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[SSS14-04] 宮城県鬼首カルデラ南西縁,鬼首断層の変動地形学的特徴と活動性
キーワード:火山構造地質、カルデラ境界断層
カルデラとは,マグマ溜まりの天井がブロック状に沈降することで生じる陥没構造である.一部のカルデラの辺縁には活断層が分布し,後カルデラ期の地形面を変位させている[1].また,カルデラ縁ではしばしば強震動や地殻変動を伴う地震が発生している.したがって,カルデラ縁の活断層も起震断層となる可能性があるため,変動地形学的特徴や活動性に基づく地震ハザードの評価が必要である.しかし,こうした活断層に関しては,1/20万の小縮尺図上でのおおよその位置や変位センスは示されているものの[2],詳しい変動地形学的特徴の記載や活動度の評価はほとんど行われていない.本研究は,カルデラ縁の活断層にあたる鬼首断層[2]について上述の点を検討し,地震ハザード評価に資する知見を提供することを目指す.
本研究は1976年国土地理院撮影の1/15000空中写真と,同所提供の5 mおよび10 mメッシュDEMを用いた地形判読を行い,断層変位地形と変位基準となる段丘面群をマッピングした(Figure).また,DEMから作成した地形断面図にて鉛直変位量を読み取った.つづいて,現地で段丘面群の年代試料として被覆層中のテフラおよび構成層中の有機物を採取した.テフラ試料は,東京大学のSEM-EDSを用いた主成分化学組成分析により既知テフラと対比した.有機物試料は(株)加速器分析研究所にAMS測定を依頼した.そして断層の鉛直変位量を,上記の分析で推定された段丘面形成年代で除し,平均変位速度を求めた.
鬼首カルデラは直径約12 kmで,20–30万年前に形成された[3].カルデラ中央には再生ドームが存在し,この外周に沿って江合川が反時計回りに流下して南縁でカルデラ外へ流出する.江合川沿いの段丘は高位から順に高畑面,大森面,原I・II・III面,久瀬面に分けられる.南西部の外輪山麓には段丘化した合流扇状地が広がっており,高位から順に鬼首I・II・III・IV・V・VI面と分類される.
鬼首断層は鬼首面群を変位させるES~NS走向の断層崖(全長8 km)と,高畑面のみを変位させるNS走向の逆向き断層崖(全長2 km)から成る.前者の断層崖は文献[2]の鬼首断層南部,後者は鬼首断層北部に相当し,以降この呼称を踏襲する.鬼首断層南部は,大局的にはカルデラ内側が相対的に低下するセンスである.東端付近では逆向き断層崖が並行し,幅100–250 m程度の地溝状地形をなす.最大鉛直変位量は鬼首II面上で9 m,鬼首III面上で5 m,鬼首IV面上で4 m,鬼首VI面上で0.4 mで,累積性が認められる.鬼首断層北部はカルデラ外側が相対的に低下するセンスで,低下側に鬼首面群が,上昇側に高畑面が分布する.断層崖の比高は最大で25 m程度であるが,低下側の高畑面が鬼首面群に埋没していると考えられるため,この値は鉛直変位量の下限値である.
高畑面(Loc.1)の被覆層最下部から鳴子柳沢テフラ(41–63 ka)が,鬼首II面(Loc.2)の被覆層最下部から十和田八戸テフラ(15.5 ka)がそれぞれ検出された.鬼首VI面構成層中の有機物試料は,460–311 calBP(Loc.3)および488–424, 396–317 calBP(Loc.4)の放射性炭素年代を示した.ただしLocs. 3,4は谷の出口付近かつ現在の流路に近いため,同面の中でも比較的新しい時代に段丘化した可能性がある.また,文献[4]が鬼首III面の開析谷底の埋没土壌から得た14C年代を較正すると,6300–5574, 5528–5482 calBPとなる.よって段丘化年代は高畑面が41–63 ka,鬼首II面が15.5 ka,鬼首III面が>5.5–6.3 ka,鬼首VI面が>0.3–0.5 kaと推定される.以上から,鬼首断層南部の平均変位速度は~0.6–1.3 m/kyr,鬼首断層北部は>0.4–0.6 m/kyrと求まる.鬼首断層南部の活動度はB級上位からA級下位であり,日本列島における全長10 km未満の活断層としては活動度が高い.
以上のように鬼首断層の変動地形学的特徴と平均変位速度が明らかとなった.しかし,詳しい活動履歴や単位変位量,断層面の傾斜方向は不明である.今後はこれらの点を調査することで,同断層に関するより高度なハザード評価,さらには鬼首カルデラ形成期以降の地形発達史の復元につながると期待される.
