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[SSS11-P09] 斜面に設置された鉛直アレー地震観測点における伝達関数の位相特性の再現検討
キーワード:斜面、鉛直アレー地震観測、伝達関数、位相特性
斜面に設置された鉛直アレー地震観測点では,鉛直平面波入射に基づく重複反射理論(以下,一次元解析)により再現できない伝達関数が得られる場合がある。我々は,KiK-net龍山東(以下,SZOH32)を対象に,地形の不陸を考慮した二次元地盤応答解析(以下,二次元解析)に基づいて,観測伝達関数の位相特性に着目した再現検討を行った。SZOH32は,静岡県浜松市龍山町に設置された2測点から成る鉛直アレー地震観測点である。地震計はGLとGL-103 mに設置され,PS検層によるとGL-103 mのS波速度は1600 m/sとされる。観測点の西に約500 m離れた場所に天竜川が分布し,標高は天竜川からSZOH32に向かい200 mほど高くなる。SZOH32の東で発生した7地震を対象に,S波立ち上がり時刻以降20.48秒間の加速度波形を用いてRadial成分の平均伝達関数を算定した。その観測平均伝達関数の振幅特性を黒実線で,位相特性を丸印で図Aに示す。GLとGL-103 mにおける7記録をアンサンブル平均したパワースペクトル比から振幅特性を,クロススペクトルから位相特性を算定した。図Aの青の点線および丸印は,PS検層結果に基づく地盤モデルを用いた一次元解析による理論伝達関数を表す。減衰定数は全周波数について5 %を仮定した。振幅特性は,ピークとトラフの周波数に多少の違いは見られるが,概ね調和的である。一方,位相特性については,GL-103 mにトラフが形成される周波数3~4 Hz付近において観測と理論で逆向きに推移している。観測によるこの周波数帯域の位相特性は,地震波がGL-103 mからGLに向かい伝播するのではなく,GLからGL-103 mに向かい伝播していることを表しており,一次元解析では再現できない。二次元解析に用いた地盤モデルを図Bに示す。地形モデルは,10 mメッシュのDEMデータに,SZOH32周辺で計測した標高データを組み込んで作成した。地中のS波速度とP波速度および層厚は,SZOH32のPS検層結果を引用した。速度境界の分布は,地形モデルに対して平行とした。二次元解析は,図Bの地盤モデルをメッシュ間隔0.5 mの正方形格子で離散化した差分法により行った。P-SV波動場を対象とし,外力として入射角40度のSV波平面波入射を用いた。減衰は,伝達関数の振幅特性を対象とした一次元解析に基づく地盤同定を行い,その結果の約半分の値とした。二次元解析により得られた理論伝達関数を図Aに赤の実線および丸印で重ねた。3~4 Hzの振幅をやや過大評価するが,全体的な振幅特性は概ね再現される。一次元解析では再現できない3~4 Hzの位相も観測と調和的である。なお,SV波平面波の鉛直入射とした二次元解析を行ったところ,観測による3~4 Hzの位相に加えて,各周波数の振幅特性も十分に再現されない結果であった。本検討で対象とした7地震についてSZOH32で得られる観測平均伝達関数を二次元解析で再現するためには,斜め入射の考慮が必要である。GL-103 mの速度波形を図Cに示す。震源時間関数として中心周波数3Hzのリッカー波を用いた。この速度波形の周波数特性を把握するために,マルチプルフィルター解析を行った結果を並べた。時間0.7秒に入射波,0.9秒にGLからの反射波が認められる。これらの時間付近のマルチプルフィルター解析結果を見ると,GL-103 mにトラフが形成される3 Hz周辺の2 Hzおよび4 Hzの振幅は反射波が到達する時間区間でもっとも大きい。この波形の特徴は,入射波よりも大きい振幅を持つ反射波について考察した植竹ほか(2024)に示されるように,地表の標高差により生じた波面の重なり合いが関係していると考えられる。観測伝達関数に見られる3~4 Hzの位相の進みは入射波と反射波の振幅差に起因しており,その様子は斜め入射を考慮した二次元解析で再現できることが分かった。地形の不陸が顕著な鉛直アレー地震観測点では,伝達関数の振幅特性だけでなく位相特性にも着目することが重要である。