日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 強震動・地震災害

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、友澤 裕介(鹿島建設)

17:15 〜 19:15

[SSS11-P22] 修正Haskellモデルによる加速度震源スペクトルの高周波数側の形状の関する一考察

*小林 剣大1盛川 仁1 (1.東京科学大学)


キーワード:修正Haskellモデル、加速度震源スペクトル、コーナー周波数、fmax

Haskell (1964) によって提案された震源モデル(Haskellモデル)は,矩形断層においてユニラテラルに破壊が伝播し,断層上の各点でのすべり速度関数はboxcar関数で一様であるとされた単純なモデルであり,現代にいたるまで震源の理論の基礎を支えてきた.Geller (1976) はHaskellモデルが規定する遠地S波項の変位震源スペクトルについて検討しており,断層長さ,断層幅,ライズタイムそれぞれについてのコーナー周波数fcL,fcW,fcrによってその形状が特徴づけられ,全体としてはomega-cubuモデルに従うことを示した.観測される地震動の震源スペクトルは大局的にはAki (1967) のomega-squareモデルに従うことが経験的にわかっているため,この観測事実に反しているHaskellモデルは震源の物理を正しく記述できていないモデルであると現代の強震動の研究者には考えられている.
しかし,以上の議論はすべりの時空間分布をあまりに単純化しすぎた仮定のもとで行われているため,物理的に誤った議論をしている可能性がある.Day (1982) などの動力学的検討から,(1)すべりのライズタイムは断層面上で一様ではないこと,(2)すべり速度関数はboxcar関数のような形状ではなく,すべりはじめてすぐにピークをむかえそのあと緩やかに0に収束していくようなpulsiveな形状を示すこと,がわかっている.(1)については,野津 (2004) などで指摘されているように,断層面上のライズタイムの不均質性を考慮することはfcrが高周波数側に遷移することに対応すると予想される.(2)については,fcrが高周波数側に遷移するだけでなく,加速度震源スペクトルのfcrより高周波数側での落ち込みの傾きが両対数軸上で-1よりも急になることが予想される.以上の仮説を検証するため,本研究ではより現実的なすべりの時空間分布を与えてHaskellモデルを再度定式化しなおし,その加速度震源スペクトルの形状について検討した.
本研究では一例として次のような条件の下で加速度震源スペクトルを理論的に試算した.断層長さは5.0 [km],断層幅は3.0 [km],震源域のS波速度は3.5 [km/s],破壊伝播速度は3.0 [km/s],断層面の法線ベクトルと観測点へのベクトルのなす角は45度,断層長さ方向のベクトルと観測点へのベクトルがなす角は90度とした.(1)については,ライズタイムの式をDay (1982) の理論的な式ではなく,片岡ほか (2003) の式を用いた.(2)については動力学的な特性を反映したすべり速度関数であるTinti et al. (2005) のRegularized Yoffe関数を用いた.得られた加速度震源スペクトルを図に示す.低周波数側からfcL,fcWが現れ,fcWからfcrまではフラットとなる.すなわち,fcrより低周波数側では,2つのコーナー周波数をもつomega-squareモデルだといえる.fcrより高周波数側では,両対数軸上で-2.5の傾きで大きく減衰しており,fcrはHanks (1982) によって指摘されたfmaxのようにみえる.
観測されるfmaxについては,Anderson and Hough (1984) が伝播経路の寄与であると主張し,以来多くの研究においてこの考え方が支持されてきた.一方で,Papageorgiou and Aki (1983) やGusev (1983) のように震源にその起源があると主張する研究も少ないながら存在する.Gusev and Guseva (2016) はsite-controlled fmaxの存在を認めつつも,観測記録の加速度フーリエスペクトルから伝播経路の寄与を除いた加速度震源スペクトルには3つのコーナー周波数が存在しており,そのうち最も高周波数側に現れるものがsource-controlled fmaxであると主張しているが,本研究で得られた加速度震源スペクトルはこのような特徴とよく整合している.
本研究では,Haskellモデルのすべり速度関数を修正することで,より現実的な加速度震源スペクトルの形状についての理論的な検討を行った.得られた理論的な加速度震源スペクトルの形状は,既往研究に示された観測記録の加速度震源スペクトルの形状と調和的である.このことより,本考察はsource-controlled fmaxが存在するという主張を解析的に支持するものと位置づけられると考えられる.