10:45 〜 11:00
[SSS10-11] 豊後水道スロースリップの有効法線応力の絶対量の推定:その3
キーワード:スロースリップ、応力絶対値、豊後水道
1.はじめに
スロースリップは、地震波を出さずにプレート境界等を10日~数年かけて数十cmゆっくりすべる現象である。スロースリップはGNSS観測以降発見され、プレート境界でのエネルギー蓄積・解放の新たな1つの過程として位置づけられる。これを調べることはプレート境界のテクトニクス等を知る上で重要である。
速度と状態に依存した摩擦則を用いた理論解析により、速度弱化に伴う準静的なすべり挙動が示されている。Kobayashi and Sato(GRL, 2021, https://doi.org/10.1029/2021GL095690)はGNSSのデータから房総半島沖で発生した6回のスロースリップ(SSE)の時空間すべり分布を推定し、剪断応力変化とすべり速度の関係をグラフに示した。すると、その軌跡のほとんどは理論的に安定な軌跡と類似していた。これは、房総沖のSSEは準静的な現象であり、すべり加速時の軌跡の傾きはSSEを引き起こしたプレートの摩擦係数(a, b)と有効法線応力(σn')の積( (a-b)σn')で表されることが示唆された。本研究では、Kobayashi and Sato(GRL, 2021)で用いた手法を過去4回発生した豊後水道SSEに当てはめ、有効法線応力の絶対量を推定した。
2.解析方法
用いたデータは国土地理院による日々の座標値(F5解)である。SSEによる変動を抽出するために、SSEとは無関係な線形トレンドや季節変動等を推定し、除去した。線形トレンドや季節変動等を除去したデータをフィッティングによってなめらかな曲線で繋ぎ、1ヶ月毎の変動に分割した。次に、1ヶ月毎の変動データからABICを用いたインバージョン解析によって1ヶ月毎のすべり分布を推定した。そしてUSGS(United States Geological Survey)のソフトウェアCoulomb3.3を用いて、プレート境界面を長方形の微小パッチに分割してすべり分布に伴う剪断応力変化をそれぞれのパッチで計算した。求めた剪断応力変化とすべり速度の関係をグラフに表し、加速時の傾きから有効法線応力の絶対量を推定した。
3.結果
得られた有効法線応力の値は、それぞれ1997年イベントは40-50MPa、 2003年イベントは10-20MPa、2010年イベントは30-40MPa、2018年イベントは30-40MPaであった。これらの値は静岩圧よりも非常に小さな値であり、これはSSEを引き起こしたプレート境界面に非常に高い間隙流体圧の存在が示唆される。
謝辞
解析にあたり、国土地理院の日々の座標値(F5解)を使いました。応力の計算では、米国地質調査所のCoulomb3.3を使いました。ここに記して感謝します。本研究は科研費(23K03541)の補助を受けました。
スロースリップは、地震波を出さずにプレート境界等を10日~数年かけて数十cmゆっくりすべる現象である。スロースリップはGNSS観測以降発見され、プレート境界でのエネルギー蓄積・解放の新たな1つの過程として位置づけられる。これを調べることはプレート境界のテクトニクス等を知る上で重要である。
速度と状態に依存した摩擦則を用いた理論解析により、速度弱化に伴う準静的なすべり挙動が示されている。Kobayashi and Sato(GRL, 2021, https://doi.org/10.1029/2021GL095690)はGNSSのデータから房総半島沖で発生した6回のスロースリップ(SSE)の時空間すべり分布を推定し、剪断応力変化とすべり速度の関係をグラフに示した。すると、その軌跡のほとんどは理論的に安定な軌跡と類似していた。これは、房総沖のSSEは準静的な現象であり、すべり加速時の軌跡の傾きはSSEを引き起こしたプレートの摩擦係数(a, b)と有効法線応力(σn')の積( (a-b)σn')で表されることが示唆された。本研究では、Kobayashi and Sato(GRL, 2021)で用いた手法を過去4回発生した豊後水道SSEに当てはめ、有効法線応力の絶対量を推定した。
2.解析方法
用いたデータは国土地理院による日々の座標値(F5解)である。SSEによる変動を抽出するために、SSEとは無関係な線形トレンドや季節変動等を推定し、除去した。線形トレンドや季節変動等を除去したデータをフィッティングによってなめらかな曲線で繋ぎ、1ヶ月毎の変動に分割した。次に、1ヶ月毎の変動データからABICを用いたインバージョン解析によって1ヶ月毎のすべり分布を推定した。そしてUSGS(United States Geological Survey)のソフトウェアCoulomb3.3を用いて、プレート境界面を長方形の微小パッチに分割してすべり分布に伴う剪断応力変化をそれぞれのパッチで計算した。求めた剪断応力変化とすべり速度の関係をグラフに表し、加速時の傾きから有効法線応力の絶対量を推定した。
3.結果
得られた有効法線応力の値は、それぞれ1997年イベントは40-50MPa、 2003年イベントは10-20MPa、2010年イベントは30-40MPa、2018年イベントは30-40MPaであった。これらの値は静岩圧よりも非常に小さな値であり、これはSSEを引き起こしたプレート境界面に非常に高い間隙流体圧の存在が示唆される。
謝辞
解析にあたり、国土地理院の日々の座標値(F5解)を使いました。応力の計算では、米国地質調査所のCoulomb3.3を使いました。ここに記して感謝します。本研究は科研費(23K03541)の補助を受けました。