日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 強震動・地震災害

2025年5月30日(金) 09:00 〜 10:30 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、友澤 裕介(鹿島建設)、座長:香川 敬生(鳥取大学工学部)、浅野 公之(京都大学防災研究所)

10:00 〜 10:15

[SSS11-10] 森本・富樫断層帯周辺の深部地盤構造モデルの更新

*浅野 公之1岩田 知孝6鈴木 晴彦2、山田 純平2吉見 雅行3二宮 啓3先名 重樹4大堀 道広5関口 春子1長嶋 史明1松島 信一1 (1.京都大学防災研究所、2.応用地質、3.産業技術総合研究所、4.防災科学技術研究所、5.滋賀県立大学、6.京都大学名誉教授)

キーワード:森本・富樫断層帯、深部地盤構造モデル、強震動予測、微動アレイ探査

石川県河北郡津幡町から白山市にかけての加賀平野と丘陵の境界に森本・富樫断層帯が存在しており、丘陵側が平野側に乗り上げる逆断層型の主要活断層帯である。地震調査研究推進本部の長期評価に拠れば、30年以内にM7.2の地震が発生する確率は2~8%であり、S*ランクの活断層として評価されている(地震調査委員会, 2025)。また、この地震が発生した場合は、金沢市などが位置する加賀平野のほか、富山県の砺波平野など周辺地域の広い範囲が強い揺れに見舞われることが予測されており、防災科学技術研究所J-SHISによれば、震度5強以上の揺れの遭遇人口は約150万人と評価されている(防災科学技術研究所, 2024)。
京都大学防災研究所では、金沢大学、東京大学地震研究所、産業技術総合研究所、防災科学技術研究所をはじめ国内各機関の関連研究者と連携し、2022年度から3ヶ年の計画で「森本・富樫断層帯における重点的な調査観測」を実施している。本プロジェクトのサブテーマ3では、強震動予測の高度化を目的に、森本・富樫断層帯周辺での臨時強震観測(浅野・他, 2024SSJ)、石川県及び富山県西部の浅部・深部統合地盤構造モデルの作成を進めてきた。本発表では、このうち、地震基盤から工学的基盤(VS = 350 m/s)までを対象とした深部地盤構造モデルの更新について報告する。
本研究では、2022年から2024年にかけて、計11地点(金沢市4地点、白山市2地点、能美市1地点、津幡町2地点、高岡市1地点、氷見市1地点)で微動アレイ探査を行った。各地点では表層から地震基盤までの速度構造を把握するため、最大約2 kmから最小60 cmまでの多数のアレイ半径サイズの微動アレイ観測を実施した。上盤側の森本丘陵や津幡丘陵でも、更新統(卯辰山層・大桑層など)から新第三系までの堆積層が厚く堆積していることから、これらの地域でも微動アレイ探査を実施した。また、石川県全域及び富山県西部の全ての強震・震度観測点において、速度計LE-3D/20sを用いた単点微動観測を実施した。加えて、日本海地震・津波調査プロジェクト(Asano et al., 2020)のほか、既往研究(神野・他, 2003; 山中・他, 2008; 浅野・他, 2009; 堀川・他, 2010, 鈴木・他, 2021; 岩田・他, 2022)で実施された微動アレイ探査データやH/V観測データも収集し、モデル更新に使用した。このほか、本プロジェクトや他のプロジェクトにおいて東京大学地震研究所等が実施した反射法・屈折法地震探査や既存測線の再解析データも参照した。
深部地盤構造モデルの更新は、J-SHIS深部地盤構造モデルV4を初期モデルとして修正を行うことにより行った。まず、微動アレイによる位相速度分散曲線(Rayleigh波基本モードとしてモデル化)及びH/Vスペクトル比を用いて、各地点での一次元S波速度構造の各速度層の層厚を調整した。その際、加賀平野周辺においては、既存のJ-SHIS深部地盤構造モデルV4にS波速度0.6, 1.1, 1.7, 2.1, 2.7 km/sの層が設定されているが、位相速度分散曲線をよりよく説明するため、S波速度0.7 km/sの層を追加した。また、分散曲線やH/Vスペクトル比をフィッティングする際に、S波速度が0.5 km/s以下の層は0.05 km/s刻みでモデル化した。これにより、多くの地点で位相速度やH/Vスペクトル比を適切に再現できるような速度構造モデルを得ることができた。各点でのモデル修正結果をもとに、重力異常や地表地質情報も考慮しながら、面的に修正量を展開し、三次元深部地盤構造モデルを更新した。反射法・屈折法地震探査による速度断面と比較しながら、検証・調整を行った。その結果、例えば、地震基盤深度については、加賀平野の一部で既往モデルより深くなる一方、射水平野周辺では400 m程度浅くなったほか、邑知潟平野の地溝帯の構造が鮮明になったことなど、対象地域の各地で探査データを充実させたことにより、より詳細な地盤構造モデルを得ることができた。堆積層内各層の境界深度も修正が行われている。
今後、臨時強震観測記録や震度計記録を用いて、地震動シミュレーションによる検証も行う予定である。
謝辞:本研究は令和4~6年度文部科学省科学技術基礎調査等委託「森本・富樫断層帯における重点的な調査観測」において実施しました。微動アレイ観測では、京都大学の大学院生の参加も得て実施しました。単点微動観測は一般財団法人GRI財団の皆様にご協力頂きました。位相速度分散曲線などのデータをご提供頂いた研究者の皆様、現地観測でご協力頂いた石川県、富山県、各市町村、気象台や地域住民の皆様に謹んで感謝申し上げます。