16:30 〜 16:45
[SSS12-11] 震源クラスタリングに基づく和歌山群発地震の詳細解析

キーワード:震源クラスタリング、流体、和歌山群発地震、時空間発展
はじめに
群発地震は、最大地震(本震)が地震活動の初期に発生せず、改良大森公式に従わない地震活動が特定地域で発生する現象である。定常的な群発地震活動は紀伊半島西部や足尾周辺で発生しているが、その駆動メカニズムは十分に解明されておらず、群発地震への理解を深めるうえで重要な未解決問題である。
紀伊半島西部の和歌山周辺では、地殻浅部で定常的な群発地震活動(和歌山群発地震)がみられる。これまでの研究から、フィリピン海スラブに起源を持つ流体が地殻に供給されて間隙流体圧が上昇し、付加体でできた古くもろい地層が複雑な応力場のもとで破壊されることが群発地震の発生要因と考えられている(e.g., Maeda et al., 2018, 2021; Nakajima, 2023)。しかし、先行研究で詳細な解析が行われていないため、和歌山群発地震活動の具体的な時空間的特徴は、十分に明らかにされていない。そこで本研究は、震源クラスタリングを用いた各震源クラスタにおける地震活動の詳細な時空間的特徴の解明を目的とした。
データ・手法
まず、解析対象領域(東経135.05~135.30度、北緯34.05~34.30度、深さ20km以内)において2005年から2023年に発生したマグニチュード1.0以上の8,157地震に対しDouble-Difference法 (Waldhauser & Ellsworth, 2000) による震源再決定を行った。続いて、再決定震源に対し密度ベース非階層クラスタリング手法の一つであるDBSCAN (Ester et al., 1996) を用いた震源クラスタリングを実施した。その後、各震源クラスタに対して、震源分布の特徴把握、b値の推定、宇津(1969)の方法に基づく地震発生間隔分布の検討を行った。
結果
震源クラスタリングでは再決定震源6,754個のうち3,857個が28個の震源クラスタに分類され、残り2,897個はどのクラスタにも属さないノイズ点となった。クラスタごとに震源分布を詳細に観察し、複数の面状構造に沿って震源が分布していることが確認された。多くの面状構造は北東–南西走向で西に約30度傾斜しているが、解析領域中央部のクラスタでは北西–南東走向で東に約30度傾斜する面状構造が見られるなど、震源分布がなす複雑な面状構造が明らかになった。
解析領域全体の地震活動のb値は1.08であるが、クラスタごとの地震活動についてb値を推定した結果0.52~1.92と多様な値を取ることが判明した。また、解析対象領域の南西部においてb値が比較的高い傾向があり、b値が低めのクラスタにおいてはマグニチュード4程度の中規模地震を伴う地震活動が散発的に発生していることが明らかとなった。
解析対象領域全体の地震発生間隔分布は、発生間隔が1~10日付近に屈曲点を持ち、地震発生レートは屈曲点より発生間隔が小さい側でほぼ一定、大きい側で急減する定常的な地震活動の特徴を示した。一方、クラスタごとの地震発生間隔分布は多様であり、特にb値が低く中規模地震を伴う震源クラスタでは発生間隔全体に対して地震発生レートが漸減する散発的な地震活動の特徴が見られた。
議論
再決定震源分布の詳細観察から同定された複数の面状構造は断層面に対応していると考えられる。その走向・傾斜は震源クラスタ間で多様であり、これは群発地震活動域における複雑な応力場を反映するものと考えられる。
これまでの研究では、地震波速度トモグラフィーにより本研究領域直下には低速度域が推定され(Nakajima, 2023)、本研究領域の東部では年間約10 mmの隆起が観測されている(Yoshida et al., 2011)。以上から、和歌山群発地震は深部から供給される流体によって引き起こされていると考えられているが、本研究で明らかになった局所的な地震活動の違いを流体の供給だけで単純に説明することはできない。定常的な地震活動がみられる震源クラスタと散発的な地震活動がみられる震源クラスタが約25 km四方の領域に共存するという観測事実から、地殻構成物質の局所的な力学的・水理学的特性の違いが地震活動の多様性に反映されていると考えられる。
本研究により、これまで漠然と時空間的に定常的な地震活動とみなされてきた和歌山群発地震が特性の異なる複数の震源クラスタによって構成されていることが明らかになった。これは、和歌山群発地震ひいては定常的な群発地震活動の発生・駆動メカニズムの理解につながる重要な知見といえる。
謝辞
