日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 地震活動とその物理

2025年5月28日(水) 13:45 〜 15:15 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:千葉 慶太(公益財団法人 地震予知総合研究振興会)、吉光 奈奈(京都大学)、座長:熊澤 貴雄(統計数理研究所)、勝俣 啓(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

14:00 〜 14:15

[SSS12-02] 2016年熊本地震発生前の地震活動のNatural time解析

*勝俣 啓1 (1.北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

キーワード:地震活動、Natural time解析、熊本地震

1.はじめに
Natural time解析は,地震の発生間隔は一定と仮定し,地震の発生する順番に着目した手法でVarotsos et al. (2011) によって提案された.彼らはN個の連続発生する地震のk番目の地震に対して,χk = k / Nを定義し,χkをNatural timeと呼んだ.そして,地震の規格化エネルギーをNatural timeで重み付けしたκ1という変数を定義し,震源域が臨界状態かどうかを示す指標であると考え,κ1の時間変化を計算した.いくつかの大地震を解析した結果,κ1 = 0.070 に近づくと数日から1週間で本震が発生すると主張している.さらにSarlis et al. (2013)はκ1の平均値μと標準偏差σの比,変動係数β=σ/μを用いると,日本付近で発生したM7.6以上の地震の直前にβ値が最小になると主張している.
勝俣(2024,日本地震学会秋季大会,S22-04)は,Sarlis et al. (2013)の手法を2024年能登半島地震(M7.6)発生前の地震活動(2021年1月1日から2023年12月31日まで)に適用し,β値が本震の約3日前の2023年12月29日に最小値β=0.454となることを示した.この結果は一見Sarlis et al. (2013)と調和的に見えるが,勝俣(2024)はこの最小値は本震の約半年前に発生したM6.5の地震とそれに続く余震の影響による見かけの変化であると主張した.β値はMが大きい地震が発生すると大きくなり,Mが小さい地震が続くと小さくなる傾向があるので,見かけの変化である可能性は否定できない.そこで本研究ではSarlis et al. (2013) の手法を2016年熊本地震 (M7.3) 発生前の地震活動に適用し,彼らが主張するような現象が見られるか検証した.熊本地震は4月14日にM6.5,16日にM7.3の地震が発生したが,14日M6.5以前はM5.0以上の地震は2002年以降発生していない.そのため見かけ上β値が最小になる可能性は低いはずである.

2.データと解析
研究領域は,32.2°-34.4°N,130.5°-131.5°Eの熊本地震の震源域とその周囲である.2002年1月1日から2016年4月14日のM6.5直前までに研究領域で発生したM1.3以上,深さ25 km以浅の6109個の地震を気象庁一元化震源カタログから選択した.余震や群発地震を取り除くためのデクラスタリング処理はしていない.解析手法はSarlis et al. (2013)に従ってβ値の時間変化を計算した.

3.結果
 W=300の場合,2013年10月20日にβ値が最小値0.300を示した.熊本地震が発生する約2.5年前である.この結果は「β値が最小後数日から1週間以内に本震が発生する」というSarlis et al. (2013)の主張とは異なる.ただし,2013年以前はβ値が0.4から1.1の間を大きく変動していたが,2013年以降本震までは0.3から0.6までの間を変動していて,変動幅が小さくなったように見えるのは興味深い.M3.0以上の大粒の地震が2013年以降減少したことが原因のようだ.

Sarlis et al. (2013) Minimum of the order parameter fluctuations of seismicity before major earthquakes in Japan, PNAS 110(34), 13734-13738.