日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT40] 合成開口レーダーとその応用

2025年5月25日(日) 15:30 〜 17:00 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、姫松 裕志(国土地理院)、朴 慧美(上智大学地球環境学研究科)、木下 陽平(筑波大学)、座長:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)

16:30 〜 16:45

[STT40-11] 室内電波試験とALOS-2を使用したL-バンドSARの後方散乱強度と積雪深との関係解析

*宇佐見 星弥1,3、宮﨑 俊之1、田殿 武雄2,3 (1.北海道立総合研究機構、2.宇宙航空研究開発機構、3.北海道大学情報科学院)

キーワード:北海道、電波反射鏡、ベクトルネットワークアナライザ、衛星リモートセンシング

積雪の空間分布を観測することは水循環・資源を把握するうえで重要であり、これまでにも人工衛星に搭載した合成開口レーダ(以下「SAR」)による積雪観測が試みられてきた(田殿ほか 2002など)。中でも、比較的長波長なL-バンドSARは積雪への透過性が高く、X-バンドやC-バンドよりも深い積雪の状態観測が期待できるが、L-バンドSARを用いた積雪観測の研究は他の波長帯より事例が少なく(Tsai et al. 2019)、積雪観測の適用・実証事例の蓄積が求められる。
我々は、宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)が北海道苫小牧市に設置したコーナーリフレクター(以下「CR」)の横に積雪深計を設置し(図1)、陸域観測技術衛星2号(以下「ALOS-2」)が観測したCRの後方散乱強度と積雪深との対応関係を分析した。また、ALOS-2が観測した後方散乱強度の妥当性を検証するために、北海道立総合研究機構が保有する電波暗室およびベクトルネットワークアナライザ(以下「VNA」)を用いて、積雪による後方散乱強度変化の室内実験を行った(図2)。本研究で使用したALOS-2データは、全て南行軌道右向きで日中に観測されたものである(表1)。
図3に、ALOS-2が観測したCRの後方散乱強度画像を示す。無雪期の画像ではCRの反射が鮮明だが、積雪深37.8 cm(No.4)の時に判然としない。図4は、ALOS-2が観測したCRの後方散乱強度(緑色)およびVNA(1.26GHz)で観測した後方散乱強度(青色)と、積雪深との対応をプロットしたものである。この図からは、ALOS-2の方が積雪に対して鋭敏に反応をしていることが読み取れるが、そもそも単純な直線回帰で良いのかという点を含め、積雪深との対応関係を更に精査する必要がある。いずれにしても、積雪深が深くなるほど後方散乱強度は低下しており(負の相関をもち)、これは積雪によるマイクロ波の減衰を示していると考えられる。
永井ほか(2018)は、日中に観測したALOS-2の後方散乱強度と積雪深との間に正の相関があることを報告しているが、少なくとも本研究ではALOS-2およびVNA試験で後方散乱強度と積雪深との間に負の相関を確認した。既往研究で正の相関が得られた理由は定かではないが、積雪の誘電状態やマイクロ波の体積散乱や2回散乱による影響などが考えられ、これらも今後の検討課題である。

謝辞
本研究で使用したALOS-2データは、JAXA第3回地球観測研究公募に基づき提供されました。

引用文献
永井ほか(2018)「だいち2号」を用いた積雪深マップの作成にむけて. JpGU2018年大会, ACC28-04.
田殿ほか(2002)水工学論文集, https://doi.org/10.2208/prohe.46.37
Tsai et al. (2019) Remote Sens., https://doi.org/10.3390/rs11121456