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[SSS11-20] 地震動スペクトルモデルにおける小規模地震の震源放射の方位依存性
キーワード:異方性震源放射、スペクトルインバージョン解析、地震動モデル
地震ハザードや入力地震動に関わる強震動予測の研究では経験的な地震動モデル(GMM)のばらつき低減(精度向上)が重要な課題である.地震動強さに関する経験的なモデルの研究では,震源特性,波動伝播経路特性,サイト特性の3つの要素の積で表されることが一般的であり,それぞれ等方的な震源放射(①),一様な距離減衰特性(②),等方的な地盤応答特性(③)が仮定されることが多かった[例えば,岩田・入倉(1986),川瀬・松尾(2004)].しかし,これらの仮定は必ずしも成立しない場合も多く,評価精度の低下を招く原因となる惧れがある.
このうち,③の仮定は多くの地点に当てはまるようであり,顕著な不整形地盤の地点を除けば問題になることは少ない.また,②の仮定は実際には成立しないケースが多いものの,近年ではブロックインバージョン[例えば,中村・植竹(2002),友澤他(2019)]や地理的加重回帰[例えば,引田他(2020)]の導入により,波動伝播経路における不均質な減衰構造が考慮されるようになり改善されてきた.これらに対して,①の仮定の誤差は,発震機構によるラディエーションパターン効果や移動震源に起因する指向性が広く知られているわりには大規模地震以外で議論されることは少ない.とはいえ小規模地震でも特に震源特性の評価において問題になる場合[染井他(2020),池田他(2021)]があり,検討を加える必要があるだろう.
本研究では,実際の小規模地震における震源放射の異方性の観察として,観測地点分布の条件が比較的良い2024/08/09の神奈川県西部の地震本震(M5.3)と余震1:08/14(M4.2)と余震2:08/15(M4.3)を取り上げ(Table 1),周囲のK-NET,KiK-netの60地点のデータ(Fig.1, Fig.2)をもとに震源放射の異方性を調べた.
検討にあたっては,同一地点における地震間の観測スペクトル比が震源放射特性の比となることに注目し,地震毎に全方位をL分割して放射方位φl(l=1~L)の相対的な放射強度を観測スペクトル比の回帰分析で求めた.地点kにおける地震iと地震jの観測スペクトルをOBSik(f),OBSjk(f)とすると回帰式は次のとおりである.
lnOBSik(f)-lnOBSjk(f)=lnSi(f)-lnSj(f)+Σdil(f)pl(φik)-Σdjl(f)pl(φjk)
ここに,Si(f)とSj(f)は地震iと地震jの震源スペクトル,dil(f)とdjl(f)はそれぞれ地震i, jの放射方位φlにおける相対的な放射強度を表す係数,φikとφjkは地震i, jの震源から地点kへの観測点方位,pl(φ)は放射方位φlに対する観測点方位φの重みの関数(Fig.3),Σはl=1~Lの総和を意味する.
なお,地震間の比しか扱わないため,このままではlnSi(f)は不定である.ここでは基準地震(i=Eref)を設定してlnSEref(f)=0とすることにより固定した.また,dil(f)についてはlnSi(f)との干渉を避けるために地震毎に全地点にわたるΣdil(f)pl(φik)の総和を0にするとともに,方位毎に全地震にわたるdil(f)の総和を0とする拘束をかけた.
L=8の条件で得られた結果の震源スペクトル比と地震・周波数毎の相対放射強度をFig.4とFig5に示す.Fig.5で相対放射強度が強い方位に注目すると,本震は低周波で西側,高周波で北西と南で強め,余震1は東方向で強めであり,変動幅は1.5倍前後である.これに対して余震2は,東~南東でやや強めになるものの本震や余震1ほどの強い異方性は見られない.
M4~5程度の小規模地震において,わずか3地震の検討でも,このように地震毎,周波数帯域毎に複雑な異方性が観察されたことは,それが珍しくない現象であることを示唆している.Generalized Inversion Technique (GIT)における誤差伝搬を考慮しても,今後さらにGMMのばらつき(評価誤差)を低減させる上で,小規模地震でも震源放射の異方性の考慮が必要になるものと思われる.
