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[SSS14-P03] 海食地形調査に基づく能登半島北東部の地震活動の推定
キーワード:海食地形、離水生物遺骸群集、能登半島地震
能登半島では,海成段丘に代表される隆起地形がよく発達しており,隆起を伴うM6以上の地震が繰り返し発生してきたと考えられている.地震性隆起の痕跡として海食地形があり,これらが陸上で見られることで,旧汀線の指標として利用できる.海食地形とは,主に岩石海岸で波の力によって形成される地形で,海食崖,海食崖基部のくぼみのノッチ,海食崖基部の洞穴の海食洞,岩盤がアーチ状に削られたアーチ等がある.[1]は,海食地形に残された離水生物遺骸群集の年代と標高から,歴史地震の震源断層モデルを示した.能登半島北部には岩石海岸が広く分布し,未だ報告されていない海食地形が複数存在する.本研究では,能登半島北東部の未報告の海食地形を探索・調査し,離水生物遺骸群集の標高・年代測定を行う.既報の結果に本研究のデータを加えることで,完新世の地震の解像度向上を目指す.また,能登地方における地震の活動セグメントや連動等の評価につなげることを目的とする.
現地調査では,海食地形の探索と,それにより発見した海食地形の詳細調査の二つを行った.海食地形の探索の範囲は,珠洲市北東部の岩石海岸で,UAV(ドローン)による沿岸撮影と地表踏査を行った.海食地形の詳細調査は,LiDAR,RTK-GNSS等を利用した空間分布の測量と,海食地形にある離水生物遺骸群集等の高度測定・サンプル採取およびサンプルの放射性炭素年代測定を行った.
海食地形の探索により十か所でノッチ,海食洞,アーチ等の海食地形を見つけた.その中で,堂ガ崎,能登双見,シャク崎の三か所で詳細調査を行った.本発表では,堂ガ崎と能登双見について報告する.
堂ガ崎では海食洞を発見した.高さは約1.5m,奥行きは約12m,幅は最大約4mで,入口から内側へ約7mは海食洞の上部が開けており,細長い形状を持つ.東西の壁面にヤッコカンザシを主とする離水生物遺骸群集が分布しており,上部群集の上端(NGD02:標高2.291m),中部群集の上端(NDG01:標高1.958m)でそれぞれサンプル採取を行った.入手したサンプルは,ベータアナリティクス社に放射性炭素年代測定を依頼した.その結果,NDG02で1694-1950 cal AD(95.4%),NDG01で1871-1929 cal AD(94.1%)を示した.
能登双見ではアーチを発見した.高さは約1.5m,奥行きは約8m,幅は最大約3mで,完全には離水しておらず内部に波が侵入している.内部の南側の壁面にイワフジツボ・ヤッコカンザシを主とする離水生物遺骸群集が分布しており,標高0.955m,1.315m,1.745mでそれぞれサンプル採取を行った.今後,放射性炭素年代測定を行う予定である.
堂ガ崎における2023年5月の地震と令和6年能登半島地震の隆起量(それぞれ0.21m,1.712m)より,NDG01は2023年5月の地震で完全に離水したものと判断される.NDG02はNDG01よりも上位に位置するため,AD1694-1929の間に隆起イベントが発生したと考えられる.このイベントとして最も有力と考えられるのは, 1729年に発生した歴史地震である[2].[1]では離水生物遺骸群集の年代と標高から,この地震により輪島市の千枚田近傍から珠洲市の大崎までの区間で隆起が発生したとしており,これに基づいて[3]の輪島沖セグメントに相当する震源断層モデルを示した.NDG02はこの範囲の東端よりも約3km東に位置しており,輪島沖セグメントの東に分布する珠洲沖セグメントに属する.本研究により,1729年の歴史地震で生じた隆起はこれまでの報告よりも広い範囲であったこと,この地震は輪島沖セグメントと珠洲沖セグメントの一部が同時に活動したものであることが可能性として示された.
本研究の実施にあたっては,科学研究費補助金(特別研究促進費23K17482)「2023年5月5日の地震を含む能登半島北東部陸海域で継続する地震と災害の総合調査」の一部を使用しました.記して感謝申し上げます.
参考文献
[1] Hamada, M., et al., 2016, Tectonophysics, 670, 38-47.
[2] 宇佐美龍夫ほか,2013,東京大学出版会.
[3] 井上・岡村,2010,産総研地質調査総合センター.
現地調査では,海食地形の探索と,それにより発見した海食地形の詳細調査の二つを行った.海食地形の探索の範囲は,珠洲市北東部の岩石海岸で,UAV(ドローン)による沿岸撮影と地表踏査を行った.海食地形の詳細調査は,LiDAR,RTK-GNSS等を利用した空間分布の測量と,海食地形にある離水生物遺骸群集等の高度測定・サンプル採取およびサンプルの放射性炭素年代測定を行った.
海食地形の探索により十か所でノッチ,海食洞,アーチ等の海食地形を見つけた.その中で,堂ガ崎,能登双見,シャク崎の三か所で詳細調査を行った.本発表では,堂ガ崎と能登双見について報告する.
堂ガ崎では海食洞を発見した.高さは約1.5m,奥行きは約12m,幅は最大約4mで,入口から内側へ約7mは海食洞の上部が開けており,細長い形状を持つ.東西の壁面にヤッコカンザシを主とする離水生物遺骸群集が分布しており,上部群集の上端(NGD02:標高2.291m),中部群集の上端(NDG01:標高1.958m)でそれぞれサンプル採取を行った.入手したサンプルは,ベータアナリティクス社に放射性炭素年代測定を依頼した.その結果,NDG02で1694-1950 cal AD(95.4%),NDG01で1871-1929 cal AD(94.1%)を示した.
能登双見ではアーチを発見した.高さは約1.5m,奥行きは約8m,幅は最大約3mで,完全には離水しておらず内部に波が侵入している.内部の南側の壁面にイワフジツボ・ヤッコカンザシを主とする離水生物遺骸群集が分布しており,標高0.955m,1.315m,1.745mでそれぞれサンプル採取を行った.今後,放射性炭素年代測定を行う予定である.
堂ガ崎における2023年5月の地震と令和6年能登半島地震の隆起量(それぞれ0.21m,1.712m)より,NDG01は2023年5月の地震で完全に離水したものと判断される.NDG02はNDG01よりも上位に位置するため,AD1694-1929の間に隆起イベントが発生したと考えられる.このイベントとして最も有力と考えられるのは, 1729年に発生した歴史地震である[2].[1]では離水生物遺骸群集の年代と標高から,この地震により輪島市の千枚田近傍から珠洲市の大崎までの区間で隆起が発生したとしており,これに基づいて[3]の輪島沖セグメントに相当する震源断層モデルを示した.NDG02はこの範囲の東端よりも約3km東に位置しており,輪島沖セグメントの東に分布する珠洲沖セグメントに属する.本研究により,1729年の歴史地震で生じた隆起はこれまでの報告よりも広い範囲であったこと,この地震は輪島沖セグメントと珠洲沖セグメントの一部が同時に活動したものであることが可能性として示された.
本研究の実施にあたっては,科学研究費補助金(特別研究促進費23K17482)「2023年5月5日の地震を含む能登半島北東部陸海域で継続する地震と災害の総合調査」の一部を使用しました.記して感謝申し上げます.
参考文献
[1] Hamada, M., et al., 2016, Tectonophysics, 670, 38-47.
[2] 宇佐美龍夫ほか,2013,東京大学出版会.
[3] 井上・岡村,2010,産総研地質調査総合センター.