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[SSS10-25] スロー地震と通常地震との間の統計的性質の遷移機構:様々な摩擦・粘弾性を持つ粒子分散系の剪断実験

キーワード:スロー地震、脆性塑性遷移、岩石流体相互作用、ソフトマター、指数分布、グーテンベルグリヒター則
スロー地震と通常の地震との間で地震モーメントの統計性が異なる原因はどこにあるのだろうか?本研究では,スロー地震のモーメントの統計則が断層のフラクタル性の破れによって実現されることを実験的に示す.スロー地震のようにモーメントの規模別頻度分布の減衰が通常の地震のグーテンベルグ・リヒター則(ベキ分布)に比べて大きくなる [1] のは,粒子間の摩擦が低いことに伴い応力鎖(局所的に応力集中した粒子列)のネットワーキング化が阻害され,個々の離散的な応力鎖の強度が系の挙動を決める場合に実現されると考えられる.スロー地震のようにモーメントの規模-継続時間スケーリングが通常の地震の3乗則と異なる [2] のは,粒子の弾性が低いことに伴うすべり面のつぶれによってフラクタル構造が壊れ,自己相似則が成り立たなくなる場合に実現されると考えられる.
実験では,我々が新たに開発したその場観察回転剪断実験装置を用いて,準2次元の粉粒体が示す固着すべり挙動を調べた.粒径4 mmの球状粒子 約4000個からなる粒子層をポリタングステン酸ナトリウム水溶液(密度2.8 g/cm3)の液面に浮遊させて,0.6°/s の回転剪断を加えた.粒子にはハイドロゲルポリマー(摩擦係数 ≦ 0.1,ヤング率 数 kPa)およびガラスビーズ(摩擦係数 > 0.2,ヤング率 数10 GPa)を用いて,粒子の摩擦,弾性,粒子数がすべりイベントの統計性に与える影響を調べた.粘度計によってトルクを測定すると同時に,カメラを用いて容器底面からその場観察を行い粒子の運動を追跡した.
実験の結果明らかになったことは以下の3点にまとめられる:
1.すべりイベントに伴うトルク降下量とモーメントの累積頻度分布はいずれも,実験条件によらず常に指数分布に従った.封圧下の乾燥粒子のすべりイベントの大きさはベキ分布に従うことから [3–4],指数分布とベキ分布との間の遷移には流体潤滑や摩擦低下が関係していると考えられる.変形中の粉粒体内部には応力鎖が多数存在しており,応力鎖ごとの平均応力は指数分布に従う [5].高摩擦である乾燥粒子が示すベキ分布は応力鎖がネットワークを形成し連鎖的に降伏することで実現しうるのに対して,本研究のような低摩擦下では各応力鎖が容易に降伏することによって個々の応力鎖の応力分布がそのままモーメントの指数分布として現れている可能性がある.
2.すべりイベントに伴うトルク降下量とモーメント M0 は,ハイドロゲルポリマー粒子ではイベント時間T に概ね比例し(M0 ∝ T),ガラスビーズではイベント時間の約2乗に比例した(M0 ∝ T 2).通常の地震の断層ではすべり量が断層長に比例する自己相似則が成り立つことで M0 ∝ T 3 というスケーリングが成り立っている.これは一種のフラクタルであるため,本研究のように粒子が柔らかくなるとすべり面の凹凸が潰れてフラクタル構造が消失し M0 ∝ T スケーリングに遷移していくと考えられる.
3.粒子層の空隙率を低下させると,モーメント M0 およびモーメントレート M0/T の平均値は増加した.さらに,すべり面を伴って形成される剪断帯の局所化が進んだ.剪断帯の幅と圧力が周囲の粒子層の空隙率によって決まると考えると,剪断帯の局所化と粒子層の圧力増加の2つの効果からモーメント M0 およびモーメントレート M0/T の空隙率依存性を半定量的に説明することができた.
以上の結果 [6] に基づけば,粒子間の摩擦が規模別頻度分布の質を決めて,粒子内の粘弾性が規模-継続時間スケーリングの質を決めていると考えられる.従って,スロー地震が低摩擦低粘弾性,通常の地震が高摩擦高粘弾性の現象に対応していると仮定すると,どちらにも属さない地震現象も原理的には存在する可能性が示唆される.そのため本発表ではさらに,離散要素法シミューション(DEM)での比較解析も行い,摩擦と粘弾性が粒子層の応力鎖や強度,すべりの統計性に与える影響について議論する.
