日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:柴田 律也(防災科学技術研究所)、澤井 みち代(千葉大学)、奥田 花也(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、津田 健一(清水建設 株式会社 技術研究所)

17:15 〜 19:15

[SSS10-P15] ノルウェー北部エッズフィヨルドにおけるシュードタキライトから推定される地震断層の繰り返し運動

*津田 あすか1奥平 敬元1 (1.大阪公立大学)


目的:地震の化石,シュードタキライトは地震性の破砕変形構造を記録した断層岩であり,その成因過程は地震の発生過程に関する重要な情報を与える。シュードタキライトは形成後,変成作用や再結晶作用を受け,異なる時期の異なる作用が重複する可能性が高いため,形成・発達過程の全体像を把握するには破砕変形構造を注意深く観察することが求められる。ノルウェー北部に位置するエッズフィヨルド地域では、下部地殻が広範囲に露出し,地殻スケールでのデタッチメントに伴うシュードタキライトが確認されている(例えば,Markl, 1998)。本研究では,シュードタキライトの注入脈を複数含む斜長岩の破砕変形構造や鉱物化学組成を明らかにし,シュードタキライト脈の形成温度条件の推定から,各シュードタキライト脈の成因的関係の解明と脈形成を伴う地震規模の検討を行うことを目的とした。
手法:破砕変形構造の詳細は,偏光顕微鏡に加え走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。また,鉱物化学組成分析はエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いた。シュードタキライト脈の形成温度は,主に輝石の化学組成を用いてLindsley (1983)の輝石温度計より推定した。さらに,相平衡計算プログラムMELTSによりシュードタキライト形成に伴う溶融過程のモデル計算を行った。
結果:母岩の斜長岩の構成鉱物は斜長石,直方輝石,単斜輝石,カリ長石,石英,黒雲母,磁鉄鉱,イルメナイト,ルチルであり,シュードタキライトにはメルトから晶出した斜長石,単斜輝石,カリ長石,磁鉄鉱が観察された。解析試料には,構成鉱物のサイズと形態が大きく異なる3種類のシュードタキライト(Pt–1, Pt–2, Pt–3)と,破砕が顕著な細粒化ゾーンが認められた。3種類のシュードタキライトのマトリクス部の化学組成に大きな違いはなかった。結晶の急成長を示すデカッセイト組織が最も顕著に見られたPt-1は細粒化ゾーンを切断し,Pt–2はその両者を切断していた。またPt–1,Pt–2,及び細粒化ゾーンが同一の割れ目に沿って変位しており,Pt–3は割れ目,及びPt–2と母岩との境界付近に存在していた。輝石温度計から,母岩及びシュードタキライト中の輝石の結晶化温度として,それぞれ~600 ℃,~1000℃を得た。
議論:構成鉱物のサイズと形態が大きく異なる3種類のシュードタキライトが,同一試料内に共存しており,構造的特徴より形成順序が明らかであることから,少なくとも3回のメルト注入があったと考えられる。しかし,各シュードタキライトのマトリクス部の化学組成に大きな違いがないことから,剪断帯の脆性領域において破砕と溶融が繰り返し起こったことが示唆される。シュードタキライトに含まれる輝石の結晶化温度(~1000℃)は,シュードタキライトメルトから輝石が晶出した温度であり,メルト形成時の温度はこれ以上であると考えられる。MELTSを用いて母岩の溶融に必要なエネルギーを推定すると,27.14 MJ/m3以上となった。本講演では,見積もられた溶融エネルギーから地震の規模などについて議論する予定である。

引用文献:Markl G (1998) NGU-Bull 434, 53‒75; Lindsley DH (1983) American Mineralogist 68, 477-493.