日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 地震活動とその物理

2025年5月28日(水) 13:45 〜 15:15 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:千葉 慶太(公益財団法人 地震予知総合研究振興会)、吉光 奈奈(京都大学)、座長:熊澤 貴雄(統計数理研究所)、勝俣 啓(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

14:15 〜 14:30

[SSS12-03] 1923年関東地震に先行する地震活動静穏化の検証

*吉川 澄夫浜田 信生

キーワード:地震活動静穏化、関東地震、宇津カタログ

1923年9月1日の関東地震は神奈川県西部とその周辺直下の断層を震源として発生したM7.9の巨大地震である.この地震の前兆的な地震活動に関しては,約30年間の比較的広域の活動と震源付近の低レベルの活動によって形成されたドーナツパターン(茂木,1980)や,直前約5年前からの広域の地震活動レベルの低下(Ohnaka,1984/85;Ogata,1992)が報告されている.これらの調査には,宇津が改めて観測記録を収集し再計算を行なった震源カタログが使用された(宇津,1979, 1981, 1982).一方,浜田・津村(2023)は,このような震源カタログに依らず,関東地域とその周辺の有感地震回数の記録に基づいて,本震の約3年前から少なくとも5か所の観測地点において地震活動の低下が生じていた可能性を示した.彼らの結果は,地震活動の静穏化が検出手段に依らずに観測される普遍的現象であると共に空間的に偏在していた可能性を示す.そこで本報告では,関東地震に先行する静穏化域の出現状況の詳細を宇津カタログに基づいて検証する.
静穏化域の検出はeMAPの方法(吉川・他,2021)による.処理は,まず期間全体で発生した個々の震源を中心とし,それぞれ一定距離R内にあるイベントを基準期間と評価期間に分けて計数する.次に評価期間の発生数を基準期間の平均発生率を基準とするポアソン確率(累積値)に変換し地図上に表示する.確率は震源毎に得られ,50%より多ければ活発化域,少なければ静穏化域とする.宇津カタログでは,関東・中部地方で1904年以降の浅い有感地震であればM5.5以上で一定の精度が保証される(宇津,1981)ため,解析範囲を深さ100km以下,北緯33度〜38度,東経138度〜143度に限定した.同カタログでは震央位置の精度(誤差)に応じてA〜D(1度以内)と無印(1度以上)にランク付けされているが,本調査ではランクA〜Dの震源を用いた.さらに以上の震源に対してGutenberg-Richter則を満たす地震の下限をM5.8とした.
第1図に結果の1例(M≧5.8,R=80km)を示す.この結果は浜田・津村(2023)が静穏化の可能性を示した筑波山,水戸,東京,横浜などの観測地点が静穏化域に含まれる一方で,静穏化が報告されていない熊谷,甲府,沼津などは含まれず,総合的に調和する.領域別の地震活動の時間変化を示すのが第2図である.1918年頃からの地震活動活発化と静穏化がそれぞれ確認できる.