日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 活断層と古地震

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、矢部 優(産業技術総合研究所)、大橋 聖和((国研)産業技術総合研究所)、楮原 京子(山口大学)

17:15 〜 19:15

[SSS14-P10] メタンマイグレーションパスとしての青沢断層の役割:-空間連続性とメタン起源についての考察

*下茂 道人1丹羽 正和2、横井 悟3八木 浩司1徳永 朋祥4 (1.公益財団法人 深田地質研究所、2.日本原子力研究開発機構、3.公益財団法人 地球環境産業技術研究機構、4.東京大学)

キーワード:庄内平野東縁断層帯、青沢断層、微量ガス滲出、地質起源メタン、キャビティリングダウン分光法

はじめに
庄内平野東縁部には、複数条の逆断層からなる庄内平野東縁断層帯が分布しており、後期更新世段丘面の背斜上隆起や撓曲帯の発達が認められている。しかし、庄内平野と出羽山地西縁を限る青沢断層は、鳥海火山噴出物を変位させていないこと、また、この断層による段丘面の変位が認められないことから、活断層とは認識されていない。一方、当該地域には中新世中期の草薙層珪質頁岩が堆積し、東余目ガス田や余目油田の石油根源岩となっている。
著者らは、地下深部からのガスマイグレーションの経路としての断層の役割に焦点を当て、石油貯留層からの極微量なメタン滲出の検知を目的として、これらの断層を通過する測線において地表付近のメタン濃度を測定した。

測定内容
メタン測定には、近年小型化・高精度化が進んでいるレーザー光共振器による吸収分光法を用いた。測定は、可搬型の測定装置を車両に搭載し、外気をチューブで吸引しながら低速度(約20km/時)で走行し、地表付近のメタン濃度を記録する車載測定を主体とし、一部の地点では徒歩測定を実施した。
これまでの調査では、相沢川上流北俣付近および中野俣沢において、断層が想定される地点で最大20ppm程度の明瞭なメタン濃度上昇を確認し、メタンの上昇が断層付近および青沢玄武岩層が分布する地域に限定されることを報告してきた。本研究では、測定領域を南方に延長し、複数の沢沿いの道路で車載測定を実施するとともに、採取したガスの地化学分析を行い、メタンの起源を調べた。

測定結果
・メタンアノマリの再現性を確認
相沢川上流北俣付近および中野俣沢において、メタンアノマリの再現性を確認し、青沢断層周辺における継続的なメタン滲出を明らかにした。
・南方への測定範囲拡張と新たなメタンアノマリの検出
測定範囲を南方へ拡張し、複数の沢沿いで青沢断層が想定される地点においてメタンアノマリを確認。
特に、最南端の立谷沢川付近では、最大約23ppmのメタン濃度上昇を検出した。
メタンの起源解析
採取したガスの炭化水素組成および炭素同位体比の分析により、滲出メタンは熱分解起源であることが強く示唆された。

考察・結論
以上の結果から、青沢断層およびその周辺の玄武岩層が、少なくとも南北約33kmにわたり連続するメタンの移動経路(ガスマイグレーションパス)として現在も機能していることが明らかになった。さらに、滲出メタンが熱分解起源であることから、青沢断層あるいはその西側に派生する断層の前面において、草薙層(根源岩)が十分に埋没する地域が、余目油田や東余目ガス田のキッチンとなる可能性を示唆する。
また、本研究により、レーザー分光法技術(キャビティリングダウン分光法など)を用いた高精度メタン測定が、断層調査の新たなツールの一つとして有望であることも示された。