日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT39] 空中からの地球計測とモニタリング

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小山 崇夫(東京大学地震研究所)、楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、上田 匠(早稲田大学)

17:15 〜 19:15

[STT39-P02] ドローン繰り返し空中磁気測量による十勝岳の浅部熱活動の理解

*保苅 健陽1田中 良2橋本 武志2小山 崇夫3 (1.北海道大学大学院理学院自然史科学専攻、2.北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター、3.東京大学地震研究所)


キーワード:空中磁気測量、ドローン、十勝岳

近年,十勝岳山頂近くの62-II火口周辺では,新たな噴気地帯の形成や地温異常域の拡大が確認されている.これらの表面現象の発現に伴い,地下浅部においても熱水・火山ガスの新たな供給経路が形成され,経路周辺では局所的な温度変化や熱水変質の進行が想像される.特に,熱水変質は山体崩壊の要因となる可能性があり(Roverato et al., 2021),火山体内部の熱水変質分布やそれに関連する温度変化を把握することは,崩壊発生場の予測につながる.本研究では空中磁気測量を利用して,十勝岳の地下浅部における熱活動の可視化を目指した.
 磁気測量は,地下の温度変化や変質作用に関する情報を提供する.特に,空中磁気測量は地形によるアクセスの制限がないため,火山浅部の熱活動を効率的に調べることができる.最近では,運用コストの低いドローン空中磁気測量が実用化されたことで,繰り返し観測も実施しやすくなっている.本研究では,2023年と2024年に地熱拡大域周辺でドローン空中磁気測量を実施し,地形に沿った磁気データの取得に成功した.観測したデータから火山体起源の磁気異常とその時間変化を抽出し,逆解析を利用して地下浅部の磁化強度と磁化変化の3次元分布を明らかにした.
 解析には,Koyama et al. (2021)の3次元磁気インバージョン手法を利用した.磁気異常データから推定された磁化構造モデルでは,62-II火口直下に柱状の低磁化領域が描出され,噴気火道の周辺の高温域や熱水変質域が捉えられた.また,地下浅部の磁化強度分布は火口地形や地質分布とよく対応しており,それらを境界とする熱流体の流動経路の存在が示唆された.一方,磁化変化モデルでは62-II火口浅部に着磁域,地熱拡大域において消磁域が描出され,新たな流動経路の形成に伴う地下浅部の熱供給変化が示唆された.また,地熱拡大域における消磁域の形状は,斜面を取り囲む熱水変質の進行を示唆しており,十勝岳の斜面安定性が低下傾向にあると考えられる.今後,斜面の安定性解析(例えばScoops3D, Reid et al., 2015)を用いて,崩壊の可能性がある不安定な斜面の量を明らかにし,山体崩壊に向けた効果的な防災対策を実現する必要がある.

謝辞:
本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の支援を受けました.