日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 地震活動とその物理

2025年5月28日(水) 15:30 〜 17:00 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:千葉 慶太(公益財団法人 地震予知総合研究振興会)、吉光 奈奈(京都大学)、座長:小菅 正裕(弘前大学理工学研究科)、悪原 岳(東京大学地震研究所)

16:15 〜 16:30

[SSS12-10] 平成5年北海道南西沖地震と令和6年能登半島地震の震源過程の階層クラスタリング

*原嶋 幸生1八木 勇治1奥脇 亮1 (1.筑波大学)

日本海沿岸域では逆断層型の地震活動が活発である。これらの地震は、日本海形成期の発達した正断層と、圧縮場で新たに形成された逆断層で発生していると考えられている。この地域で発生する大地震では、複数の新旧断層の連動破壊が発生する可能性があり、断層形状の変化や破壊伝播の複雑さを表現できる震源過程モデルを用いて解析することが望ましい。しかし、高自由度の震源過程モデルから断層の連動破壊の情報を客観的に推定する方法はまだ確立されていない。
本研究は、令和6年能登半島地震と平成5年(1993年)北海道南西沖地震の震源過程を対象に、高自由度な震源過程解析手法であるポテンシー密度テンソルインバージョン(PDTI)法を適用した上で、断層連動の情報を抽出するために、階層クラスタリングを実施し断層破壊の特徴の抽出を試みる。
PDTI法は地震波形インバージョンの一手法であり、要素震源を断層すべりの5つの基底ダブルカップル成分の重ね合わせとして表現する。この手法は、断層すべりの方向をモデル面に拘束しないため、断層形状と滑り方向の情報を含む高自由度な震源過程モデルを構築できる。得られた高自由度な震源過程モデルに階層クラスタリングを適用し、震源領域内でのポテンシレート密度分布から断層形状の時空間的な階層構造の分類を試みる。階層クラスタリングは、各データを独立したクラスターとみなし、類似性に基づいて段階的に上位のクラスターに統合する手法である。本研究では、類似度の指標としてコサイン類似度を用い、節面に垂直なベクトルであるnベクトルもしくはすべり方向のvベクトル成分を標準化したものを入力データとした。クラスター分割にはウォード法を採用し、データのばらつきを最小化する基準でクラスターを統合した。
令和6年能登半島地震について、遠地実体波P波を用いたPDTIモデルにクラスタリングを適用した。その結果、破壊開始後10秒までクラスターは見られないが、10秒から23秒にかけて、珠洲-輪島沿岸に長径約70 kmに及ぶ北東-南西に細長いクラスターが形成された。このクラスターのP軸の方位角は295°であった。23秒から35秒の間に、破壊起点から約30 km南西の猿山から輪島沿岸に向かって長径約50 kmに拡大するクラスターが発生した。クラスターのP軸の方位角は286°であり、先行する珠洲-輪島クラスターより反時計回りに回転している。このクラスターの南側(内陸部)では、25秒から35秒にかけてP軸の方位角がほぼ同じで走向が10°反時計回りに回転しているクラスターも同定された。破壊起点の約30km北東に位置する珠洲沖では、26秒から32秒にかけてP軸の方位角が235°のクラスターが発生した。35秒以降、支配的なクラスターは存在しなかった。これらの結果は、クラスター解析により、先行研究で指摘されている断層セグメントの特徴を客観的に抽出することができることを示している。
平成5年北海道南西沖地震について、新たにPDTI解析を行いクラスタリングを適用した。破壊開始から10秒間は、走向153°の逆断層型のクラスターが震央を中心として長径20 kmほどの領域に分布する。5秒から10秒にかけて、震央から約10 km南東を中心として横ずれ成分を持つクラスターが分布し、その分布が10秒以降には震央から約15 km北東を中心として、走向200°の逆断層型のクラスターに変化した。このクラスターは、25秒から43秒にかけて震央から約60 km南東の奥尻島西沖まで遷移した。43秒以降、支配的なクラスターは存在しなかった。