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[SSS10-P30] 変はんれい岩ガウジの速度・状態依存摩擦パラメタが示す垂直応力依存性
キーワード:摩擦実験、ガウジ、速度・状態依存摩擦則、垂直応力依存性
速度・状態依存摩擦則は複雑な摩擦すべりの表現が可能であり,様々な断層挙動のシミュレーションやモデリングに広く用いられている.摩擦パラメタの一つである臨界すべり距離Dcは摩擦面の状態が変化した後に次の状態に遷移するまでに必要な距離として認識されており,岩石粉末を模擬ガウジとして用いた室内実験からは,Dcがガウジ層の厚さや変形が集中するせん断帯の厚さと正の相関関係にあることが示されている(Marone and Kilgore, 1993, Nature).近年,山下他(2024, 地震学会)は,センチメートルとメートルの二つの異なる断層スケールでおこなった速度ステップ実験の結果に基づき,変はんれい岩模擬ガウジのDcが断層スケールによって異なるように見えることを報告した.さらにその要因の一つが,変はんれい岩模擬ガウジのDcが垂直応力に対して正の依存性を持つことである可能性を示唆している.ただしその垂直応力依存性の調査における垂直応力は3.4 MPaから20 MPaに限られており,そのDcと垂直応力の正の相関関係がさらに大きな垂直応力まで続くのかは不明であった.また,摩擦パラメタの推定においては簡便のため状態変数は一つと仮定されていたが,この相関関係のメカニズムを深く理解するためには,より多くの状態変数が必要であると考えられた.そこで本研究では,さらに高垂直応力の30 MPaおよび40 MPaでの速度ステップ実験を実施し,得られた応答を二つの状態変数の摩擦則で解釈することとした.
実験で使用した試験機は山下他(2024, 地震学会)と同じく,電力中央研究所が所有する二軸摩擦試験機(Mizoguchi et al., 2021, EPS)である.また模擬ガウジも同様に変はんれい岩の粉末(平均粒径12 µm,最大粒径75 µm)を使用し,初期層厚を3 mmとした.30 MPaもしくは40 MPaの垂直応力を載荷した後,0.1-1.0-10.0-100.0 µm/s間で速度ステップ変化を与えたが,本研究ではメートルスケール実験の条件と同じ,もしくは近い,10.0 µm/sから100.0 µm/sおよび1.0 µm/sから10.0 µm/sへの速度上昇ステップに対する応答を解析対象とした.応答はSlip law (Ruina, 1983, JGR)に従うと仮定し,摩擦挙動を最も良く再現する摩擦パラメタの組み合わせをグリッドサーチにより探索した.探索の際には実験データから直接読み取れる情報を利用して探索範囲を狭めた.具体的には,(1) 速度ステップ後の変位に対する摩擦係数の増加率を近似的に系の剛性と仮定,(2) V1からV2への速度ステップ後の摩擦係数のピーク値がaln(V2/V1)以下であることからaの最小値を確定,(3) 速度ステップ前の摩擦係数の平均値とステップ後に過渡的応答が完了した後の摩擦係数の平均値の差から(a-b1-b2)ln(V2/V1)を確定,である.
測定データに対し決定係数R2が0.5以上でフィットした最適モデルの摩擦パラメタ全てと垂直応力の関係を確認すると,a-b1-b2は10 MPaまでは垂直応力とともに減少し,それ以降はほぼ一定であるように見えた.Dc1 < Dc2と定義すると,全ての垂直応力下でのDc1の平均値は数µm程度,Dc2の平均値は数100 µm程度であったが,どちらも垂直応力に対する明瞭な依存性は見られなかった.しかしながら,載荷速度が10.0 µm/sから100.0 µm/sへ速度ステップした時の応答に限定すると,a,b1,b2は垂直応力に寄らずほぼ一定であるのに対し,Dc1,Dc2はともに垂直応力が大きくなるにつれ増加する傾向が確認できた.メートルスケール実験の載荷速度は10.0 µm/s以上であったことから,このDcの垂直応力依存性が働いてスケール依存性を産み出したのかもしれない.今後,ガウジ層内の変形構造の観察などを通して引き続きそのメカニズムについて検討を行っていく.
実験で使用した試験機は山下他(2024, 地震学会)と同じく,電力中央研究所が所有する二軸摩擦試験機(Mizoguchi et al., 2021, EPS)である.また模擬ガウジも同様に変はんれい岩の粉末(平均粒径12 µm,最大粒径75 µm)を使用し,初期層厚を3 mmとした.30 MPaもしくは40 MPaの垂直応力を載荷した後,0.1-1.0-10.0-100.0 µm/s間で速度ステップ変化を与えたが,本研究ではメートルスケール実験の条件と同じ,もしくは近い,10.0 µm/sから100.0 µm/sおよび1.0 µm/sから10.0 µm/sへの速度上昇ステップに対する応答を解析対象とした.応答はSlip law (Ruina, 1983, JGR)に従うと仮定し,摩擦挙動を最も良く再現する摩擦パラメタの組み合わせをグリッドサーチにより探索した.探索の際には実験データから直接読み取れる情報を利用して探索範囲を狭めた.具体的には,(1) 速度ステップ後の変位に対する摩擦係数の増加率を近似的に系の剛性と仮定,(2) V1からV2への速度ステップ後の摩擦係数のピーク値がaln(V2/V1)以下であることからaの最小値を確定,(3) 速度ステップ前の摩擦係数の平均値とステップ後に過渡的応答が完了した後の摩擦係数の平均値の差から(a-b1-b2)ln(V2/V1)を確定,である.
測定データに対し決定係数R2が0.5以上でフィットした最適モデルの摩擦パラメタ全てと垂直応力の関係を確認すると,a-b1-b2は10 MPaまでは垂直応力とともに減少し,それ以降はほぼ一定であるように見えた.Dc1 < Dc2と定義すると,全ての垂直応力下でのDc1の平均値は数µm程度,Dc2の平均値は数100 µm程度であったが,どちらも垂直応力に対する明瞭な依存性は見られなかった.しかしながら,載荷速度が10.0 µm/sから100.0 µm/sへ速度ステップした時の応答に限定すると,a,b1,b2は垂直応力に寄らずほぼ一定であるのに対し,Dc1,Dc2はともに垂直応力が大きくなるにつれ増加する傾向が確認できた.メートルスケール実験の載荷速度は10.0 µm/s以上であったことから,このDcの垂直応力依存性が働いてスケール依存性を産み出したのかもしれない.今後,ガウジ層内の変形構造の観察などを通して引き続きそのメカニズムについて検討を行っていく.