本研究は東京地学協会令和6年度調査・研究等助成金を用いて実施した.
[1]Sanjo and Sugai, 2023, Geomorphology, 440.
[2]活断層研究会編,1991,新編 日本の活断層.
[3]土屋ほか,1997,5万分の1地質図幅「岩ケ崎」説明書.
[4]小元,1992,季刊地理学,44.
本研究は1976年国土地理院撮影の1/15000空中写真と,同所提供の5 mおよび10 mメッシュDEMを用いた地形判読を行い,断層変位地形と変位基準となる段丘面群をマッピングした(Figure).また,DEMから作成した地形断面図にて鉛直変位量を読み取った.つづいて,現地で段丘面群の年代試料として被覆層中のテフラおよび構成層中の有機物を採取した.テフラ試料は,東京大学のSEM-EDSを用いた主成分化学組成分析により既知テフラと対比した.有機物試料は(株)加速器分析研究所にAMS測定を依頼した.そして断層の鉛直変位量を,上記の分析で推定された段丘面形成年代で除し,平均変位速度を求めた.
鬼首カルデラは直径約12 kmで,20–30万年前に形成された[3].カルデラ中央には再生ドームが存在し,この外周に沿って江合川が反時計回りに流下して南縁でカルデラ外へ流出する.江合川沿いの段丘は高位から順に高畑面,大森面,原I・II・III面,久瀬面に分けられる.南西部の外輪山麓には段丘化した合流扇状地が広がっており,高位から順に鬼首I・II・III・IV・V・VI面と分類される.
鬼首断層は鬼首面群を変位させるES~NS走向の断層崖(全長8 km)と,高畑面のみを変位させるNS走向の逆向き断層崖(全長2 km)から成る.前者の断層崖は文献[2]の鬼首断層南部,後者は鬼首断層北部に相当し,以降この呼称を踏襲する.鬼首断層南部は,大局的にはカルデラ内側が相対的に低下するセンスである.東端付近では逆向き断層崖が並行し,幅100–250 m程度の地溝状地形をなす.最大鉛直変位量は鬼首II面上で9 m,鬼首III面上で5 m,鬼首IV面上で4 m,鬼首VI面上で0.4 mで,累積性が認められる.鬼首断層北部はカルデラ外側が相対的に低下するセンスで,低下側に鬼首面群が,上昇側に高畑面が分布する.断層崖の比高は最大で25 m程度であるが,低下側の高畑面が鬼首面群に埋没していると考えられるため,この値は鉛直変位量の下限値である.
高畑面(Loc.1)の被覆層最下部から鳴子柳沢テフラ(41–63 ka)が,鬼首II面(Loc.2)の被覆層最下部から十和田八戸テフラ(15.5 ka)がそれぞれ検出された.鬼首VI面構成層中の有機物試料は,460–311 calBP(Loc.3)および488–424, 396–317 calBP(Loc.4)の放射性炭素年代を示した.ただしLocs. 3,4は谷の出口付近かつ現在の流路に近いため,同面の中でも比較的新しい時代に段丘化した可能性がある.また,文献[4]が鬼首III面の開析谷底の埋没土壌から得た14C年代を較正すると,6300–5574, 5528–5482 calBPとなる.よって段丘化年代は高畑面が41–63 ka,鬼首II面が15.5 ka,鬼首III面が>5.5–6.3 ka,鬼首VI面が>0.3–0.5 kaと推定される.以上から,鬼首断層南部の平均変位速度は~0.6–1.3 m/kyr,鬼首断層北部は>0.4–0.6 m/kyrと求まる.鬼首断層南部の活動度はB級上位からA級下位であり,日本列島における全長10 km未満の活断層としては活動度が高い.
以上のように鬼首断層の変動地形学的特徴と平均変位速度が明らかとなった.しかし,詳しい活動履歴や単位変位量,断層面の傾斜方向は不明である.今後はこれらの点を調査することで,同断層に関するより高度なハザード評価,さらには鬼首カルデラ形成期以降の地形発達史の復元につながると期待される.
本研究は東京地学協会令和6年度調査・研究等助成金を用いて実施した.
[1]Sanjo and Sugai, 2023, Geomorphology, 440.
[2]活断層研究会編,1991,新編 日本の活断層.
[3]土屋ほか,1997,5万分の1地質図幅「岩ケ崎」説明書.
[4]小元,1992,季刊地理学,44.