日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2025年5月30日(金) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:柴田 律也(防災科学技術研究所)、澤井 みち代(千葉大学)、奥田 花也(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、津田 健一(清水建設 株式会社 技術研究所)、座長:奥田 花也(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、澤井 みち代(千葉大学)

14:30 〜 14:45

[SSS10-20] 根尾谷断層掘削コアが示す断層浅部でのthermal pressurizationの発生

吉田 拓海2、*大谷 具幸1 (1.岐阜大学工学部社会基盤工学科、2.岐阜大学大学院自然科学技術研究科)

キーワード:根尾谷断層、最新すべり面、断層浅部、thermal pressurization

根尾谷断層は内陸型地震としては最大級である推定M8.0の濃尾地震 (1891年) を引き起こした活断層である.近年,原子力規制庁が根尾谷断層を対象としてボーリング掘削を行った.このうち根尾水鳥では深度382 mで最新すべり面を貫いており,地下浅部における最新すべり面の特徴やそこで生じる現象の理解が期待される.そこで,この最新すべり面とその近傍を対象としてSEMによるBSE観察やEDX分析,EPMAによるカラーマッピングを行い,その産状を把握した上で,地震性すべりに伴って生じた現象を解明することが本研究の目的である.
本研究に用いたボーリングコアは根尾水鳥で掘削されたNDFD-1-S1孔である.根尾谷断層は左横ずれを基本とするものの,根尾水鳥は2本の断層に挟まれる圧縮性断層ジョグであり,濃尾地震の際には6 mの縦ずれ変位を生じている.ボーリングコアはジュラ紀付加体である美濃帯の泥岩基質メランジュからなり,チャートと玄武岩のブロックを含む.最新すべり面は直線状で連続性のよいガウジ帯であり,かつ低いCT値を示す部分として認定した.これは断層ガウジ帯の最下端に位置しており,主として玄武岩を原岩とする.
最新すべり面及びその近傍の断層ガウジをSEMやEPMAにより詳細に観察・分析し,鉱物の分布と形状を確認した.その結果,最新すべり面とその近傍ではCaの濃集が生じていることが特徴的であることが明らかとなった.最新すべり面ではCaの濃集部は局所的に分布し,亜円形を示す.最新すべり面に隣接する断層ガウジでは,Caを含む鉱物脈が認められ,主として粒径数μmの多数の方解石とフラグメント化した石英等やガウジの基質を含んでいる.また,この方解石の一部は弱い自形性を示している.加えて,フラグメント化した石英と細粒方解石が最新すべり面から離れた側から最新すべり面近傍の断層ガウジに貫入するような産状を示す.
これらの産状は最新すべり面では新たな鉱物脈の形成がないこと,隣接する断層ガウジでは間隙水圧の増大を示す産状が認められること,細粒で弱い自形性を有する方解石が溶解度の急激な変化による形成を示唆することから,隣接する断層ガウジにおいて地震性すべりに伴うthermal pressurizationによる間隙水圧の上昇とその後の低下により鉱物脈とその内部における自形鉱物が形成されたと考えられる.この鉱物脈は最新すべり面の西側に分布しており,根尾谷断層でこれまでに生じた変位が濃尾地震のときと常に同様であると仮定をすると相対的に沈降することとなり,断層変位に伴う深部からの上昇は生じない.また,現状の谷地形の形成を考えると,最大の浸食量として約 1 kmが見積もられるため,ここで考えられる現象は 1.4 kmより浅い深度で生じたと推定される.