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[SSS11-19] 統計的グリーン関数法におけるグリーン関数法の改良について―その2:モホ反射面と地殻の層構造を考慮した計算波と観測波の比較―
キーワード:統計的グリーン関数法、波数積分法、モホ・深部地殻反射波、2019年山形県沖地震の余震、KiK-net強震記録
1.はじめに
前報(久田、2024)に続き、統計的グリーン関数法(以下、SGF法)における地殻・マントルの層構造による透過・反射波等の短周期強震動に及ぼす影響を調べ、実際の強震観測記録との比較検討を行う。
2.モホ反射面および地殻層構造を考慮したグリーン関数の違いによる波形性状の比較
対象とする地震は図1と表1に示す2019年山形県沖地震の余震(Mj4.0)である。金田ほか(2024)はこの地震の本震の際、震源から約150km離れた柏崎刈羽原子力発電所において、観測された強震動に深部地殻・モホ面の反射波等が現れている可能性を報告している。
はじめに、震源から強震観測点までの平均的な深部地盤構造を用いて短周期強震動を計算した。表1の地盤構造の物性値は、地殻上部からマントル層までの4層構造の深部地盤データ(地震本部、2012)とし、各層の層厚は震源とKiK-netの2観測点(YMTH13とYMTH11)の計3か所の直下の層厚の平均値を用いた。震源は上部地殻第2層に位置する。Q値は、表1に示すように主に長周期地震動の計算を対象とした振動数fに依存しない一定Q値(地震本部、2012)と、日本海東縁部で得られたfに依存するQ値(佐藤、2006)の2通りで計算する。震源モデルはHisada(2008)によるP、SH、SV波を別々に放射する統計的震源モデルであり、震源スペクトルはBruneのω2モデル、放射係数は等方(P波0.52、S波0.63)とした。得られた3種の各波形の水平1成分は√2で除して単純に加算した。位相スペクトルは全周波数で0位相としてパルス波を発生させ、波形の追跡を可能とする。全ての計算波形は波数積分法で12.5Hzまで計算し、0.3, 0.4, 10, 12.5 Hzをコーナー振動数とする台形型のバンドパスフィルターを通す。
計算例として図2は、震央距離R=100kmにおけるTransverse、Radial、UDの速度波形とフーリエ振幅スペクトルである(f依存Q値を使用)。各波形は4種示しており、「深層地盤(平均)」は表1の全4層を使用したモデル、「Vs4.5なし」は第4層(マントル)が無いモデル、「Vs4.5&3.8なし」は第4層と第3層の無いモデル、「一様地盤」は震源層である第2層の全無限体での直達実体波のみを使用したモデルである。「深層地盤(平均)」ではマントルと下部地殻から繰り返し反射が現れているが、「Vs4.5なし」では波形の後半のモホ反射波が消えており、「Vs4.5&3.8なし」ではさらに下部地殻からの反射/透過波が無く、波形の振幅が小さく、継続時間も短い。「一様地盤」の直達実体波は比較的大きな振幅を示しているが、これは震源層である上部地殻第2層から第1層に入射する際、遠方で減少する透過係数が考慮されないためである(久田、2024)。フーリエ振幅スペクトルでは、「深層地盤(平均)」より「Vs4.5なし」はやや小さな振幅であり、「Vs4.5&3.8なし」と「一様地盤」では1/3程度の振幅である。
次に図3に、YMTH13(震央距離30.8km)とYMTH11(同96.7 km)を対象に、観測された加速度波形と計算波形の比較を示す。地盤モデルは深層地下構造(地震本部2012)とKiK-net観測点の表層地盤構造を接続したモデルとした。Q値は地震基盤(地殻上部第1層)より深い構造には一定Q値とf依存Q値の2種を用い、地震基盤より浅い地盤には単純に一定Q値(Qs=Vs/15、Qp=1.7Qs)とした。位相スペクトルは全振動数でランダム位相とし、経時関数にはBoore(1983)とMjと震源距離に応じて継続時間が増大するの経験式(佐藤他、1994)の2種を使用した。図3には4種の波形を示しており、「観測B」はKiK-netの地中観測波、「Boore+Q0」はBoore経時関数とQ値一定モデル、「佐藤+Q0」は佐藤他の経時関数とQ値一定モデル、「佐藤+Q=91f^1.03」は佐藤他の経時関数とf依存のQ値を用いた計算結果である。波形の開始時間は発震時間であり、2つの観測点の計算結果は波形の到達時間がやや遅く、振幅は大きめである。震源に近いYMTH13ではBooreの経時関数が主要動の形状に近いが、遠方のYMTH11では佐藤他の経時関数が観測波の長い継続時間を良く再現している。他の観測点を含め、深部構造の反射波や表層地盤の影響などのより詳細な報告を発表当日に行う予定である。
参考文献
Boore, D.M.: BSSA, V.73, pp.1865–1894, 1983.
Hisada, Y.: J. Seismology, V.12, pp.265–279, 2008.
久田嘉章:日本地震学会秋季大会、2024.
地震本部:全国1次地下構造モデル(暫定版)、2012.
金田淳平ほか:日本地震工学会大会、2024.
佐藤智美:第34回地盤震動シンポジウム、pp23–34,2006.
