14:15 〜 14:30
[SSS14-15] カンザシゴカイの放射性炭素年代測定による能登地震の履歴解析
キーワード:能登半島地震、放射性炭素年代測定、カンザシゴカイ
2024年1月1日に能登半島で発生した地震は、4m以上の隆起を引き起こす歴史的な事象である。同地域では、過去にも大規模地震が繰り返し発生していると考えられることから、沿岸海域の活断層評価の重要性が再認識された。海岸に極めて近い海域の活断層の分布と性状の把握は困難な場合が多く、海陸境界沿いに分布する活断層の変位速度や活動履歴が十分に解明されていなかった。しかし、2024年1月1日の地震での変状が示すように、海域に分布する活断層は陸上にも地殻変動を及ぼすため、沿岸部の地形を詳細に把握することで、隆起や沈降の履歴を復元できる可能性がある。その結果、活断層の評価に新たな視点が提供されると期待される。
本研究では、海生生物であるヤッコカンザシゴカイの棲管に着目し、放射性炭素年代測定によって過去の隆起イベントの再構築に挑んだ。2024年の地震による隆起が確認された珠洲市北東部の青の洞窟内壁から、ヤッコカンザシゴカイの棲管を5点採取した(うち1点は北側の壁面からの採取)。なお、北側の壁面では1点のみ採取され、標高の高い試料が残っていなかったため、他の試料との体系的な比較が難しく、今回の議論の対象とはしなかった。基準となるNAD-01のΔ14C値は25.2‰であり、2021年に青森県の日本海沿岸で採取された表層海水の値(Leggett et al.,2023)と比較した結果、近年の地震による離水が確認されたことから、隆起量を高い精度で評価できた。そこで、NAD-01を基準に標高補正を行った結果、他の点の補正後標高は、NAD-1.5が1.117m、NAD-02が1.918m、NAD-03が3.022mと算出された。
AMS測定結果をMarine20を用い、ΔR=0で補正した結果、14C年代はNAD-1.5が784–548 calBP、NAD-02が938–688 calBP、NAD-03が2676–2351 calBPとなった。特に、最も高い位置にあるNAD-03は、宍倉ほか(2020)が区分した低位段丘のL3面に相当する標高で採取された。これまでL3面の年代は明らかにされていなかったが、今回、同程度の標高にあるヤッコカンザシゴカイの棲管の年代測定から、約2600~2300年前の離水イベントに起因する隆起が確認された。これは、L3面も同じくこの時期の離水イベントで形成された可能性を示唆する貴重なデータである。さらに、本研究の結果から、過去2600年間で約3mの隆起が発生したことにより、隆起速度は約1.15 m/kyrと算出された。この値は、太田ほか(1973)でまとめられているMIS 5eの標高をもとに算出された能登半島北部の隆起速度(約1.0 m/kyr)に近く、能登半島の長期的な地殻変動メカニズムを理解する上で重要な示唆を与えるものである。
また、NAD-03、NAD-02、NAD-1.5、そして今回の地震(NAD-01)の関係を分析した結果、隆起を伴う地震の発生間隔には一定の傾向があるものの、周期にはばらつきが見られた。NAD-03(約2600~2300年前)からNAD-02(約900~700年前)までは約1400~1700年の間隔がある一方で、NAD-02からNAD-1.5(約800~500年前)の間隔は150~250年と短い。また、NAD-1.5と今回の地震(2024年)の間隔は約800~500年であった。これらのデータから、隆起を伴う地震はおおよそ1000年の間隔で発生する傾向があるが、長いケースで1400年以上、短いケースで200~300年の間隔で発生することが示唆された。
以上の解析により、本研究は能登半島における2024年の地震を含む近年の隆起量を精度良く評価し、これまで年代が不明であったL3面の年代を初めて明らかにすることができた。また、隆起イベントの発生周期は一定ではなく、約1000年を中心にばらつきがあることを示す結果となった。この知見は、沿岸海域に分布する活断層の評価手法に新たな精度向上に貢献し、過去および将来の大地震リスクの理解に寄与するものと期待される。
本研究では、海生生物であるヤッコカンザシゴカイの棲管に着目し、放射性炭素年代測定によって過去の隆起イベントの再構築に挑んだ。2024年の地震による隆起が確認された珠洲市北東部の青の洞窟内壁から、ヤッコカンザシゴカイの棲管を5点採取した(うち1点は北側の壁面からの採取)。なお、北側の壁面では1点のみ採取され、標高の高い試料が残っていなかったため、他の試料との体系的な比較が難しく、今回の議論の対象とはしなかった。基準となるNAD-01のΔ14C値は25.2‰であり、2021年に青森県の日本海沿岸で採取された表層海水の値(Leggett et al.,2023)と比較した結果、近年の地震による離水が確認されたことから、隆起量を高い精度で評価できた。そこで、NAD-01を基準に標高補正を行った結果、他の点の補正後標高は、NAD-1.5が1.117m、NAD-02が1.918m、NAD-03が3.022mと算出された。
AMS測定結果をMarine20を用い、ΔR=0で補正した結果、14C年代はNAD-1.5が784–548 calBP、NAD-02が938–688 calBP、NAD-03が2676–2351 calBPとなった。特に、最も高い位置にあるNAD-03は、宍倉ほか(2020)が区分した低位段丘のL3面に相当する標高で採取された。これまでL3面の年代は明らかにされていなかったが、今回、同程度の標高にあるヤッコカンザシゴカイの棲管の年代測定から、約2600~2300年前の離水イベントに起因する隆起が確認された。これは、L3面も同じくこの時期の離水イベントで形成された可能性を示唆する貴重なデータである。さらに、本研究の結果から、過去2600年間で約3mの隆起が発生したことにより、隆起速度は約1.15 m/kyrと算出された。この値は、太田ほか(1973)でまとめられているMIS 5eの標高をもとに算出された能登半島北部の隆起速度(約1.0 m/kyr)に近く、能登半島の長期的な地殻変動メカニズムを理解する上で重要な示唆を与えるものである。
また、NAD-03、NAD-02、NAD-1.5、そして今回の地震(NAD-01)の関係を分析した結果、隆起を伴う地震の発生間隔には一定の傾向があるものの、周期にはばらつきが見られた。NAD-03(約2600~2300年前)からNAD-02(約900~700年前)までは約1400~1700年の間隔がある一方で、NAD-02からNAD-1.5(約800~500年前)の間隔は150~250年と短い。また、NAD-1.5と今回の地震(2024年)の間隔は約800~500年であった。これらのデータから、隆起を伴う地震はおおよそ1000年の間隔で発生する傾向があるが、長いケースで1400年以上、短いケースで200~300年の間隔で発生することが示唆された。
以上の解析により、本研究は能登半島における2024年の地震を含む近年の隆起量を精度良く評価し、これまで年代が不明であったL3面の年代を初めて明らかにすることができた。また、隆起イベントの発生周期は一定ではなく、約1000年を中心にばらつきがあることを示す結果となった。この知見は、沿岸海域に分布する活断層の評価手法に新たな精度向上に貢献し、過去および将来の大地震リスクの理解に寄与するものと期待される。