日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT39] 空中からの地球計測とモニタリング

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小山 崇夫(東京大学地震研究所)、楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、上田 匠(早稲田大学)、座長:小山 崇夫(東京大学地震研究所)、楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、上田 匠(早稲田大学)

09:30 〜 09:45

[STT39-02] 重力偏差テンソルΔgzz成分を用いた二層構造逆解析

*楠本 成寿1小林 蒼2堀川 卓哉2 (1.京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設、2.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:重力偏差、二層構造、逆解析、亀川断層

重力異常Δgzを用いた逆解析法による地下構造推定には,層構造を仮定するモデルと層構造を仮定しないモデルがある。地下に層構造を仮定する基本モデルは二層構造である。多層構造の解析を行う場合は,適当なフィルタと二層構造解析を組み合わせる方法がよく採用される。二層構造解析手法には,フーリエ級数法(Tsuboi and Fuchida, 1937)をはじめ,萩原の方法(萩原, 1987)やBottの方法(Bott, 1960)などがよく知られている。本研究では,Bottの方法を重力偏差テンソルのΔgzz成分を用いた二層構造逆解析手法に拡張した。重力偏差テンソルのΔgzz成分は空中重力偏差探査において地下構造解析によく用いられる。
  Bott (1960)の方法は,Δgzから基盤形状を反復計算により推定する手法である。反復計算では,観測重力異常値と仮定されたモデルから推定される重力異常値の差を,厚さhのブーゲー板の引力と等価とおき,hをモデルの修正量としている。Δgzを用いたBottの方法を,Δgzzを用いた解析手法に拡張するためには,ブーゲー板上でΔgzzを与える式をモデルの補正量計算に採用すればよい。そこで円筒直上でのΔgzzを与える式を導出し,観測値と計算値の差をモデルの修正値に変換する補正項にこの導出された式を適用した。
  テスト用のモデルを用いて数値テストを行ったところ,この補正項は単独では解の収束に結びつかないことが判明した。そこで解決策として収束を促進させるパラメータωを導入した。このパラメータωの特性を数値テストで調べたところ,ωは0.16より小さい場合に解は収束し,ωの値が小さいほど反復計算回数が増大することが分かった。
  本手法では,解析に先立って地下構造モデルの初期値を設定する。このような解析手法では,解の初期値依存性が問題となる。本手法もその例外ではなく,初期値に依存した地下構造を返す。この問題を回避,或いは軽減するためには,地震波探査結果やボーリングデータ,あるいは重力偏差のパワースペクトル解析結果を初期値として使用する。
  本解析手法の実データへの適用例として,大分県別府市に位置する亀川断層の重力探査測線を選んだ。本研究ではΔgzzを用いるため,フーリエ変換による手法(kusumoto, 2017)により,ΔgzをΔgzzに変換した。亀川断層の存在が示唆される位置に顕著なΔgzzのピークがみられた。得られたΔgzzに本手法を適用した結果,亀川断層の存在が示唆される位置に落差20mの断層構造が推定された。さらに亀川断層周辺部に未知の階段状構造に起因すると思われるΔgzzのピークが複数みられた。これらの異常も数mから十数mの落差が地下浅部に推定された。しかしながらこれらの構造が断層であるか否かの判断は補助データがないため難しい。今後の詳細な調査が望まれる。

参考文献:
Bott, M. H. P. (1960): The use of rapid digital computing methods for direct gravity interpretation of sedimentary basins, Geophys. Jour. Royal Astron. Soc, 3, 63–67, doi: 10.1111/j.1365-246X.1960.tb00065.x
萩原幸男 (1987): 二層構造の新しい重力解析法, 測地学会誌, 33, 315-320.
Kusumoto, S. (2017): Eigenvector of gravity gradient tensor for estimating fault dips considering fault type, Prog. Earth Planet. Sci., 4: 15. doi: 10. 1186/ s40645-017- 0130-0
Tsuboi, C., and Fuchida, T. (1937): Relations between gravity and corresponding subterranean mass distribution, Bull. Eathq. Res. Inst., 15, 636-649.