日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:柴田 律也(防災科学技術研究所)、澤井 みち代(千葉大学)、奥田 花也(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、津田 健一(清水建設 株式会社 技術研究所)

17:15 〜 19:15

[SSS10-P31] 間隙水圧加圧速度及び摩擦面粗さによる透水性が摩擦挙動に与える影響

*岩田 琉空1上原 真一1 (1.東邦大学)


キーワード:注水誘発地震、摩擦挙動、間隙水圧

研究の背景と目的
 地熱開発などに伴う地下深部への流体圧入による間隙水圧の増加は地震性滑りを引き起こすリスクをはらむ。断層面の間隙水圧が増加すると有効法線応力が低下し、せん断強度が減少するため、断層面は滑りやすくなる。したがって、断層面の間隙水圧の分布はせん断強度の分布に直接的に関係するため、注水誘発地震の発生に影響を及ぼすと考えられる。断層面上の間隙水圧の分布は、流体注入時の流体圧の加圧速度(間隙水圧加圧速度, vp)や断層面沿いの透水性に依存することが予想される。vp や断層面沿いの透水性が摩擦挙動に与える影響を解明することは、地熱開発やシェールガス生産の際に生じる注水誘発地震のリスク評価に役立つと期待される。
 Passelègue et al.(2018)は vp を制御して注水摩擦実験を行い、vp が大きいほど滑り時の注水箇所の間隙水圧が大きくなることを示した。また、小さい vp では摩擦面に間隙水圧が均一に分布するのに対して、大きい vp では注水箇所周辺の間隙水圧が大きくなり、摩擦面に間隙水圧が不均一に分布することを示した。しかし、vp や断層面沿いの透水性が摩擦挙動に与える影響については、不明な点が多い。
 本研究では、室内岩石注水摩擦実験を行い、vp 及び摩擦面粗さによる透水性の違いが摩擦挙動に与える影響を明らかにすることを目的とする。

研究の方法
 岩石試料には、庵治花崗岩を直径40 mm、長さ80 mmの円柱形に整形したものを使用した。この試料を軸方向から 30° の方向で斜めに切断した。摩擦面に間隙水を供給するために、摩擦面から垂直かつ底面の中心を通るように直径2.5 mm の穴を設けた。また、透水性の異なる摩擦面を作成するために、摩擦面を#80(平均粒径約200 µm)、#3000(平均粒径約4 µm)の2つの異なる粗さの耐水研磨紙及びカーボン・アランダムで研磨した。
室内岩石注水実験は、三軸圧縮試験機を用いて行った。主な実験条件は封圧60 MPa 、初期間隙水圧0.1 MPa、軸載荷速度0.1 mm/minとした。実験手順は、初期間隙水圧一定、軸載荷を荷重して1回スティック-スリップを起こして、次の滑りが起きる直前で軸変位を一定に保った状態にした。同時に、シリンジポンプを用いて、vp 一定で間隙水圧を制御した。vp は、vp = 0.1 MPa/min、1.0 MPa/min の2つの条件で実験を行った。下流側はバルブを閉じて、下流側間隙水圧計で間隙水圧を測定した。実験結果より、vp 及び摩擦面粗さの違いによる摩擦挙動への影響を考察した。

結果と考察
 #3000 試料での vp = 0.1 MPa/min、1.0 MPa/min 制御実験の滑り時の上流側の間隙水圧を比較すると、vp = 0.1 MPa/min制御実験では上流側の間隙水圧6.9 MPa の時に滑りが生じた。vp = 1.0 MPa/min制御実験では上流側の間隙水圧16.3 MPaの時に滑りが生じた。このことより、vp = 0.1 MPa/min制御実験の方が滑り時の上流側の間隙水圧がより小さくなった。これはPasselègue et al.(2018)の結果と整合的である。小さい vp ほど摩擦面に間隙水圧が均一に分布するためだと考えられる。また、滑り時のせん断応力降下量を比較すると、vp = 0.1 MPa/min制御実験ではせん断応力降下量 2.29 MPa の滑りが生じた。vp = 1.0 MPa/min制御実験ではせん断応力降下量 3.30 MPaの滑りが生じた。vp = 1.0 MPa/min制御実験の方が滑り時のせん断応力降下量が大きくなった。このことから、vpが大きいほど地震規模が大きいことが示唆される。
 vp = 1.0 MPa/min 制御実験での #80 試料と #3000 試料の比較を行う。#80 試料では、上流側の間隙水圧 24.6 MPaの時に滑りが生じた。#3000 試料では、上流側の間隙水圧16.3 MPaの時にせん断応力降下量 3.30 MPa の滑りが生じた。このことより、#80 試料の方がより大きい上流側の間隙水圧で滑りが生じた。透水性が大きい#80 試料の方が摩擦面に間隙水圧が伝わりやすいため、より小さい上流側の間隙水圧で滑りが生じると予想していた。そのため、実験結果は予想と異なる結果となった。この要因としては、#80 試料の摩擦面研磨が不十分であったことが考えられる。


参考文献
F.X. Passelegue, et al.,2018, Fault reactivation by fluid injection: Controls from stress state and injection rate, Geophysical Research Letters ,45,12,837-12,846.