日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 強震動・地震災害

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、友澤 裕介(鹿島建設)

17:15 〜 19:15

[SSS11-P19] 地震発生確率と距離減衰式の不確かさが確率論的地震ハザード解析に与える影響

*儘田 豊1、藤田  雅俊1田島 礼子1 (1.原子力規制庁)

キーワード:確率論的地震ハザード解析、不確かさ、地震発生のモデリング、地震動予測式、距離減衰式

確率論的地震ハザード解析(以下「PSHA」という。)では、地震発生確率の推定や地震動の予測をする際に生じる不確かさを適切に考慮し、解析結果への影響を把握することは重要である。地震発生確率に関しては、海外では活断層で発生する地震について大地震と中小規模の地震を一体化したモデルを採用している事例があるが、国内の地震を対象に計算した事例は少ない。また、距離減衰式による地震動の予測値に関しては、近年、広域の複数の地震観測点、震源及び伝播経路を含むデータセットを使用して作成された既往の距離減衰式の中央値及び標準偏差を、特定の単一地点の地震動に適合させる補正方法が提案されている。そこで本研究では、地震発生確率のモデルと距離減衰式の予測値に含まれる不確かさがPSHAに与える影響を把握するために、以下の2つの研究を行った。

1.地震発生確率モデルに含まれる不確かさがPSHAに与える影響
糸魚川-静岡構造線断層帯北部を対象にPSHAを実施し、地震規模と発生確率に係る不確かさの影響分析を行った。地震規模と発生確率のモデルは、地震調査研究推進本部による確率論的地震動予測地図の作成に採用されているモデル1(以下「推本モデル」という。)と米国等で採用されているモデル2(以下「YC85モデル」という。)を用いた。推本モデルは断層面で発生する大地震(固有地震)の地震規模と発生確率が一義にモデル化される。一方YC85モデルは断層面で発生する大地震の地震規模の不確かさに加えて中小地震の地震規模も考慮される。推本モデルとYC85モデルのPSHAの解析結果に与える影響の差異を分析するため、地震動の予測値は距離減衰式3を用いて断層周辺の複数の断層最短距離で計算した。また、活断層のような特定震源だけでなく、確率論的地震動予測地図で適用される領域震源も断層周辺5kmまでを対象にモデル化し、当該モデルがPSHAの解析結果に与える影響を分析した。
その結果、最大加速度、応答スペクトル及び断層最短距離に関わらず共通の特徴が見られた。すなわち、推本モデルとYC85モデルの特定震源によるPSHAの比較では、年超過確率の高確率側では後者の最大加速度等が大きくなり、中小地震を考慮した影響が現れているが低確率側では両者は同等であった。推本モデルとYC85モデルに対して領域震源も考慮した場合には、年超過確率に対する最大加速度等については両者に顕著な差は見られないことが分かった。

2.距離減衰式の予測値に含まれる不確かさがPSHAに与える影響
まず、地震動の観測値と距離減衰式による地震動の予測値の残差から、サイト毎の地盤特性(αS)及びイベント毎の震源特性(βe)を推定し、αSを用いて既往の距離減衰式(中央値)を特定の単一地点に適合するように補正した。また、地震動の観測値と補正後の距離減衰式による地震動の予測値の残差から、単一観測点における標準偏差(σSS,s)を推定した。地震動の観測値としてKiK-netの地中観測点(Vs 400~3300 m/sの硬質地盤)の記録に対して地中地震計以浅の地層の影響を解析的に除去した露頭波を使用した。補正対象とする距離減衰式は既往の2式を選定した。αSを用いて既往の距離減衰式を補正した結果、地震動の予測の中央値は観測値に近づき標準偏差は小さくなるが、補正対象とする距離減衰式によって結果に差異が生じること、補正により中央値に加え標準偏差も大きくなる場合もあること等が分かった。
次に、地中地震計位置のVs値が異なる3地点を対象に、上記の補正前後の距離減衰式のうち1式を用いたPSHAを行い、年超過確率10-6~10-4のハザードレベルを比較した。解析条件として、断層最短距離10 kmの位置にMw6.5の仮想断層を置き、5000年の平均活動間隔を設定した。解析の結果、補正後の距離減衰式を用いた場合には、地震動の予測の標準偏差が小さくなった影響によりハザードレベルも顕著に小さくなる傾向が見られた。しかし、中央値の補正により地震動の予測値が大きくなることもあり、ハザードレベルが小さくならない場合も見られた。したがって、PSHAで用いる距離減衰式については、その地震動の予測値に含まれる不確かさを適切に考慮するため、複数の距離減衰式の利用及び標準偏差のみならず中央値の補正が重要である。

文献
1 HERP, https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/
2 Youngs & Coppersmith, Bull. Seism. Soc. Amer. ,75, 939-964.
3 Morikawa & Fujiwara, J. Disas. Res., 8, 878-888.