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[SSS14-05] 常時微動計測から推定されるいわき市塩ノ平断層の過去の活動
キーワード:常時微動計測、塩ノ平断層、綱木盆地、いわき市
2011年福島県浜通りの地震(M7.0)でいわき市に地表地震断層が出現した。井戸沢断層と湯ノ岳断層である。井戸沢断層は新編「日本の活断層」では東側と西側の2本引かれているが、西側の方で主要な活動があり、塩ノ平で1.9mの垂直変位が出現し、道路の寸断や河川の下流側の上昇による淵の形成などが確認された。そのため、井戸沢断層の西側を塩ノ平断層と呼称する発表もあり、本発表でもそれに準じる。井戸沢断層の東側でも、塩ノ平断層の活動による強い揺れで破砕帯に沿った10㎝弱の変動が現れ、干渉SAR画像の干渉縞の不連続として確認される。塩ノ平断層は2011年の活動ではこれまで活断層と知られていない範囲まで活動しており、北端の綱木では60㎝程度の垂直変位を持つ地表地震断層が出現した。演者らはこれまでに、新潟県津南町の宮野原断層、飯山市、長野県白馬村の神城断層などで断層線を挟んだ測線での常時微動計測を行い、地下のS波速度構造を求めて基盤岩や段丘礫層のズレを推定し、過去の断層活動の検討を行ってきた。今回、塩ノ平と綱木盆地内で常時微動計測を行ったので、その結果を報告する。
塩ノ平地区では、河床が刻んだ谷内の平坦地で、断層線を挟んだ2箇所で計測した。周辺の地質は変成岩(緑色片岩)が分布しており、やや硬い岩盤である。この地点では地下構造を知ることが出来るボーリングデータは存在しないが、約300~400m/s前後で大幅にS波速度が変化する深度を基盤の深度と仮定して検討を行った。基盤深度のS波速度を300m/sと設定して比較すると5m以上西側が低下する基盤のズレが確認できた。2011年で2m弱の垂直変位があったため、過去の活動で同程度の変位が発生したと考えると、河川が形成されてから2~3回程度の変位の累積が考えられる。地震直後の現地調査では断層を挟んで上流側が1.9m低下して深い淵が形成されていたが、現在は軟弱な堆積物が厚く堆積し深さは30㎝程度に変化しており、周辺も水に飽和した軟弱な地盤であった。上流側の常時微動計測結果は、200m/sに達しない軟弱地盤が深度4m弱、200m/s程度の軟弱地盤が深度7m弱まで確認されており、複数の活動による上流側の低下による軟弱層の厚い堆積が示唆される結果である。
綱木では盆地内で20点の計測を行った。Avs30の値を比較すると、綱木盆地の西縁の方が比較的小さい値となっている。断層は盆地西縁に位置しており、破砕帯の影響等も考えられる。盆地の南側で60cmの西側低下の地表地震断層が出現したが、その周辺での計測結果を比較した。基盤深度に達するS波速度を300m/sと設定すると、断層を境に130cm程度の西落ちの基盤のズレが確認できた。2回分の変位を記録している可能性がある。綱木北部で地表地震断層は2本に分化しており、東側の変位が0.53m∼0.62m、西側の変位が0.23mであった。その周辺での計測結果を比較すると、基盤深度に達するS波速度を300m/sと設定すると、断層を境に130cm程度の東落ちの基盤のズレが確認でき、地表地震断層のセンスとは矛盾する。基盤深度に達するS波速度を400m/sと設定すると、基盤のズレはほとんどなくなるため、今後の詳細な検討が必要である。
塩ノ平と綱木での常時微動計測結果は、2011年の地震と同様の活動が過去も累積していた考えられるものであった。ただし、綱木での基盤のズレは2回程度と考えらえるのに対して、塩ノ平では3回以上の可能性が考えられるので、過去の活動には縁辺部の綱木までには及ばず、塩ノ平周辺でのみ動いた変動があった可能性も示唆する。また、綱木盆地の形成に塩ノ平断層が関与したと考えると、断層運動が西側低下のため矛盾するが、綱木盆地内のAvs30の数値が比較的大きいので、基盤深度は余り深くはない。このことは、西側低下の断層運動により盆地がそれほど低下せず堆積層が薄いこととは整合的である。
本研究は、茨城大学と防災科学技術研究所との共同研究協定に基づくもので、金子の修士研究成果の一部と小荒井の国土地理院客員研究員の研究成果の一部である。
塩ノ平地区では、河床が刻んだ谷内の平坦地で、断層線を挟んだ2箇所で計測した。周辺の地質は変成岩(緑色片岩)が分布しており、やや硬い岩盤である。この地点では地下構造を知ることが出来るボーリングデータは存在しないが、約300~400m/s前後で大幅にS波速度が変化する深度を基盤の深度と仮定して検討を行った。基盤深度のS波速度を300m/sと設定して比較すると5m以上西側が低下する基盤のズレが確認できた。2011年で2m弱の垂直変位があったため、過去の活動で同程度の変位が発生したと考えると、河川が形成されてから2~3回程度の変位の累積が考えられる。地震直後の現地調査では断層を挟んで上流側が1.9m低下して深い淵が形成されていたが、現在は軟弱な堆積物が厚く堆積し深さは30㎝程度に変化しており、周辺も水に飽和した軟弱な地盤であった。上流側の常時微動計測結果は、200m/sに達しない軟弱地盤が深度4m弱、200m/s程度の軟弱地盤が深度7m弱まで確認されており、複数の活動による上流側の低下による軟弱層の厚い堆積が示唆される結果である。
綱木では盆地内で20点の計測を行った。Avs30の値を比較すると、綱木盆地の西縁の方が比較的小さい値となっている。断層は盆地西縁に位置しており、破砕帯の影響等も考えられる。盆地の南側で60cmの西側低下の地表地震断層が出現したが、その周辺での計測結果を比較した。基盤深度に達するS波速度を300m/sと設定すると、断層を境に130cm程度の西落ちの基盤のズレが確認できた。2回分の変位を記録している可能性がある。綱木北部で地表地震断層は2本に分化しており、東側の変位が0.53m∼0.62m、西側の変位が0.23mであった。その周辺での計測結果を比較すると、基盤深度に達するS波速度を300m/sと設定すると、断層を境に130cm程度の東落ちの基盤のズレが確認でき、地表地震断層のセンスとは矛盾する。基盤深度に達するS波速度を400m/sと設定すると、基盤のズレはほとんどなくなるため、今後の詳細な検討が必要である。
塩ノ平と綱木での常時微動計測結果は、2011年の地震と同様の活動が過去も累積していた考えられるものであった。ただし、綱木での基盤のズレは2回程度と考えらえるのに対して、塩ノ平では3回以上の可能性が考えられるので、過去の活動には縁辺部の綱木までには及ばず、塩ノ平周辺でのみ動いた変動があった可能性も示唆する。また、綱木盆地の形成に塩ノ平断層が関与したと考えると、断層運動が西側低下のため矛盾するが、綱木盆地内のAvs30の数値が比較的大きいので、基盤深度は余り深くはない。このことは、西側低下の断層運動により盆地がそれほど低下せず堆積層が薄いこととは整合的である。
本研究は、茨城大学と防災科学技術研究所との共同研究協定に基づくもので、金子の修士研究成果の一部と小荒井の国土地理院客員研究員の研究成果の一部である。