11:00 〜 11:15
[SSS11-13] 太平洋プレートのプレート間地震を対象とした加速度応答スペクトル予測式の構築に向けて(2)
キーワード:地震動予測式、加速度応答スペクトル、プレート間地震
1.はじめに
古村・他(2024a, 2024b)では、太平洋プレートのプレート間地震を対象に加速度応答スペクトル(周期0.5, 1.0, 2.0, 3.0, 5.0秒)の予測式構築の検討を行った。得られた回帰係数は観測事実と調和的で、既往研究とも大きく異ならない結果となった。しかし、地震規模依存性がモデルの一次式からずれていることが確認され、北海道北部で残差が大きく地殻構造の影響を受けている可能性が示唆された。日本海溝と千島海溝の地震での残差の特徴の違いも確認された。
そこで本検討では、地震規模依存性と地下構造の影響に着目し、モデル式の検討や残差のばらつきについて検討した。検討対象のデータは、前報と同じく、Mw5.5~8.7の38地震、1,034観測点の10,400記録である。
2.地下構造依存性のモデル化
まずStep 1として、地下構造の違いによるサイト特性や伝播経路特性への影響を説明する最適なパラメータの組み合わせを検討した。具体的には、震源特性と距離減衰のみの基本的な式形に対して地下構造に関するパラメータを1変数ずつ追加した回帰分析を行い、観測値に対する標準偏差を比較した。回帰分析において、震源特性は地震毎に推定して、その他の回帰係数を全地震共通として同時に推定した。
その結果、浅部地盤の増幅はVs30が観測値の説明性が高く、深部地盤の増幅はD3100に比べてD1400の方が観測値の説明性が高いこと、地殻・マントル・プレートの構造(Koketsu et al., 2012参照)に関するパラメータとして、短周期側においてマントルの厚さが観測値の説明性が高いことが分かった。地殻の厚さをパラメータとして追加することで、長周期側の残差はわずかであるが小さくなった。最終的に、基本的な式形に対してVs30・D1400・マントルの厚さをパラメータとして追加したケースを採用した。
3.地震規模依存性のモデル化
次にStep 2として、Step 1で求めた地震毎の震源特性とMwの関係について回帰分析を行い、Mw5.5~8.7の規模依存性を説明可能な震源特性のモデル化を検討した。回帰に用いた式形は、1次式(傾き1種と2種の2通り)と2次式の3ケースを試行した。その結果、「1次式、傾き1種」とした場合ではMw8以上で地震毎の震源特性に対して過大評価となったが、「1次式、傾き2種」または「2次式」とした場合ではMw5.5~8.7の震源特性を良く説明できることが分かった。また、本検討では「1次式、傾き2種」の方が「2次式」に比べて標準偏差がやや小さい結果となった。
4.構築した地震動予測式と今後の展望
2.および3.の検討結果より構築した式は以下の通りである。
log10Sa = A - bΔ - βlog10Δ -dδ0 + G(Vs30,D1400) ± σ
A = Aw1Mw + Ac (if Mw≦Mth)
A = Aw1Mth + Aw2(Mw - Mth) + Ac (if Mth<Mw)
δ0 = δmin (if δ<δmin)
δ0 = δ (if δmin≦δ<δmax)
δ0 = δmax (if δmax≦δ)
G(Vs30,D1400) = gVlog10(min[Vs30,Vmax]) + gDlog10(max[D1400,Dmin])
ここで、
Sa :減衰定数5%の加速度応答スペクトル[cm/s2] ※Boore(2010)によるRotD50
Aw1,Aw2,Ac:震源特性に関する回帰係数
Mw:モーメントマグニチュード
Mth:震源特性の地震規模依存性が変化するMw
b, β:減衰特性に関する回帰係数
Δ:断層最短距離[km] ※断層を楕円で表現
d:地下構造(伝播経路)に関する回帰係数
δ:マントルの厚さ[km] ※JIVSMモデルによるマントル上面~太平洋プレート上面
dmin, dmax:マントルの厚さの下限値及び上限値[km] ※上限値は西日本のみに適用
(北海道北部はそのままの深度)
gV:地下構造(浅部地盤)に関する回帰係数
Vs30:地表から30mの平均S波速度[m/s] ※PS検層+翠川・野木(2015)
Vmax:Vs30の上限値
gD:地盤増幅特性に関する回帰係数
D1400:Vs≧1400m/sとなる層までの深度[m] ※J-SHIS深部地盤構造モデル(V4)
Dmin:D1400の下限値
σ:標準偏差
構築した地震動予測式を用いて回帰に用いた全データの残差を計算して求めた標準偏差は0.25~0.3程度の値となった。既往研究の標準偏差と比較したがデータセットの違いにより直接的な比較が難しく、今後の検討として防災科学技術研究所「強震動データフラットファイル2023年版」を用いた分析が考えられる。
謝辞
