日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 強震動・地震災害

2025年5月29日(木) 15:30 〜 17:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、友澤 裕介(鹿島建設)、座長:長 郁夫(産業技術総合研究所)、久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

16:00 〜 16:15

[SSS11-03] 東京湾岸で観測された3つの日向灘地震の記録比較

*植竹 富一1 (1.東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 技術開発部)

キーワード:長周期地震動、速度応答スペクトル、南海トラフ地震、表面波

1.はじめに
 南海トラフで発生する地震による長周期地震動を捉えることを目的に,2006年以来,東京湾岸の火力発電所において広帯域速度計による観測を実施している.ここ数年,日向灘周辺でマグニチュードの大きな地震が発生している.2024年8月8日にMj7.1のプレート間地震が発生し,2025年1月13日にMj6.6のプレート間地震が発生した.また,2022年1月22日にはMj6.6のスラブ内地震が発生している.これらの地震について,東京湾岸で得られた記録の比較分析を試みた.また,周辺で発生した2024年4月17日豊後水道のスラブ内地震Mj6.6,2016年4月16日の熊本地震Mj7.3の波形との比較も行った.

2.東京湾岸で観測された速度波形
 日向灘で発生した3地震について,神奈川県の川崎火力で得られた波形及び速度応答スペクトル(h=5%)を図に示す.地震観測は,東京測振製の速度センサー(VSE355-G3)とデジタル収録装置(CV570)で行われている.トリガー観測のため,地震波形の頭の部分に欠落が生じているが長時間の記録が得られている.
まず,2024年8月8日の地震(Mj7.1,深さ31km,震央距離855km)と2025年1月13日の地震(Mj6.6,深さ36km,震央距離865km)の波形を比較する.この2地震は,プレート境界の逆断層地震で,震源も近くメカニズムも似ている.2地震の波形は,3成分とも長周期で,振幅は8月8日の方が大きいが,長周期の波群の形状や出現のタイミングはほぼ同じである.一方,スラブ内地震である2022年1月22日の地震(Mj6.6,深さ45km,震央距離774km)の波形は,相対的に短周期で顕著な波群は見当たらない.マルチフィルター解析を行うと,2024年8月の地震及び2025年1月の地震における振幅の大きな波群では,0.1Hz未満の周波数が卓越し分散性も明瞭であるが,2022年1月の地震波形には0.1Hz未満の成分の卓越は認められない.

3.速度応答スペクトル
 川崎火力の記録で速度応答スペクトル(減衰5%)を比較する.2024年8月の地震と2025年1月の地震では,周期約15秒に明瞭なピークが確認できる.周期2~10秒の範囲では,2024年8月の地震の方が2025年1月の地震より大きいが,周期2秒以下では両地震とも同程度である.一方,2022年1月の地震のスペクトルでは周期約15秒のピークは見られない.ただし,4秒以下のスペクトル振幅は、2024年4月の地震と2024年8月の地震で同程度である.

4.近傍の地震による記録との比較
 日向灘の周辺域で発生した地震による記録と比較を行った.2024年4月17日豊後水道の地震(Mj6.6,深さ39km,震央距離723km)はスラブ内地震である.その波形は,2022年1月の日向灘の地震と同様な特徴を持っている.波形には顕著な長周期の波群は認められず,速度応答スペクトルの形状も振幅も同等であった.また,九州内陸で発生した2016年熊本地震(Mj7.3,深さ12km,震央距離884km)の波形は,2024年8月の地震(Mj7.1) と比べて速度振幅が大きい.水平動で10倍,上下動で3倍程度である.ただし,継続時間は短く,上下動には顕著な長周期波群は認められない.スペクトルの卓越周期も短い.関東への波動の伝播経路がトラフ沿いではないため,波動の分散が進んでいない可能性がある.また,震源メカニズムが横ずれ断層で,破壊が東に向かって進行した影響が出ている可能性もある.

謝 辞
 火力発電所における観測は,(株)JERAの協力を得ています.震源情報は気象庁からダウンロードいたしました.作図にはGMTを用いました.記して感謝致します.