日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 活断層と古地震

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、矢部 優(産業技術総合研究所)、大橋 聖和((国研)産業技術総合研究所)、楮原 京子(山口大学)

17:15 〜 19:15

[SSS14-P06] 能登半島珠洲市若山川沿いにおける河岸侵食によって現れた地表変状付近の断層露頭

*白濱 吉起1、廣瀨 健大朗2、小川 智史2永田 秀尚3安江 健一2 (1.東京大学、2.富山大学、3.有限会社風水土)

キーワード:断層露頭、地表変状、若山川、令和6年能登半島地震

令和6年1月1日に発生した能登半島地震(マグニチュード7.6)の地震に伴い,珠洲市若山町を流れる若山川沿いの谷底平野に高さ1~2mの急崖を伴う背斜状の地表変状が生じた.これらの地表変状の一部は延武地区や中地区において既存の崖地形に沿って出現していることから,過去にも同様の変形が生じたことが示唆された.令和6年9月には能登半島豪雨が発生し,珠洲市,輪島市を中心に甚大な被害が生じた.若山川では,豪雨に伴う氾濫によって多くの地点で河岸侵食が生じ,河川沿いに多数の露頭が表れた.地表変状は蛇行する若山川と多くの地点で交差しており,その交差地点の一部において断層露頭が認められた.数多くの断層露頭が出現している可能性があることから,若山川沿いの踏査を行った.特に地表変状と交差する地点を重点的に調査した結果,複数地点において断層露頭が認められた.その中で,河川性の堆積物が断層によって切断・変位しており,過去の活動履歴に関する情報が期待できる3露頭を選定し,観察と記載を行った.観察に際しては,露頭の整形,写真撮影を行うとともに,露頭が平面形状をしていないことから,iPhone 15 Pro付属のLiDARセンサーを使用し3次元形状を取得した.また,RTK-GNSSにより,露頭位置を計測した.観察後,放射性炭素年代測定のための試料を採取した.以下に観察を行った露頭について述べる.

延武露頭(WKG-OC1)
南に流下する地点の左岸に位置し,河岸侵食によって地表変状と河川の交差箇所が侵食され北上がりの断層が露出していた.隆起側はほぼ泥岩であるが,低下側には腐植質シルト及び砂礫,砂礫まじりシルトが認められた.低下側の断層近傍では砂礫層の引きずり構造,礫の回転が認められた.隆起側の泥岩は低下側には認められず,少なくとも2m以上の落差が生じていると考えられる.地表付近において能登半地震時生じた変位は約30cm程度であることから,過去に繰り返し活動していたことが推定される.

中露頭(WKG-OC3)
南南東に流下する地点の右岸に位置し,河岸侵食によって地表変状と河川の交差箇所が侵食され断層露頭が露出していた.ほぼ垂直な南上がりの断層が露頭下部に認められた.それを直接覆う礫層とその上位の砂礫-シルト互層は断層付近を頂部とする凸型の堆積構造を示していた.隆起側の表層直下の地層はほぼ水平であるため,傾斜不整合で砂礫-シルト互層と接する.この関係は傾斜不整合がイベントに伴って形成されたことを示唆しており,令和6年能登半島地震より以前の活動と推定される.

宗末露頭(WKG-OC7:標高62m付近)
北北西に流下する地点の右岸に位置し,河岸侵食によって段丘礫層が約200mにわたって露出していた.断層露頭はその中ほどに位置し,北西側が上盤側となる逆断層が認められた.断層は,末端部において多数に分岐しており,上盤側の泥岩層が著しく破砕されていた.断層沿いに亀裂や空隙が多数認められたことと,洪水前は地表部に約20~30cmの落差が生じていたとみられることから,能登半島地震時に活動したことが推定される.上盤側では,泥岩層を河川性の礫層が直接覆っており,その礫層上面と低下側の礫層上面の高度差は約1m程度であった.低下側には礫層上部に上盤側に認められないシルト質の堆積物が存在すること,礫層上面の高度差が能登半島地震時の変位を説明できないことから,繰り返し活動していると推定される.

複数の露頭について観察した結果,本地表変状が繰り返し活動しており,過去にも今回と同様の変位を生じさせていたことが推定された.本発表では,露頭観察結果及び年代測定結果を踏まえ,地表変状の活動性について議論する.