日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 地震活動とその物理

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:千葉 慶太(公益財団法人 地震予知総合研究振興会)、吉光 奈奈(京都大学)

17:15 〜 19:15

[SSS12-P18] うるう秒挿入と太平洋Slabの下部Mantle上面への突入.

*新妻 信明1 (1.静岡大学理学部地球科学教室)

キーワード:うるう秒、深発地震面、太平洋Slab、下部Mantle、地球自転、海溝域巨大地震

日本列島下には深発地震面が千島・日本・伊豆海溝から沈込むように分布している(Wadati, 1935).気象庁による1922年以降の定常地震観測による深発地震面の位置および1994年以降のCMT解による発震機構によって検討が可能になり,深発地震面は海溝から沈込む太平洋Slabとされている.深発地震の規模は下部Mantle上面の深度660㎞に向かって増大し,660㎞以深の震源も認められることから,Slabの下部Mantleへの突入が予想される.
 日本海溝域は25mにも及ぶPlate運動にも耐え固着してきたが,1999年4月8日深度610㎞ M7.1・2002年6月29日深度617㎞ M7.2・2010年2月18日深度631㎞ M6.9で太平洋Slab先端の下部Mantle上面突入に伴う座屈破壊により約2mの短縮で対応したが,その10日後の2010年2月28日日本海溝沖深度10㎞ M5.3により太平洋底が短縮破壊し,2011年3月11日東北島弧沖平成巨大地震M9.0が数百年間のPlate運動歪を解放した.千島海溝域の太平洋Slab先端では,2012年8月14日深度610㎞ M7.7・2013年5月24日深度632㎞ M8.3・2021年9月3日深度580㎞ M5.8・2024年6月6日深度607㎞ M5.9が発生していることから,巨大地震の来襲が懸念されている(新妻,2024).
 相転移を伴い密度の大きい広大なSlabが下部Mantleに突入すれば,地軸に対する質量分布が変化し,自転速度に影響を与えることが予想される.時間は,日常使用されている基本単位であるが,地球の自転を基準に定義されてきた.一方,地球の自転は1972年から原子時計に基づいて管理されている.海洋潮汐などの摩擦抵抗によって減速されるため,その差が1秒に達する前に負のうるう秒を挿入して調整されてきた.しかし,約1年であった挿入間隔が1999年1月以降に数年まで伸び,近年では挿入が必要でないばかりか,正のうるう秒の挿入まで検討されている(Fischetti, 2025).
 1972年から2024年までのうるう秒挿入と300㎞以深M7.0以上の太平洋Slab地震を比較すると,Slab地震発生後にうるう秒挿入間隔が増大している(付図参照).特に1999年から2006年までの無挿入と地震との関係は明瞭で,figure skate選手が伸ばしていた腕を縮めることによって回転速度を上げるように,破壊限界を超えるまで先端が歪んだSlabの重心が自転軸に近い下方に移動したことを示している.
 下部Mantle上面付近のSlab先端地震は海溝域の巨大地震発生に先行し,地震予報に重要であるが,Mantle遷移帯の力学情報は極めて限られ,地球自転変動との関連が新たな道を拓くことが期待される.
引用文献:
Fischetti,M. (2025) うるう秒は時流遅れ?.日経サイエンス,2025年2月号,100₋103.
新妻信明(2024) 「2011年3月11日の東北弧沖平成巨大地震M9.0と太平洋Slabの下部Mantleへの沈込および千島海溝域の巨大地震」,日本地質学会山形年会,T7-O-8.
Wadati, K. (1935) On the activity of deep-focus earthquakes in the Japan Islands and neighborhoods. Geophysical Magazine, 8, 305-325.