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[SSS11-P25] 地震発生層以浅のための摩擦構成則:深さ依存性のある応力場への適用
キーワード:表層、摩擦構成則、深さ依存応力場、特性化震源モデル
従来の地震動予測(入倉・三宅,2011)では,地震発生層以浅(表層)のすべりは,強震動に対する寄与は小さいとして,モデル化の対象とされてこなかった.しかし最近では,2016年熊本地震の本震で観測された,断層近傍の長周期地震動や永久変位を説明するためには,従来の強震動生成域に加えて,地表近傍にライズタイムの長い長周期地震動生成域を設定する必要があることが指摘されている(例えば,松元ほか,2016;入倉ほか,2019).Kaneko and Goto (2022) は,この長周期地震動生成域の物理的起源が,低速度層境界からの反射波で増幅された,伝播する破壊と地表面の動的相互作用であることを示唆し,短いDcのすべり弱化摩擦則や,断層面外の塑性変形を伴わないすべり速度弱化摩擦則では断層近傍の長周期地震動を説明できないことを指摘した.
一方,岩石実験では,中間速度域(約0.05〜0.20 m/s)において,すべり速度の増加とともに摩擦係数が増加することが示されている(例えば,Tsutsumi and Shimamoto, 1997; Reches et al., 2010).岩石実験(Ohnaka and Kuwahara, 1990)や地震波形インバージョン結果の再構築(Ide and Takeo, 1997)によるすべり速度と応力の履歴でも,すべり始めにはすべり速度強化が観測され,その後にすべり速度弱化に転じている.加瀬ほか(2018, 2019)では,すべり弱化則に加えて,あるすべり速度以下ですべり速度強化となる摩擦構成則を提案し,小さいすべり速度で大きなすべりを生じさせる破壊過程を得られることを示した.それを受けて,本稿では,すべり弱化・すべり速度強化の摩擦構成則を,深さ依存性のある応力場を考慮した特性化震源モデルに適用することを試みる.
厚さ2 kmの表層5層と地震発生層から成る媒質中に,幅18 kmの鉛直な左横ずれ断層を想定する.断層の長さに応じて,1個もしくは複数のアスペリティを置き,アスペリティの面積は断層面積の15.6%,アスペリティ上端の深さは2 kmとする.深さに比例する主応力場を想定し,表層と背景領域の応力降下量は0 MPa,アスペリティの応力降下量は深さに比例して増加するとする.摩擦構成則は,地震発生層内(アスペリティと背景領域)はすべり弱化,表層内はすべり弱化・すべり速度強化を仮定する.摩擦構成則のパラメータを変えて,アスペリティに置いた破壊開始領域から始まる自発的破壊を計算し,表層内のすべり速度時間関数や断層近傍の波形がどのように変化するのかを調べる.
表層にすべり弱化・すべり速度強化の摩擦構成則を適用することで,すべり弱化のみの場合に比べて,表層内のすべり速度時間関数,および,断層極近傍(約1 km以内)での地動速度波形の長周期化が確認された.すべり速度強化による摩擦係数の増加分(δ)が大きいほど,また,すべり速度強化となるすべり速度の閾値(Vc)が小さいほど,すべり速度は抑制される.1995年兵庫県南部地震の波形インバージョン結果の摩擦構成関係(Ide and Takeo, 1997; Guatteri et al.,2001)では,δは0.02程度,Vcは0.1〜0.2 m/s程度と推測されるが,その値の範囲では,Vcの値の影響は小さい.すべり弱化・すべり速度強化の摩擦構成則により,地表の最大すべり量はすべり弱化のみの摩擦構成則の場合の90〜95%程度に抑制されるが,地震モーメントは97〜98%程度となり,スケーリング則はすべり弱化のみの摩擦構成則の場合とほぼ同程度に満たすことができる.
一方,岩石実験では,中間速度域(約0.05〜0.20 m/s)において,すべり速度の増加とともに摩擦係数が増加することが示されている(例えば,Tsutsumi and Shimamoto, 1997; Reches et al., 2010).岩石実験(Ohnaka and Kuwahara, 1990)や地震波形インバージョン結果の再構築(Ide and Takeo, 1997)によるすべり速度と応力の履歴でも,すべり始めにはすべり速度強化が観測され,その後にすべり速度弱化に転じている.加瀬ほか(2018, 2019)では,すべり弱化則に加えて,あるすべり速度以下ですべり速度強化となる摩擦構成則を提案し,小さいすべり速度で大きなすべりを生じさせる破壊過程を得られることを示した.それを受けて,本稿では,すべり弱化・すべり速度強化の摩擦構成則を,深さ依存性のある応力場を考慮した特性化震源モデルに適用することを試みる.
厚さ2 kmの表層5層と地震発生層から成る媒質中に,幅18 kmの鉛直な左横ずれ断層を想定する.断層の長さに応じて,1個もしくは複数のアスペリティを置き,アスペリティの面積は断層面積の15.6%,アスペリティ上端の深さは2 kmとする.深さに比例する主応力場を想定し,表層と背景領域の応力降下量は0 MPa,アスペリティの応力降下量は深さに比例して増加するとする.摩擦構成則は,地震発生層内(アスペリティと背景領域)はすべり弱化,表層内はすべり弱化・すべり速度強化を仮定する.摩擦構成則のパラメータを変えて,アスペリティに置いた破壊開始領域から始まる自発的破壊を計算し,表層内のすべり速度時間関数や断層近傍の波形がどのように変化するのかを調べる.
表層にすべり弱化・すべり速度強化の摩擦構成則を適用することで,すべり弱化のみの場合に比べて,表層内のすべり速度時間関数,および,断層極近傍(約1 km以内)での地動速度波形の長周期化が確認された.すべり速度強化による摩擦係数の増加分(δ)が大きいほど,また,すべり速度強化となるすべり速度の閾値(Vc)が小さいほど,すべり速度は抑制される.1995年兵庫県南部地震の波形インバージョン結果の摩擦構成関係(Ide and Takeo, 1997; Guatteri et al.,2001)では,δは0.02程度,Vcは0.1〜0.2 m/s程度と推測されるが,その値の範囲では,Vcの値の影響は小さい.すべり弱化・すべり速度強化の摩擦構成則により,地表の最大すべり量はすべり弱化のみの摩擦構成則の場合の90〜95%程度に抑制されるが,地震モーメントは97〜98%程度となり,スケーリング則はすべり弱化のみの摩擦構成則の場合とほぼ同程度に満たすことができる.