11:15 〜 11:30
[SSS10-13] モデル計算に基づく動的震源インバージョン手法の性能評価
★招待講演
キーワード:動的震源インバージョン、強震動、マルコフ連鎖モンテカルロ法
運動学的震源インバージョンによる震源過程の推定などにより,強震動の生成メカニズムの運動学的理解が進んできた.また,震源物理に基づく動的破壊シミュレーションを用いて断層近傍の観測記録を再現する動力学的震源モデルが推定されてきた.近年では観測記録からベイズ統計の枠組みで動力学的震源モデルを推定する手法(動的震源インバージョン手法)も開発された (Gallovič et al., 2019).我々はこれまで,強震動生成メカニズムの背景物理を解明することを目的に,Gallovič et al. (2019) を参考にして動的震源インバージョン手法を構築してきた(例えば,Miyamoto et al., 2024).本研究では,熊本地震の最大前震 (MJMA 6.5, 2016/04/14 21:26) への本手法の適用を念頭に,先行研究 (Asano and Iwata, 2016; Mitsuoka et al., 2020) を参考に設定した震源モデル(以下,正解モデル)を用いたテスト計算を行った.
本手法は主に動的破壊シミュレーションにより得られるすべり時間関数とグリーン関数との畳み込みによる波形合成と,マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)による動的震源パラメータの更新から成る.波形合成について,動的破壊シミュレーションには差分法によるオープンソースコード (fd3d_TSN; Premus et al., 2020) を用い,グリーン関数は離散化波数法 (Bouchon, 1981) および透過反射係数行列 (Kennett and Kerry, 1979) により計算した.速度構造モデルは「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」により作成された三次元地下速度構造モデル(浅野・他,2019)と全国1次地下構造モデル (JIVSM; Koketsu et al., 2012) より観測点毎に直下の構造を取り出した1次元速度構造モデルを用いた.MCMC法による動的震源パラメータの更新について,初期せん断応力とピーク摩擦係数の提案分布は現状の値を中心とした正規分布で与え,すべり弱化距離については対数正規分布とした.事前分布は,解析開始時点でパラメータに関する先見情報はないので一様分布とし,尤度関数は波形及びモーメントマグニチュードの一致度から構成した.Metropolis-Hastings algorithmに基づき動的震源パラメータを更新していく.
実際の強震観測点配置を参考にして震源断層を囲うように選定した14地点における正解モデルによる合成速度波形に0.05–0.5 Hzのバンドパスフィルタを適用し,P波到達の1秒前から20秒間を切り出して擬似的な観測波形データとして用いた.テスト計算の結果,合計で80,000個の動力学的震源モデルが得られた.解析開始から20,000 MCMCステップ後には,Variance Reduction (VR) は高い値 (>〜95%) を保ち,地震モーメントは正解モデルによる値の付近を推移した.これらの値の推移を参考に,初めの20,000モデルは棄却して残りの60,000モデルを解析対象とした.さらにモデル間の強い自己相関を避けることを目的に30モデルごとにリサンプリングし,得られた2,000モデルの動的震源パラメータの平均値から一つの動力学的震源モデル(以下,推定モデル)を構成した.推定モデルを用いて動的破壊シミュレーションを行い,14地点での速度波形 (0.05–0.5 Hz) を合成した.推定モデルによる破壊過程は,破壊開始点から浅部への破壊伝播といった正解モデルによる破壊過程の主たる特徴をよく再現した.一方で,破壊継続時間は正解モデルのそれ(約4秒)に比べて約1秒短かった.合成波形は擬似観測波形データとよく一致し,VRは92%であった.初期せん断応力とピーク摩擦係数は,正解モデルにおいて大きくすべった領域(すべり域)の内部においてはそれぞれ正解モデルの値の0.5–2倍,0.7–2.1倍程度に推定された一方で,すべり弱化距離の推定値は正解モデルの値の0.6–4.5倍とばらつきは大きかった.
現在は上記と同様の条件で,擬似観測波形データの通過帯域を0.05–1 Hzに変更してテスト計算を進めている.発表では,擬似観測波形データの通過帯域と推定される動力学的震源モデルとの関係について議論する予定である.
本手法は主に動的破壊シミュレーションにより得られるすべり時間関数とグリーン関数との畳み込みによる波形合成と,マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)による動的震源パラメータの更新から成る.波形合成について,動的破壊シミュレーションには差分法によるオープンソースコード (fd3d_TSN; Premus et al., 2020) を用い,グリーン関数は離散化波数法 (Bouchon, 1981) および透過反射係数行列 (Kennett and Kerry, 1979) により計算した.速度構造モデルは「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」により作成された三次元地下速度構造モデル(浅野・他,2019)と全国1次地下構造モデル (JIVSM; Koketsu et al., 2012) より観測点毎に直下の構造を取り出した1次元速度構造モデルを用いた.MCMC法による動的震源パラメータの更新について,初期せん断応力とピーク摩擦係数の提案分布は現状の値を中心とした正規分布で与え,すべり弱化距離については対数正規分布とした.事前分布は,解析開始時点でパラメータに関する先見情報はないので一様分布とし,尤度関数は波形及びモーメントマグニチュードの一致度から構成した.Metropolis-Hastings algorithmに基づき動的震源パラメータを更新していく.
実際の強震観測点配置を参考にして震源断層を囲うように選定した14地点における正解モデルによる合成速度波形に0.05–0.5 Hzのバンドパスフィルタを適用し,P波到達の1秒前から20秒間を切り出して擬似的な観測波形データとして用いた.テスト計算の結果,合計で80,000個の動力学的震源モデルが得られた.解析開始から20,000 MCMCステップ後には,Variance Reduction (VR) は高い値 (>〜95%) を保ち,地震モーメントは正解モデルによる値の付近を推移した.これらの値の推移を参考に,初めの20,000モデルは棄却して残りの60,000モデルを解析対象とした.さらにモデル間の強い自己相関を避けることを目的に30モデルごとにリサンプリングし,得られた2,000モデルの動的震源パラメータの平均値から一つの動力学的震源モデル(以下,推定モデル)を構成した.推定モデルを用いて動的破壊シミュレーションを行い,14地点での速度波形 (0.05–0.5 Hz) を合成した.推定モデルによる破壊過程は,破壊開始点から浅部への破壊伝播といった正解モデルによる破壊過程の主たる特徴をよく再現した.一方で,破壊継続時間は正解モデルのそれ(約4秒)に比べて約1秒短かった.合成波形は擬似観測波形データとよく一致し,VRは92%であった.初期せん断応力とピーク摩擦係数は,正解モデルにおいて大きくすべった領域(すべり域)の内部においてはそれぞれ正解モデルの値の0.5–2倍,0.7–2.1倍程度に推定された一方で,すべり弱化距離の推定値は正解モデルの値の0.6–4.5倍とばらつきは大きかった.
現在は上記と同様の条件で,擬似観測波形データの通過帯域を0.05–1 Hzに変更してテスト計算を進めている.発表では,擬似観測波形データの通過帯域と推定される動力学的震源モデルとの関係について議論する予定である.