日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:柴田 律也(防災科学技術研究所)、澤井 みち代(千葉大学)、奥田 花也(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、津田 健一(清水建設 株式会社 技術研究所)

17:15 〜 19:15

[SSS10-P26] 砂岩の摩擦・摩耗モデル構築に向けた白浜砂岩を用いた剪断摩擦実験の予察的結果

*前田 純伶1山下 太2 (1.国立研究開発法人産業技術総合研究所 、2.国立研究開発法人防災科学技術研究所)

断層破砕帯の幅はその断層の長さや累積変位量と相関関係にあることが経験的に知られており(例えば,Ogata, 1976; Otsuki, 1978),断層で発生する地震の最大規模を予測するための情報として用いられている.しかし,岩種によって累積変位量に対する断層の幅の成長率が異なることや(Shipoton et al., 2006),経験的な相関関係から大きく外れる断層も存在する(郷村断層,例えば,松田・他, 2004)ことから,この相関関係の背後にある物理メカニズムや例外が生じる理由を明らかにすることは,地震の発生の理解と地震規模の評価において重要である.Hirose et al. (2012) は,回転剪断実験により,石灰質砂岩の低い摩耗率が剪断面に形成される鏡面構造と関連している可能性を示した.また,その低い摩耗率が,砂岩中の断層帯幅が断層変位に対して小さい傾向を示す要因であることを示唆している.前田・他 (2023, JpGU)もまた石英質砂岩を用いた剪断摩擦実験により,剪断面に鏡面構造が形成される条件において石英質砂岩の摩耗率が著しく低くなることを明らかにした.ただし,石灰質砂岩と石英質砂岩では鏡面構造の形成条件が大きく異なる.鏡面構造の形成や摩耗を左右する要因として,岩石を構成する鉱物組成が考えられることから,それら二つとは異なる鉱物組成を持つ白浜砂岩に着目し,剪断摩擦実験を行って摩擦・摩耗特性を調査した.本研究では,その予察的結果を報告する.
実験に使用した岩石試料は白浜砂岩(産地:和歌山県白浜町)を円柱状(直径:約25 mm,長さ:約40 mm)に成形したものである.先行研究から白浜砂岩は主に石英(22.5%),長石類(29.9%),基質(36.7%)から構成されており,アレナイト質砂岩に分類されると考えられる(例えば,藤田・他,2000).試験機は防災科学技術研究所が保有している回転剪断摩擦試験機を用いた.剪断摩擦実験は室温下にて法線応力0.5~1.2 MPa,すべり速度0.010~0.080 m/s,すべり距離約50 mの条件で行った.実験後,入力仕事率(すべり速度と法線応力の積)を算出し,すべり距離10–50 mの範囲を摩擦係数の定常状態と仮定して摩擦係数の平均値(μave)を求め,その関係を調査した.摩耗率に関しては,軸変位および実験後に回収した摩耗物の質量から算出した.
実験結果から,白浜砂岩は入力仕事率が0.05 MW/m2よりも低い条件ではμaveが0.38–0.53の値を示すのに対して,0.05 MW/m2を超えるとμaveは0.30–0.35と有意に低下することが明らかとなった.摩耗率も入力仕事率0.05 MW/m2を境に低摩耗率から高摩耗率に変化する傾向にあることが示唆された.また,実験後に剪断面を観察したところ,入力仕事率が0.05 MW/m2よりも高い条件の実験では剪断面にリング状の鏡面構造が形成されることが判明した.
白浜砂岩の鏡面構造が形成される条件においても摩耗率が低下しないという結果は,前田・他 (2023, JpGU)で得られた石英質砂岩の結果とは対照的であり,鉱物組成の違いに起因するものと考えられる.