日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT40] 合成開口レーダーとその応用

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、姫松 裕志(国土地理院)、朴 慧美(上智大学地球環境学研究科)、木下 陽平(筑波大学)

17:15 〜 19:15

[STT40-P02] LバンドSAR干渉画像における山岳地域の斜面に生じる位相差の定量的評価に向けた試み

*服部 晃久1小林 知勝1 (1.国土交通省国土地理院)

山岳部を対象としたLバンド干渉SAR(InSAR)解析では、斜面のfar側とnear側で、地殻変動に由来しないと思われる特徴的な位相差が観測されることがある。藤原(2023)は、この位相差が土壌水分量の変化に起因する可能性を指摘しているものの、同研究では主に定性的な議論が中心であり、定量的な評価は十分に行われていない。この現象の原因を詳細に解明することは、干渉画像に含まれるノイズ要因を正しく把握し、山岳地域における地殻変動を精度高く監視するうえで重要である。
本研究では、ALOS-2による複数時期の観測データ(SM1モードの昇行(パス122、U2-7)および降行(パス17、U2-8))を用いて、北海道の日高山脈を対象にSAR干渉解析を実施した。大気補正および電離層補正を行ったうえで、短波長成分のみを抽出する空間フィルタを適用し、長波長の位相変動を除去した干渉画像を作成した。また、数値標高データから各画素の斜面方向と傾斜角を求め、それらと干渉画像中の位相差やコヒーレンス分布の関係を調べた。さらに、アメダス観測による降水量の時系列データやGLDAS(Global Land Data Assimilation System)に基づく土壌水分量の推移を取得し、位相差との関連を検討した。
解析の結果、特に山のfar側ではコヒーレンスが低く位相がばらつく一方、near側ではコヒーレンスが高く、半数を超える干渉ペアで斜面に沿った位相差が確認された。この位相差は観測日の間隔や垂直基線長に大きく左右されず、特定の観測日を含む干渉画像で顕著に表れることが分かった。また、far側とnear側の位相差はマルチルック処理やGoldsteinフィルタによってある程度は軽減されるものの、依然として残る傾向が見受けられた。斜面に沿った位相差と降水量および土壌水分量の推移との関係性について、明確な対応は見られなかったが、降雨が続いた時期に位相差が大きくなるケースも一部で確認され、より詳細な分析の必要性が示唆された。
山岳地域で観測される位相差と土壌水分量などの環境要因との関係は単純には整理できず、今後は地表の散乱特性や植生分布などを考慮した包括的な解析が求められる。本発表では予備的な結果を示すにとどまるが、山岳部に特有の位相差の原因を定量的に明らかにすることは、地殻変動の高精度な監視や災害リスク評価の高度化につながり、今後の観測技術の発展に寄与するものと期待される。

謝辞:本研究で用いたALOS-2データは「陸域観測技術衛星2号観測データ等の高度利用に関する協定」に基づき、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から提供を受けた。原初データの所有権はJAXAにある。気象庁数値気象モデルは、「電子基準点等観測データ及び数値予報格子点データの交換に関する細部取り決め協議書」に基づき、気象庁から提供を受けた。