[1] Chestler & Creager (2017) JGR
[2] Ide & Beroza (2023) PNAS
[3] Korkolis et al (2021) JGR
[4] Geller et al (2015) PRE
[5] Zhang et al (2014) PRE
[6] Sasaki & Katsuragi (2025). Origin of slow earthquake statistics in low-friction soft granular shear. arXiv. https://arxiv.org/abs/2502.01355
実験では,我々が新たに開発したその場観察回転剪断実験装置を用いて,準2次元の粉粒体が示す固着すべり挙動を調べた.粒径4 mmの球状粒子 約4000個からなる粒子層をポリタングステン酸ナトリウム水溶液(密度2.8 g/cm3)の液面に浮遊させて,0.6°/s の回転剪断を加えた.粒子にはハイドロゲルポリマー(摩擦係数 ≦ 0.1,ヤング率 数 kPa)およびガラスビーズ(摩擦係数 > 0.2,ヤング率 数10 GPa)を用いて,粒子の摩擦,弾性,粒子数がすべりイベントの統計性に与える影響を調べた.粘度計によってトルクを測定すると同時に,カメラを用いて容器底面からその場観察を行い粒子の運動を追跡した.
実験の結果明らかになったことは以下の3点にまとめられる:
1.すべりイベントに伴うトルク降下量とモーメントの累積頻度分布はいずれも,実験条件によらず常に指数分布に従った.封圧下の乾燥粒子のすべりイベントの大きさはベキ分布に従うことから [3–4],指数分布とベキ分布との間の遷移には流体潤滑や摩擦低下が関係していると考えられる.変形中の粉粒体内部には応力鎖が多数存在しており,応力鎖ごとの平均応力は指数分布に従う [5].高摩擦である乾燥粒子が示すベキ分布は応力鎖がネットワークを形成し連鎖的に降伏することで実現しうるのに対して,本研究のような低摩擦下では各応力鎖が容易に降伏することによって個々の応力鎖の応力分布がそのままモーメントの指数分布として現れている可能性がある.
2.すべりイベントに伴うトルク降下量とモーメント M0 は,ハイドロゲルポリマー粒子ではイベント時間T に概ね比例し(M0 ∝ T),ガラスビーズではイベント時間の約2乗に比例した(M0 ∝ T 2).通常の地震の断層ではすべり量が断層長に比例する自己相似則が成り立つことで M0 ∝ T 3 というスケーリングが成り立っている.これは一種のフラクタルであるため,本研究のように粒子が柔らかくなるとすべり面の凹凸が潰れてフラクタル構造が消失し M0 ∝ T スケーリングに遷移していくと考えられる.
3.粒子層の空隙率を低下させると,モーメント M0 およびモーメントレート M0/T の平均値は増加した.さらに,すべり面を伴って形成される剪断帯の局所化が進んだ.剪断帯の幅と圧力が周囲の粒子層の空隙率によって決まると考えると,剪断帯の局所化と粒子層の圧力増加の2つの効果からモーメント M0 およびモーメントレート M0/T の空隙率依存性を半定量的に説明することができた.
以上の結果 [6] に基づけば,粒子間の摩擦が規模別頻度分布の質を決めて,粒子内の粘弾性が規模-継続時間スケーリングの質を決めていると考えられる.従って,スロー地震が低摩擦低粘弾性,通常の地震が高摩擦高粘弾性の現象に対応していると仮定すると,どちらにも属さない地震現象も原理的には存在する可能性が示唆される.そのため本発表ではさらに,離散要素法シミューション(DEM)での比較解析も行い,摩擦と粘弾性が粒子層の応力鎖や強度,すべりの統計性に与える影響について議論する.
[1] Chestler & Creager (2017) JGR
[2] Ide & Beroza (2023) PNAS
[3] Korkolis et al (2021) JGR
[4] Geller et al (2015) PRE
[5] Zhang et al (2014) PRE
[6] Sasaki & Katsuragi (2025). Origin of slow earthquake statistics in low-friction soft granular shear. arXiv. https://arxiv.org/abs/2502.01355