【参考文献】引田他(2020)日本地震工学会論文集,池田他(2020)東北地域災害科学研究,岩田・入倉(1986)地震2,川瀬・松尾(2004)日本地震工学会論文集,中村・植竹(2002)地震2,染井他(2021)京都大学防災研究所 研究発表講演会,友澤他(2019)日本建築学会構造系論文集
【謝辞】防災科学技術研究所のK-NET,KiK-netのデータを使用させていただきました.記して感謝します.
このうち,③の仮定は多くの地点に当てはまるようであり,顕著な不整形地盤の地点を除けば問題になることは少ない.また,②の仮定は実際には成立しないケースが多いものの,近年ではブロックインバージョン[例えば,中村・植竹(2002),友澤他(2019)]や地理的加重回帰[例えば,引田他(2020)]の導入により,波動伝播経路における不均質な減衰構造が考慮されるようになり改善されてきた.これらに対して,①の仮定の誤差は,発震機構によるラディエーションパターン効果や移動震源に起因する指向性が広く知られているわりには大規模地震以外で議論されることは少ない.とはいえ小規模地震でも特に震源特性の評価において問題になる場合[染井他(2020),池田他(2021)]があり,検討を加える必要があるだろう.
本研究では,実際の小規模地震における震源放射の異方性の観察として,観測地点分布の条件が比較的良い2024/08/09の神奈川県西部の地震本震(M5.3)と余震1:08/14(M4.2)と余震2:08/15(M4.3)を取り上げ(Table 1),周囲のK-NET,KiK-netの60地点のデータ(Fig.1, Fig.2)をもとに震源放射の異方性を調べた.
検討にあたっては,同一地点における地震間の観測スペクトル比が震源放射特性の比となることに注目し,地震毎に全方位をL分割して放射方位φl(l=1~L)の相対的な放射強度を観測スペクトル比の回帰分析で求めた.地点kにおける地震iと地震jの観測スペクトルをOBSik(f),OBSjk(f)とすると回帰式は次のとおりである.
lnOBSik(f)-lnOBSjk(f)=lnSi(f)-lnSj(f)+Σdil(f)pl(φik)-Σdjl(f)pl(φjk)
ここに,Si(f)とSj(f)は地震iと地震jの震源スペクトル,dil(f)とdjl(f)はそれぞれ地震i, jの放射方位φlにおける相対的な放射強度を表す係数,φikとφjkは地震i, jの震源から地点kへの観測点方位,pl(φ)は放射方位φlに対する観測点方位φの重みの関数(Fig.3),Σはl=1~Lの総和を意味する.
なお,地震間の比しか扱わないため,このままではlnSi(f)は不定である.ここでは基準地震(i=Eref)を設定してlnSEref(f)=0とすることにより固定した.また,dil(f)についてはlnSi(f)との干渉を避けるために地震毎に全地点にわたるΣdil(f)pl(φik)の総和を0にするとともに,方位毎に全地震にわたるdil(f)の総和を0とする拘束をかけた.
L=8の条件で得られた結果の震源スペクトル比と地震・周波数毎の相対放射強度をFig.4とFig5に示す.Fig.5で相対放射強度が強い方位に注目すると,本震は低周波で西側,高周波で北西と南で強め,余震1は東方向で強めであり,変動幅は1.5倍前後である.これに対して余震2は,東~南東でやや強めになるものの本震や余震1ほどの強い異方性は見られない.
M4~5程度の小規模地震において,わずか3地震の検討でも,このように地震毎,周波数帯域毎に複雑な異方性が観察されたことは,それが珍しくない現象であることを示唆している.Generalized Inversion Technique (GIT)における誤差伝搬を考慮しても,今後さらにGMMのばらつき(評価誤差)を低減させる上で,小規模地震でも震源放射の異方性の考慮が必要になるものと思われる.
【参考文献】引田他(2020)日本地震工学会論文集,池田他(2020)東北地域災害科学研究,岩田・入倉(1986)地震2,川瀬・松尾(2004)日本地震工学会論文集,中村・植竹(2002)地震2,染井他(2021)京都大学防災研究所 研究発表講演会,友澤他(2019)日本建築学会構造系論文集
【謝辞】防災科学技術研究所のK-NET,KiK-netのデータを使用させていただきました.記して感謝します.