日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 活断層と古地震

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、矢部 優(産業技術総合研究所)、大橋 聖和((国研)産業技術総合研究所)、楮原 京子(山口大学)

17:15 〜 19:15

[SSS14-P11] 伊勢湾西岸における津沖撓曲の雲出川低地への連続性

*佐藤 善輝1小松原 琢1 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター)

キーワード:津沖撓曲、海底活断層、ボーリング資料、布引山地東縁断層帯、雲出川低地

伊勢湾西岸に位置する伊勢平野は「近畿三角帯」の南東端に位置し,養老―桑名―四日市断層帯や布引山地東縁断層帯東部・西部などの陸域の活断層に加えて,海域にも鈴鹿沖断層や白子-野間断層などの活断層が分布する(地震調査研究推進本部2005;鈴木ほか2010など).このうち伊勢平野中部では,音波探査によって津市の沖約3km付近に北北東-南南西走向の「津沖撓曲」が認定されており(岩淵ほか,2000),完新世に活動した可能性も指摘されている(岡村ほか,2013).地震調査研究推進本部(2005)は,津沖撓曲を布引山地東縁断層帯東部の一部と解釈し,北側の千里断層や南側の高茶屋断層と一連の構造を成すと考えられている.岡村ほか(2013)は津沖撓曲の南端を海域(北緯34°42′,東経136°33′付近)としたが,南東側に活構造が分布することから,さらに南側に構造が連続する可能性を指摘している.
産総所地質調査総合センターでは「伊勢湾・三河湾沿岸域における地質・活断層調査」を実施しており,上記の津沖撓曲の連続性に関する問題点を鑑み,当該地域における第四系地下地質や活構造についても調査を進めてきた.安濃川・志登茂川・岩田川の河口部と雲出川下流低地における既存ボーリング資料を集中的に収集し,ボーリング資料解析システムを用いて,沖積層基底や最終間氷期の海成泥層,基盤岩などの深度分布を調べ,地層変位について検討した.
伊勢平野中部の沿岸部では沖積低地の地下に埋没した複数の更新世段丘が認められる.段丘構成層にはN値5~20程度を示す貝化石混じりの泥質堆積物が認められ,層厚5~20 m程度の砂礫層によって覆われる.層序・層相からこの泥質堆積物は内湾などで堆積した海成層の可能性が高く,鈴鹿市白子周辺ではサルスベリLagerstroemiaの花粉化石が多産することから最終間氷期(MIS5e)の海成層と解釈されている(佐藤ほか,2020).安濃川~岩田川河口部では,泥質堆積物上面を側方へ連続性よく追跡することができ,概ね標高-30~-32 m付近に位置する.泥質堆積物上面は東側(海側)に向けて緩やかに深くなる傾向を示すが,雲出古川左岸において数100 mの区間で高度が4.6~8.8 m東に急低下することが確認された.当該箇所では泥質堆積物の上面だけでなく基底も同様に高度を急減させており,河川などによる侵食ではなく,断層変位に起因する可能性が高い.また,沖積層基底(埋没段丘面の砂礫層上面を含む)が津沖撓曲の南側で高度が数 m程度低下する.これらは津沖撓曲が雲出川低地の陸域まで延長する可能性を示唆する.この場合,陸上を含めた津沖撓曲の全長は,岡村ほか(2013)によって示された7kmより長く,12km程度となる可能性が指摘される.
仮に泥質堆積物がMIS5e期(約12万年前)に堆積したと仮定すると,鉛直方向の平均変位速度は0.04~0.07 m/kyと算定される.この推定値は音波探査で確認されている海域における鉛直方向の平均変位速度0.12 m/ky(岡村ほか,2013)と比べて小さい.また,高茶屋断層以南における布引山地東縁断層帯東部の平均変位速度(0.03~0.14 m/ky,三重県,2000)と比較すると,同程度~やや小さいといえる.
なお,ボーリング資料の解析からは,沖積層に明らかな変位は確認されなかった.これは現在の雲出川河口部に土砂が供給されるようになったのが5~6ka以降で(川瀬,2003;Funabiki et al., 2010),津沖撓曲の最新活動時期(6.2~6.8ka)よりも新しいため,堆積物の変位として検出困難であることに起因する可能性がある.

引用文献
Funabiki, A. et al. (2010) 第四紀研究,49,201–218.
岩淵 洋ほか(2000)水路部研究報告,36,73–96.
地震調査研究推進本部(2005)布引山地東縁断層帯の評価.27p.
川瀬久美子(2003)地理学評論,76,211–230.
三重県(2000)平成11年度地震関係基礎調査交付金「布引山地東縁断層帯に関する調査」成果報告書.
岡村行信ほか(2013)活断層・古地震研究報告,13,187–232.
鈴木康弘ほか(2010)都市圏活断層図 伊勢平野の活断層 解説書.国土地理院技術資料D・1-No. 540.