佐藤智美, 川瀬博, 佐藤俊明:日本建築学会構造系論文集、59巻、461号、p. 19-28、1994.
前報(久田、2024)に続き、統計的グリーン関数法(以下、SGF法)における地殻・マントルの層構造による透過・反射波等の短周期強震動に及ぼす影響を調べ、実際の強震観測記録との比較検討を行う。
2.モホ反射面および地殻層構造を考慮したグリーン関数の違いによる波形性状の比較
対象とする地震は図1と表1に示す2019年山形県沖地震の余震(Mj4.0)である。金田ほか(2024)はこの地震の本震の際、震源から約150km離れた柏崎刈羽原子力発電所において、観測された強震動に深部地殻・モホ面の反射波等が現れている可能性を報告している。
はじめに、震源から強震観測点までの平均的な深部地盤構造を用いて短周期強震動を計算した。表1の地盤構造の物性値は、地殻上部からマントル層までの4層構造の深部地盤データ(地震本部、2012)とし、各層の層厚は震源とKiK-netの2観測点(YMTH13とYMTH11)の計3か所の直下の層厚の平均値を用いた。震源は上部地殻第2層に位置する。Q値は、表1に示すように主に長周期地震動の計算を対象とした振動数fに依存しない一定Q値(地震本部、2012)と、日本海東縁部で得られたfに依存するQ値(佐藤、2006)の2通りで計算する。震源モデルはHisada(2008)によるP、SH、SV波を別々に放射する統計的震源モデルであり、震源スペクトルはBruneのω2モデル、放射係数は等方(P波0.52、S波0.63)とした。得られた3種の各波形の水平1成分は√2で除して単純に加算した。位相スペクトルは全周波数で0位相としてパルス波を発生させ、波形の追跡を可能とする。全ての計算波形は波数積分法で12.5Hzまで計算し、0.3, 0.4, 10, 12.5 Hzをコーナー振動数とする台形型のバンドパスフィルターを通す。
計算例として図2は、震央距離R=100kmにおけるTransverse、Radial、UDの速度波形とフーリエ振幅スペクトルである(f依存Q値を使用)。各波形は4種示しており、「深層地盤(平均)」は表1の全4層を使用したモデル、「Vs4.5なし」は第4層(マントル)が無いモデル、「Vs4.5&3.8なし」は第4層と第3層の無いモデル、「一様地盤」は震源層である第2層の全無限体での直達実体波のみを使用したモデルである。「深層地盤(平均)」ではマントルと下部地殻から繰り返し反射が現れているが、「Vs4.5なし」では波形の後半のモホ反射波が消えており、「Vs4.5&3.8なし」ではさらに下部地殻からの反射/透過波が無く、波形の振幅が小さく、継続時間も短い。「一様地盤」の直達実体波は比較的大きな振幅を示しているが、これは震源層である上部地殻第2層から第1層に入射する際、遠方で減少する透過係数が考慮されないためである(久田、2024)。フーリエ振幅スペクトルでは、「深層地盤(平均)」より「Vs4.5なし」はやや小さな振幅であり、「Vs4.5&3.8なし」と「一様地盤」では1/3程度の振幅である。
次に図3に、YMTH13(震央距離30.8km)とYMTH11(同96.7 km)を対象に、観測された加速度波形と計算波形の比較を示す。地盤モデルは深層地下構造(地震本部2012)とKiK-net観測点の表層地盤構造を接続したモデルとした。Q値は地震基盤(地殻上部第1層)より深い構造には一定Q値とf依存Q値の2種を用い、地震基盤より浅い地盤には単純に一定Q値(Qs=Vs/15、Qp=1.7Qs)とした。位相スペクトルは全振動数でランダム位相とし、経時関数にはBoore(1983)とMjと震源距離に応じて継続時間が増大するの経験式(佐藤他、1994)の2種を使用した。図3には4種の波形を示しており、「観測B」はKiK-netの地中観測波、「Boore+Q0」はBoore経時関数とQ値一定モデル、「佐藤+Q0」は佐藤他の経時関数とQ値一定モデル、「佐藤+Q=91f^1.03」は佐藤他の経時関数とf依存のQ値を用いた計算結果である。波形の開始時間は発震時間であり、2つの観測点の計算結果は波形の到達時間がやや遅く、振幅は大きめである。震源に近いYMTH13ではBooreの経時関数が主要動の形状に近いが、遠方のYMTH11では佐藤他の経時関数が観測波の長い継続時間を良く再現している。他の観測点を含め、深部構造の反射波や表層地盤の影響などのより詳細な報告を発表当日に行う予定である。
参考文献
Boore, D.M.: BSSA, V.73, pp.1865–1894, 1983.
Hisada, Y.: J. Seismology, V.12, pp.265–279, 2008.
久田嘉章:日本地震学会秋季大会、2024.
地震本部:全国1次地下構造モデル(暫定版)、2012.
金田淳平ほか:日本地震工学会大会、2024.
佐藤智美:第34回地盤震動シンポジウム、pp23–34,2006.
佐藤智美, 川瀬博, 佐藤俊明:日本建築学会構造系論文集、59巻、461号、p. 19-28、1994.