日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT39] 空中からの地球計測とモニタリング

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小山 崇夫(東京大学地震研究所)、楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、上田 匠(早稲田大学)、座長:小山 崇夫(東京大学地震研究所)、楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、上田 匠(早稲田大学)

09:15 〜 09:30

[STT39-01] UAVを用いた土砂災害緊急調査におけるAI画像解析とマルチスペクトルデータの活用

*小野 秀史1、藤原 康正1、荻野 祥向2、松島 翔2、長内 涼3、村瀬 知彦3、高良 洋平4、今村 翔之4 (1.株式会社エイト日本技術開発、2.金井度量衡株式会社、3.株式会社システム計画研究所、4.エバ・ジャパン株式会社)

キーワード:無人航空機(UAV)、土砂災害緊急調査、AI画像解析、マルチスペクトルイメージ、発災箇所・状況の抽出、SfM多視点ステレオ写真測量

1.はじめに
土砂災害緊急調査の支援技術開発を目的として,UAVによる調査方法の高度化について検討を行った.発災箇所の抽出と状況把握を迅速に行うため,AI画像解析の活用を検討している.また,物性情報の付加として,マルチスペクトルデータの活用を検討している.検討の進め方として,比較的コストがかからない条件から出発し,目的や要求内容に応じて要素技術を加えてゆくものとした.
2.発災箇所判別におけるAI画像解析の活用
UAV撮影画像に対するAI画像解析の活用を検討した.災害時にクラウドサービスが使用できない状況を想定し,高機能なサーバを必要としないエッジ型のシステム構成とした.AIエンジンのアルゴリズムにはセマンティックセグメンテーションを採用している.学習情報としては,画像の色情報(明度/彩度/色相)だけでなく,形状やテクスチャー,隣接する画素間の連関性等が解析に用いられる.インターフェースは,AIに関する専門知識がなくとも操作が可能なものとした.AI画像解析の手順を以下に示す.1)教師データの準備・学習,2)収集した静止画による学習・アノテーションの実行,3)学習結果の検証評価,4)学習繰り返しによる解析精度向上.
3.UAV動画・静止画からの発災箇所・状況の抽出
UAV撮影動画から発災情報を自動抽出するための支援ツールを作成した.自動抽出ツールの動作手順を以下に示す.1)動画からAI画像解析に使用する静止画を選出.2)選出した静止画のAI画像解析.3)画像ファイルの自動分類.4)分類した画像ファイルのリスト掃き出し.5)抽出リストに位置情報を紐づけ.
動画から抽出した静止画には,実用的な解像度の限界があるため,AI画像解析の結果精度の向上を期待して,SfM又はこれに準じた撮影方法による静止画の利用を検討した.これは,三次元点群の作成を前提としたSfM多視点ステレオ写真測量では,空間的欠損のない連続的な高解像度の静止画像を取得できるためである.
4.オルソ画像のAI画像解析
SfM-MVS解析によって作成された点群からオルソ画像を構築できる.このオルソ画像を対象としたAI画像解析について検討した.一般的にオルソ画像のデータ容量は膨大なため,オルソ画像全体を一度に解析するには相応な性能のシステムや時間を要する.そこで,まずオルソ画像全体を適宜な領域に分割し,分割領域ごとにAI画像解析を行う方法を用いた.解析処理後に各領域を統合する.結果を検証すると,空間的な広がりがある崩壊箇所や移動土塊は良好な摘出を確認した.一方,微地形や微細な亀裂・断裂の識別は容易ではなかった.機械学習に用いる画像の解像度の向上に加え,変状の特徴を十分に学習するための教師データのバリエーションやアノテーションの適切な設定が課題である.
5.SfM解析とLiDARによる点群データ
SfM-MVSから得られるDSMは,樹木等の植生の影響により裸地でない限り地盤面の標高情報は得られない.このため,斜面崩壊・地すべり地に特有な変形・変状構造や断裂・亀裂等の情報取得には限界がある.近年,比較的低コストながら精密なDEMの取得に必要な性能を満たすLiDAR搭載コンシューマ型UAVが登場し,災害調査でも活躍の場が広がってきている.SfMによる点群データとLiDARによる点群データを比較し,またこれらの連結性を評価した.結果として,位置情報の取得に関しGNSSにRTKやPPKを組み合わせた条件であれば,両方法とも十分な精度の点群データが得られ,それらデータの連結も特段の問題がないことを確認した.
6.マルチスペクトルデータの活用
緊急調査における発災情報の取得に関し,可視光領域に加えて近赤外領域のマルチスペクトルデータの活用が有効である.近赤外マルチスペクトルにより,土壌・岩石の組成識別,植生域分離,土壌水分(体積含水率)等の評価が行える.これらの情報は,地形の変位・変状の直接的な情報と併せて斜面崩壊・地すべり・土石流・河道閉塞等の発生予測や拡大把握の重要な情報となる.今回は,定量化に関する検討事例を示す.今回の検討で使用したマルチスペクトルカメラシステムの特徴は,定点撮影が可能なことである.従来の一般的なUAV搭載マルチスペクトルカメラは,一定の領域をスキャニングして画像を取得する方式のため,平坦地では問題ないが山間地のような複雑な地形を対象とするとデータの取得が困難であった.定点撮影方式であれば複雑な地形への対応が可能であり,またUAVの位置情報をもとに撮影対象箇所の空間位置の紐づけが可能である.
7.おわりに-課題と展開
発災時の緊急調査を想定し,UAV撮像の有効活用方法を検討した.結果として一定の目標を達成できた.一方,植生のかかる微地形解析では,DSM・二次元画像データ解析の適用限界を確認した.今後は,LiDARデータを含めた解析・活用法の検討を進める.また,マルチスペクトルデータや空中電磁探査(比抵抗)等の物性情報と空間位置情報のリンクに関する検討を要する.