日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT40] 合成開口レーダーとその応用

2025年5月25日(日) 15:30 〜 17:00 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、姫松 裕志(国土地理院)、朴 慧美(上智大学地球環境学研究科)、木下 陽平(筑波大学)、座長:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)

15:45 〜 16:00

[STT40-08] 長期ペアを組み合わせた干渉SAR時系列解析で捉えた中・長期的な火山性地殻変動

*小林 知勝1宗包 浩志1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:LバンドSAR、ALOS-2、火山性地殻変動

はじめに
ALOS-2衛星の打ち上げ以降,約10年間にわたるSARデータが蓄積されてきており,中・長期の地殻変動を面的に捉える環境が整いつつある.干渉SARは,一般的に,時間の経過とともに干渉性を失い変動計測が困難となるが,当該衛星は干渉性の時間劣化が比較的小さいLバンドセンサを搭載しており,条件が良ければ長期のペアを用いても変動が有意に捉えられる可能性がある.仮にこうした長期ペアから有意な変動を抽出できれば,マグマ蓄積過程を反映する情報として中・長期的な火山活動評価に資することも期待される.こうした背景の下,本研究では,LバンドSAR衛星による長期ペアを利用した時系列解析から火山性地殻変動を抽出した結果について報告する.

データ・解析方法
長期にわたりゆっくりと進行する変動を有意に捉えるには,長期間に蓄積された変動を検出できるよう長期の干渉ペアが必要となる.通常,多くの解析では,干渉性の劣化を考慮して,長期間のペアや軌道間距離の長いペアを除くが,本解析では全干渉ペアを利用した.ただし,長期のペアでは,特に山間部において干渉性の劣化が無視できないものが多いことから,32ルックまで空間分解能を落として,比較的長波長の地殻変動を観測することを目的とした.その結果,最長約8年の観測間隔の干渉SARデータを含めた時系列解析を実施することとなった.なお,本研究では,北海道の活火山を主な対象として本解析を適用した.

結果
 2015年から2023年のデータを用いた解析により,北海道の南西部に定常的に進行する地殻変動を検出した.中でも顕著なものは,倶多楽火山の北部に約1cm/yの速度で定常的に進行する隆起である.これに加えてその北東に,北北西―南南東方向に約50km分布する隆起域も捉えられた.変動の中心は恵庭岳やその北部に位置し,最大約0.5cm/yの速度で定常的に隆起している.樽前山は変動域の南端に位置する.変動域の北部には活火山はないものの,恵庭岳から北北西方向に深部低周波地震が発生しており,この隆起域の広がりと整合する.その他,本解析では,登別温泉における局所的な沈降(最大約6mm/yr),有珠山における山体規模の長期的な沈降,赤井川カルデラ内の隆起(最大約3mm/yr)等の変動も検出した.本講演では,これらの結果を紹介し,長期ペアを用いた解析の有効性について議論する.

謝辞:ここで使用しただいち2号の原初データの所有権は,JAXAにあります.これらのデータは,だいち2号に関する国土地理院とJAXAの間の協定に基づき提供されました.解析に使用した数値気象モデルは,国土地理院と気象庁との協定に基づき提供されたものです.低周波地震の抽出には,気象庁一元化震源データを使用いたしました.