日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 地震活動とその物理

2025年5月28日(水) 15:30 〜 17:00 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:千葉 慶太(公益財団法人 地震予知総合研究振興会)、吉光 奈奈(京都大学)、座長:小菅 正裕(弘前大学理工学研究科)、悪原 岳(東京大学地震研究所)

15:30 〜 15:45

[SSS12-07] 2024年能登半島地震の広域余震活動と周辺活断層への長期的影響

*遠田 晋次1 (1.東北大学災害科学国際研究所)

キーワード:能登半島地震、活断層、クーロン応力変化、地震活動度変化

2024年能登半島地震(M7.6)では,能登半島北岸沖から佐渡西沖へ延びる既知の海底活断層(井上・岡村,2010)の約150km区間が連動した.震源断層は,国土交通省(2014)のF-43, F-42断層に相当する部分に加え,南西は2007年能登半島地震(M6.9)震源域を超えて海士岬南端まで延びた.その後,震源断層沿いだけではなく広範囲で活発な余震活動が認められ,2024年11月26日には輪島市と志賀町で震度5弱を観測する地震(M6.6)も石川県西方沖で発生した.既往の研究により報告されているように,これらの広範な余震活動は,本震による応力伝播の影響と考えられる.本研究では,地震時応力変化にどのように地震活動がどう応答したのか,特に主要活断層沿いで大地震への震源核形成を促す活動が認められるのか,本震直後には検出できなかった活動低下域(stress shadow)も生じたのかなど,本震後1年間の応力―地震応答解析の結果を報告する.
 まず,能登半島地震による静的クーロン応力変化(Coulomb Failure Stress Change,ΔCFF)を計算した.ここでは遠田(2024)の震源断層モデルを用いた(図1).現時点で既に多数の震源および測地インバージョンによる断層モデルが提案されているが,震源断層南西付近の位置形状が近傍活断層の応力変化に影響するため,全体として珠洲から輪島西沖までは東北東走向,それより西側では海岸線に沿って「く」の字状に曲がり海士岬付近まで連続する震源断層を採用した(図1).影響を受ける断層(レシーバ断層)は,地震本部(2024)の海域活断層と周辺の陸域活断層(地震本部の主要活断層の評価結果)を考慮した.
計算結果を図1aに示す.各断層上のΔCFFは約5kmx約5kmのサブパッチに分割した中心位置での値である(図1a).みかけの摩擦係数(μ’)は0.4.眉丈山断層帯,海士岬断層帯,羽咋沖西断層,羽咋沖東断層,邑知潟断層帯北部には最大1bar(0.1MPa)を超える応力増加となる.2024年11月26日のM6.6地震は羽咋沖西断層上で発生しており,顕著なΔCFFと整合する.森本富樫断層帯,砺波平野断層帯,呉羽山断層帯も地震活動に影響があるとされる0.1bar(例えば,Stein, 1999)を上回る.富山湾周辺の逆断層帯は概ね負のΔCFFとなる.
次に,本震後1年間の地震活動応答を調べるため,本震前2年間と比較して,地震活動度変化をマッピングした(図1b). マッピングには,気象庁一元化震源(暫定)の全ての検知Mを使用し,0.05°グリッド上で半径10kmの移動シリンダーを用いて発生率変化を計算した.その結果,震源断層から100km弱の範囲に活動度の変化が認められた.羽咋沖断層とそのごく近傍ではオフフォルト余震活動が顕著に増加し,11月26日M6.6地震につながっている.時系列をみると,邑知潟断層付近でも能登半島地震によって発生率が増加し,継続的に高い状態が1年以上続いている.森本富樫断層帯も能登半島地震後に通常よりもやや活発化している.跡津川断層帯にも増加が見られる.富山湾南東部(M4.7周辺)では本震後一時期活発化したがレートは本震前に戻りつつある.なお,同地域では逆断層全般に対してΔCFFは負であるが,2024年7月11日のM4.7地震は横ずれ断層解(防災科研,2024)とされ,両節面でΔCFFは正となる(図1b).おそらく富山湾周辺での本震後の地震活動は横ずれ断層系が主体と思われる.震源断層から70−100km離れた名立断層−高田平野西縁断層帯周辺には変化は認められない.既往研究で指摘されている地震活動に影響が生じるΔCFF0.1bar(10kPa)は能登半島地震の場合にも当てはまる.なお,顕著にΔCFFが増加,地震活動が活発化した邑知潟断層帯直下では,断層を横切る北西―南東の震源断面をみると,南東に45°程度で傾斜する断層面を示唆するような震源クラスターが確認される.このように,活断層上で1年以上地震発生率が上昇・高止まりしている状況に防災上何らかの考慮が必要と考えられる.

文献: 防災科学技術研究所(2024)F-net 地震のメカニズム解情報;国土交通省(2014)日本海における大規模地震に関する調査検討会報告書;井上卓彦・岡村行信(2010)能登半島北部周辺20万分の1海域地質図及び説明書;地震本部(2024)日本海側の海域活断層の長期評価;令和6年8月版;Stein (1999) Nature, 402, 605−609;遠田晋次(2024)地震予知連絡会会報,112,706-709.