本研究では、気象庁一元化震源ならびに検測値、気象庁・防災科学技術研究所Hi-net・産業技術総合研究所・京都大学・東京大学の設置した観測点で得られた観測波形記録を使用しました。
群発地震は、最大地震(本震)が地震活動の初期に発生せず、改良大森公式に従わない地震活動が特定地域で発生する現象である。定常的な群発地震活動は紀伊半島西部や足尾周辺で発生しているが、その駆動メカニズムは十分に解明されておらず、群発地震への理解を深めるうえで重要な未解決問題である。
紀伊半島西部の和歌山周辺では、地殻浅部で定常的な群発地震活動(和歌山群発地震)がみられる。これまでの研究から、フィリピン海スラブに起源を持つ流体が地殻に供給されて間隙流体圧が上昇し、付加体でできた古くもろい地層が複雑な応力場のもとで破壊されることが群発地震の発生要因と考えられている(e.g., Maeda et al., 2018, 2021; Nakajima, 2023)。しかし、先行研究で詳細な解析が行われていないため、和歌山群発地震活動の具体的な時空間的特徴は、十分に明らかにされていない。そこで本研究は、震源クラスタリングを用いた各震源クラスタにおける地震活動の詳細な時空間的特徴の解明を目的とした。
データ・手法
まず、解析対象領域(東経135.05~135.30度、北緯34.05~34.30度、深さ20km以内)において2005年から2023年に発生したマグニチュード1.0以上の8,157地震に対しDouble-Difference法 (Waldhauser & Ellsworth, 2000) による震源再決定を行った。続いて、再決定震源に対し密度ベース非階層クラスタリング手法の一つであるDBSCAN (Ester et al., 1996) を用いた震源クラスタリングを実施した。その後、各震源クラスタに対して、震源分布の特徴把握、b値の推定、宇津(1969)の方法に基づく地震発生間隔分布の検討を行った。
結果
震源クラスタリングでは再決定震源6,754個のうち3,857個が28個の震源クラスタに分類され、残り2,897個はどのクラスタにも属さないノイズ点となった。クラスタごとに震源分布を詳細に観察し、複数の面状構造に沿って震源が分布していることが確認された。多くの面状構造は北東–南西走向で西に約30度傾斜しているが、解析領域中央部のクラスタでは北西–南東走向で東に約30度傾斜する面状構造が見られるなど、震源分布がなす複雑な面状構造が明らかになった。
解析領域全体の地震活動のb値は1.08であるが、クラスタごとの地震活動についてb値を推定した結果0.52~1.92と多様な値を取ることが判明した。また、解析対象領域の南西部においてb値が比較的高い傾向があり、b値が低めのクラスタにおいてはマグニチュード4程度の中規模地震を伴う地震活動が散発的に発生していることが明らかとなった。
解析対象領域全体の地震発生間隔分布は、発生間隔が1~10日付近に屈曲点を持ち、地震発生レートは屈曲点より発生間隔が小さい側でほぼ一定、大きい側で急減する定常的な地震活動の特徴を示した。一方、クラスタごとの地震発生間隔分布は多様であり、特にb値が低く中規模地震を伴う震源クラスタでは発生間隔全体に対して地震発生レートが漸減する散発的な地震活動の特徴が見られた。
議論
再決定震源分布の詳細観察から同定された複数の面状構造は断層面に対応していると考えられる。その走向・傾斜は震源クラスタ間で多様であり、これは群発地震活動域における複雑な応力場を反映するものと考えられる。
これまでの研究では、地震波速度トモグラフィーにより本研究領域直下には低速度域が推定され(Nakajima, 2023)、本研究領域の東部では年間約10 mmの隆起が観測されている(Yoshida et al., 2011)。以上から、和歌山群発地震は深部から供給される流体によって引き起こされていると考えられているが、本研究で明らかになった局所的な地震活動の違いを流体の供給だけで単純に説明することはできない。定常的な地震活動がみられる震源クラスタと散発的な地震活動がみられる震源クラスタが約25 km四方の領域に共存するという観測事実から、地殻構成物質の局所的な力学的・水理学的特性の違いが地震活動の多様性に反映されていると考えられる。
本研究により、これまで漠然と時空間的に定常的な地震活動とみなされてきた和歌山群発地震が特性の異なる複数の震源クラスタによって構成されていることが明らかになった。これは、和歌山群発地震ひいては定常的な群発地震活動の発生・駆動メカニズムの理解につながる重要な知見といえる。
謝辞
本研究では、気象庁一元化震源ならびに検測値、気象庁・防災科学技術研究所Hi-net・産業技術総合研究所・京都大学・東京大学の設置した観測点で得られた観測波形記録を使用しました。