs値が小さく,S波減衰が強い傾向がある。 トモグラフィ解析による深さ0-20kmの結果と比較して,Qs値が系統的に小さい。 解析対象とした地震の多くは令和6年能登半島地震の余震である.このため,震源直上に位置する観測点ペア(1-1,2-1)に到達する地震波は断層面のごく近傍を伝播したと考えられる.実際,これらの観測点ペアでは,トモグラフィ解析(中村・他,2024)よりも特に小さいQs値が観測された.これらの結果は本震断層周辺で局所的に地震波減衰が強いことを示唆する。このような観測はサンアンドレアス断層をはじめ,他の断層帯における減衰特性とも整合する(Blakeslee, 1989,GRL; 山田・小田, 2018,JAEE) .能登半島の地下には流体が存在することが議論されている(例えば,Nishimura et al., 2023).本研究の結果は,これらの流体が本震断層の近傍に分布していることを示しているかもしれない.
中村・他 (2024, JpGU)では,トモグラフィ解析により令和6年能登半島地震(Mj7.6)の震源域周辺における三次元S波減衰(Qs)構造を求めた。その結果、能登半島北岸の震源域周辺の深さ0-20km付近において、東西方向に伸びる強いS波の減衰域が推定された.
奥能登地方である珠洲周辺では2020年末ごろから群発地震活動が継続し,低速度異常域の存在などから,地震活動に対する流体の寄与が議論されている(Nakajima, 2022, EPS; Kato, 2023, GRL; Amezawa et al., 2023 GRL).
中村・他 (2024)で推定された高減衰域も先行研究と同様に流体の存在を示唆すると考えられる。しかしながら、能登半島近傍に集中する震源分布と陸域に限られた観測点の配置では,Qs値と震源特性・サイト特性との間のトレードオフを十分に解消することができず,減衰構造を詳細に検討することが難しい。そこで、本研究では二重スペクトル比法(Twofold Spectral Ratio method:TSR法)を用いて,より高い空間解像度でQs値を制約することを試みた。TSR法では,2つの観測点で観測された2地震の観測記録に対して二重スペクトル比を計算する.これにより,震源特性とサイト特性がキャンセルされ、伝播経路の特性のみを取り出すことができる (松澤・他, 2003, 地震)。
2.データ及び手法
本研究では,防災科学技術研究所のK-NET及びKiK-netの地表観測点で計測された加速度記録から二重スペクトル比を計算した。2024年1月から7月までに発生したMj 7.5以下の地震のうち,F-netでメカニズム解が求められている地震を解析に適用した.なお,非線形応答の影響を避けるため,PGAが100 cm/s2を超える観測記録を除外した.
観測点1及び観測点2において地震Aと地震Bの加速度記録が得られたとき,TSR法により,観測スペクトル値FからQs値が以下として計算される(松澤・他, 2003, 地震).
-πf Qs-1 = ln-CTSR / DDTT ,
ここで,
ln-CTSR = ln(FA*r1A ) + ln(F2B *r2B) - ln(F1 B *r1 B) - ln(F2A *r2 A),
DDTT = r1 A /Vs + r2B /Vs - r1 B /Vs - r2 A /Vs,
であり,rは震源距離、VsはS波速度(3.5km/s)である.ln-CTSRは幾何減衰を補正した二重スペクトル振幅である.一つ一つのペアからQ値が求まるがDDTTが小さいほどばらつきが大きくなり、震源位置が一致するとQs^-1が無限大になる。そこで、多くの地震と観測点のペアにより求めたDDTTとln-CTSRの関係のプロットから最小二乗法により傾きを求め(図1)、それよりQs値を求めた。
対象とした地震と観測点のペアを次に示す(図2):
領域1
1-1 ISK003(輪島)- ISK006(富来)ペア
1-2 ISKH06(志賀)- ISK015(大町)ペア
領域2
2-1 ISK001(大谷)- ISK003(輪島)ペア
2-2 ISK015(大町)- ISKH03(内浦)ペア
ペア1-1と2-1の観測点は令和6年能登半島地震の震源域直上に位置する.一方,ペア1-2と2-2の観測点は、震源域のやや南側に位置する。
3. 結果及び考察
TSR法により推定されたQs値の特徴は以下に示す特徴を持つ(図2): 領域1と2において震源域直上の観測点ペア(1-1,2-1)においてQs値が小さく,S波減衰が強い傾向がある。 トモグラフィ解析による深さ0-20kmの結果と比較して,Qs値が系統的に小さい。 解析対象とした地震の多くは令和6年能登半島地震の余震である.このため,震源直上に位置する観測点ペア(1-1,2-1)に到達する地震波は断層面のごく近傍を伝播したと考えられる.実際,これらの観測点ペアでは,トモグラフィ解析(中村・他,2024)よりも特に小さいQs値が観測された.これらの結果は本震断層周辺で局所的に地震波減衰が強いことを示唆する。このような観測はサンアンドレアス断層をはじめ,他の断層帯における減衰特性とも整合する(Blakeslee, 1989,GRL; 山田・小田, 2018,JAEE) .能登半島の地下には流体が存在することが議論されている(例えば,Nishimura et al., 2023).本研究の結果は,これらの流体が本震断層の近傍に分布していることを示しているかもしれない.