日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 地震活動とその物理

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:千葉 慶太(公益財団法人 地震予知総合研究振興会)、吉光 奈奈(京都大学)

17:15 〜 19:15

[SSS12-P04] 気仙沼沖の繰り返し地震波形の高周波数帯域における相違

*齋藤 孝輝1平野 史朗2前田 拓人2 (1.弘前大学理工学部、2.弘前大学大学院理工学研究科)


キーワード:繰り返し地震、波形相関、相似地震

繰り返し地震とは、ほぼ同じ場所やメカニズムで発生し、ほぼ同じような地震波形を示す地震である。日本では、東北地方太平洋沖の沈み込み帯のプレート境界をはじめとする様々なテクトニクスで発見されており、日本列島全域で発生した繰り返し地震はカタログ化されている。Igarashi (2020) におけるカタログ化では、異なる地震の組み合わせ(以下ペア)に対する波形の相互相関関数の最大値(以下相関係数)を用いるが、M3以上の繰り返し地震の判定には1-4 Hz の周波数帯域を用いている。しかしながら、この時点でM3以上の地震の波形について、4 Hz以上の相関係数については明らかにされていない。そのため、高周波数帯域を詳しく調べることで、同一繰り返し地震群におけるイベントを発生メカニズムの違いや時間経過に伴う変化などからより詳細に分類することができる可能性がある。本研究では、高周波数帯域まで周波数範囲を細かく分割した波形相互相関計算を行い、Igarashi (2020) が繰り返し地震と認定したペアのうち、高周波数帯域および低周波数帯域において特徴的な結果を示したペアについて検討する。

本研究では、宮城県気仙沼沖において繰り返し地震群を3つ含む領域で発生した74イベントを対象とした。イベントのカバー率が高く、対象とする地震群から100 km 程度離れたHi-net小野田観測点の3成分波形を用いた。これらの波形に1-2 Hzから16-32 Hz までのオクターブ幅のバンドパスフィルタをかけた波形を使用し、相互相関計算を行った。全ペアの相関係数の頻度分布形状をふまえ、3成分の相関係数の合計が2.7以上になることを類似性の基準とし、全てのペアを2-4 Hzの相関係数が2.7以上のペア・2.0-2.7の中程度のペア・2.0未満のペアという3グループに分類した。このうち、2.7以上のペアは全て同一繰り返し地震群同士のペアであるが、一部のペアでは、1-2 Hzでの値が2-4 Hzと比べて3成分合計の相関係数が0.5程度低下した。また、16-32 Hzでは3成分合計の相関係数がほぼ3.0から0.5程度まで、あらゆる値のペアが見られた。1-2 Hz または16-32 Hz において相対的に低い相関係数を示したペアについて、震源位置やマグニチュード差、スペクトルなどから検討を行った。1-2 Hz において相関係数が低下するペアは、その全てが特定のイベントとのペアであった。Hi-net小野田観測点から200 km 程度離れた福島沖でこのイベントの直前に発生した別イベントが原因であることが分かった。この別イベントの波形は1-2 Hzのみに影響を与えた。また、16-32 Hzにおいて相関係数が低下するペアについても検討したところ、これらのペアは特定の4つのイベントとのペアであった。それら4つのイベントとそれ以外のイベント波形のスペクトルを比較したところ、これらのスペクトルの形が異なる場合や、高周波数帯域におけるシグナル対ノイズ比が低い場合があることが要因として考えられた。このことは繰り返し地震における震源過程の違いを示していると考えられる。また、繰り返し地震群によっては、前半に発生したイベントと後半に発生したイベントの高周波成分の特徴が異なることが分かった。一方で、ペア間のマグニチュード差が16-32 Hz における相関係数へ与える影響は低いと考えられた。

Igarashi (2020) のカタログには約10,000件もの繰り返し地震群が含まれており、本研究と同様の解析を行う余地が十分に残されている。このことから、より多くの繰り返し地震群を検証することで、異なる地域や異なる繰り返し地震群においても同様の結果が見られるかどうかを検討し、地震群ごとの特性などを明らかにできる可能性がある。