日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:柴田 律也(防災科学技術研究所)、澤井 みち代(千葉大学)、奥田 花也(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、津田 健一(清水建設 株式会社 技術研究所)

17:15 〜 19:15

[SSS10-P09] カナダ・アルバータ州 Peace River における廃液注入によって誘発された可能性のある地震の震源特性解析

鎌田 光希1、*金 亜伊1、GU Jeffrey2、SUN Wenhan2、YU Tai-Chieh2 (1.横浜市立大学、2.University of Alberta)

キーワード:廃液注入、誘発地震、応力降下量、震源特性

カナダ・アルバータ州Peace River地域では、オイルサンド開発が盛んに行われており、ビチューメン回収の過程でビチューメンと水の混合物が生成されるため、その廃水を処理する目的で地下への注入が行われている。注入井の近くでは地震が群発的に発生しており、2022年11月30日には、アルバータ州で観測された歴史上最大の地震である Mw5.2 (ML5.6) が発生した。この地震は誘発地震である可能性が高いとされており (Schultz et al., 2023)、その後も廃水の注入が継続され、地震活動も活発に推移している。
本研究では、Peace River地域で発生した地震活動の解析を行い、その応力降下量を推定し、注入量や注入レートとの関係を調査することで、自然地震との違いや共通点を検証する。2022年11月30日の地震後、アルバータ大学によって稼働中の注入井の近辺に10箇所の観測点が設置された。本研究では、これらの観測点に設置された250Hzサンプリングの地震計で記録された、2022年12月6日から2023年4月13日に発生した マグニチュード -1.97 〜 5.04 の2,214個の地震データ を用いた。ただし、観測点の稼働状況により、地震が記録されていない期間が2回存在する。
また、3つの稼働中の注入井の近くには、構造性の断層とMw5.2を発生させた断層が存在し、多くの地震はこれら2つの断層のいずれかで発生し、主要なクラスターを形成している (Sun et al., 2023)。解析では、比較的大きなマグニチュード2.5以上の16個のイベントを対象とし、経験的グリーン関数法 (eGF法) を用いて震源パラメータを推定した。eGFには、マグニチュードが概ね1以上小さいイベントを用いた。経験的グリーン関数法は、大きな地震の直近で発生した小さな地震を参照することで、経路伝播特性や計器特性の影響を除去し、震源特性のみを抽出する手法である。本研究では、16個の地震に対して0.5〜2.0Hzのバンドパスフィルタを適用し、波形の相関を算出し、平均値が高かった3つのイベントをeGFとして用いた。
解析の結果、本研究で求められた応力降下量は概ね1〜10 MPaとなり、テクトニックな地震と大差ない結果が得られた。このことから、解析対象とした地震はMw5.2の発生による応力擾乱によって誘発された可能性が高いと考えられる。しかし、廃水の注入は継続されており、震源位置の拡散が見られること、また注入量が大幅に増加した2022年3月以降に地震活動が活発化していることから、廃水の注入もこれらの地震活動に寄与していることが示唆される。今後は、より小さな地震や他の地震計ネットワークで取得された2022年12月6日以前のデータを解析し、より詳細な震源特性を調査することで、廃水注入と誘発地震の関係性についてさらなる検証を行う予定である。