日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 強震動・地震災害

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、友澤 裕介(鹿島建設)

17:15 〜 19:15

[SSS11-P04] 能登半島におけるラブ波微動アレイ探査法による地下構造の推定

*佐藤 文香1吉田 邦一1長妻 希歩1 (1.福井大学)


キーワード:微動アレイ探査、ラブ波

本研究では,令和6年能登半島地震で大きな揺れを記録した志賀町富来役場において微動アレイ観測を実施し,レイリー波に加えてラブ波の位相速度を算出し,地下構造モデルの推定を精度良く行うことを試みた.従来の微動アレイ探査法では,鉛直動から推定されるレイリー波の位相速度のみを基にS波速度構造を推定しているが,得られるモデルには複数の解が生じ,任意性が大きいという課題がある.そこで,本研究では水平動から求めるラブ波の情報を追加し,拘束条件として活用することで,より合理的な地下構造モデルの構築を試みた.
観測は石川県志賀町富来役場において7台の微動計(白山工業JU410)を使用して,2024年9月13日と11月19日に実施した.アレイ半径4 m (S),30 m (M),150 m (L)の二重正三角形アレイを展開し,サンプリング周波数100 Hzまたは200 Hzで測定した.Lアレイのデータには非定常ノイズが多く含まれていたため,今回はSアレイとMアレイのデータを解析対象とした.
データ処理では,まず観測データを結合し,フィルタ処理を行った上で,パワースペクトルの一致性を確認した.その後,鉛直成分からSPAC法によりレイリー波の位相速度を推定した.ラブ波については,水平成分の回転成分を求め,これに鉛直成分と同様にSPAC法を適用して位相速度を導出した.サンプリング周波数ごとに記録された観測データを2048個に区切り1024個ずらしながら区間分けを行い,20区間を1ブロックとして5ブロックで解析を行った.これらの分散曲線を得た後,周波数ごとに位相速度を平均し,標準偏差を求め,最後に地下構造モデルを推定した.
観測データからは,レイリー波で2.8~20 Hzで230~490 m/sの位相速度,ラブ波では3.1 Hz~5 Hzで300~280 m/sの位相速度,12 Hz~15 Hzで240 m/s前後の位相速度が得られた.レイリー波の最大標準偏差は2.9 Hzで23 m/sであり,ラブ波は3.1 Hzで22 m/sであった.ラブ波の位相速度は,3~6 Hzおよび13~16 Hzの範囲で推定可能であったが,その他の周波数帯では得られなかった.一方,4 Hz以降では標準偏差が小さくなり,安定した位相速度が取得された.
地下構造モデルの推定においては,防災科学技術研究所のJ-SHIS深部地下構造モデルを基に,1層目(Vs=650 m/s)を3層に分割し,各層のパラメータを変動させながら観測データとの一致性を評価した.レイリー波のみを用いて推定した場合には観測データと整合するモデルが複数存在したが,ラブ波の条件を追加することで,適当でないモデルを除外することができた.試行錯誤的に検討した中では,1層目のS波速度を350 m/s,厚さを20 m,2層目のS波速度を350 m/sとした場合,観測データと最も良く整合した.
得られた地下構造モデルの妥当性を評価するために,レイリー波とラブ波の分散曲線の観測位相速度とモデルから計算した理論位相速度の残差二乗和を算出した.ラブ波を追加したことで,モデルの選択肢を狭めることができ,より合理的な地下構造モデルの推定が可能となった.この検討により,最適なS波速度構造の条件は,1層目の厚さが18~36 m,2層目の厚さが1~40 mの範囲にあると予想される.また,ラブ波の拘束条件を加えることで,地下構造推定の精度向上が可能であることが示された.
謝辞:京都大学浅野公之教授,愛知工業大学倉橋奨准教授,GRI 財団染井一寛氏に協力いただきました.測定にあたっては志賀町富来支所にご協力いただきました.本研究は,東京大学地震研究所・京都大学防災研究所,拠点間連携共同研究プログラムの援助をうけました.この場を借りて感謝の意を表します.