本研究は「地震調査研究推進本部の評価等支援事業」の一部として文部科学省からの委託によって実施した。K-NET、KiK-netのデータを使用した。図の作成にはGMTを用いた。
古村・他(2024a, 2024b)では、太平洋プレートのプレート間地震を対象に加速度応答スペクトル(周期0.5, 1.0, 2.0, 3.0, 5.0秒)の予測式構築の検討を行った。得られた回帰係数は観測事実と調和的で、既往研究とも大きく異ならない結果となった。しかし、地震規模依存性がモデルの一次式からずれていることが確認され、北海道北部で残差が大きく地殻構造の影響を受けている可能性が示唆された。日本海溝と千島海溝の地震での残差の特徴の違いも確認された。
そこで本検討では、地震規模依存性と地下構造の影響に着目し、モデル式の検討や残差のばらつきについて検討した。検討対象のデータは、前報と同じく、Mw5.5~8.7の38地震、1,034観測点の10,400記録である。
2.地下構造依存性のモデル化
まずStep 1として、地下構造の違いによるサイト特性や伝播経路特性への影響を説明する最適なパラメータの組み合わせを検討した。具体的には、震源特性と距離減衰のみの基本的な式形に対して地下構造に関するパラメータを1変数ずつ追加した回帰分析を行い、観測値に対する標準偏差を比較した。回帰分析において、震源特性は地震毎に推定して、その他の回帰係数を全地震共通として同時に推定した。
その結果、浅部地盤の増幅はVs30が観測値の説明性が高く、深部地盤の増幅はD3100に比べてD1400の方が観測値の説明性が高いこと、地殻・マントル・プレートの構造(Koketsu et al., 2012参照)に関するパラメータとして、短周期側においてマントルの厚さが観測値の説明性が高いことが分かった。地殻の厚さをパラメータとして追加することで、長周期側の残差はわずかであるが小さくなった。最終的に、基本的な式形に対してVs30・D1400・マントルの厚さをパラメータとして追加したケースを採用した。
3.地震規模依存性のモデル化
次にStep 2として、Step 1で求めた地震毎の震源特性とMwの関係について回帰分析を行い、Mw5.5~8.7の規模依存性を説明可能な震源特性のモデル化を検討した。回帰に用いた式形は、1次式(傾き1種と2種の2通り)と2次式の3ケースを試行した。その結果、「1次式、傾き1種」とした場合ではMw8以上で地震毎の震源特性に対して過大評価となったが、「1次式、傾き2種」または「2次式」とした場合ではMw5.5~8.7の震源特性を良く説明できることが分かった。また、本検討では「1次式、傾き2種」の方が「2次式」に比べて標準偏差がやや小さい結果となった。
4.構築した地震動予測式と今後の展望
2.および3.の検討結果より構築した式は以下の通りである。
log10Sa = A - bΔ - βlog10Δ -dδ0 + G(Vs30,D1400) ± σ
A = Aw1Mw + Ac (if Mw≦Mth)
A = Aw1Mth + Aw2(Mw - Mth) + Ac (if Mth<Mw)
δ0 = δmin (if δ<δmin)
δ0 = δ (if δmin≦δ<δmax)
δ0 = δmax (if δmax≦δ)
G(Vs30,D1400) = gVlog10(min[Vs30,Vmax]) + gDlog10(max[D1400,Dmin])
ここで、
Sa :減衰定数5%の加速度応答スペクトル[cm/s2] ※Boore(2010)によるRotD50
Aw1,Aw2,Ac:震源特性に関する回帰係数
Mw:モーメントマグニチュード
Mth:震源特性の地震規模依存性が変化するMw
b, β:減衰特性に関する回帰係数
Δ:断層最短距離[km] ※断層を楕円で表現
d:地下構造(伝播経路)に関する回帰係数
δ:マントルの厚さ[km] ※JIVSMモデルによるマントル上面~太平洋プレート上面
dmin, dmax:マントルの厚さの下限値及び上限値[km] ※上限値は西日本のみに適用
(北海道北部はそのままの深度)
gV:地下構造(浅部地盤)に関する回帰係数
Vs30:地表から30mの平均S波速度[m/s] ※PS検層+翠川・野木(2015)
Vmax:Vs30の上限値
gD:地盤増幅特性に関する回帰係数
D1400:Vs≧1400m/sとなる層までの深度[m] ※J-SHIS深部地盤構造モデル(V4)
Dmin:D1400の下限値
σ:標準偏差
構築した地震動予測式を用いて回帰に用いた全データの残差を計算して求めた標準偏差は0.25~0.3程度の値となった。既往研究の標準偏差と比較したがデータセットの違いにより直接的な比較が難しく、今後の検討として防災科学技術研究所「強震動データフラットファイル2023年版」を用いた分析が考えられる。
謝辞
本研究は「地震調査研究推進本部の評価等支援事業」の一部として文部科学省からの委託によって実施した。K-NET、KiK-netのデータを使用した。図の作成にはGMTを用いた。