日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT41] 地震観測・処理システム

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:友澤 裕介(鹿島建設)、久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

17:15 〜 19:15

[STT41-P01] Hi-net最大速度とKiK-net最大速度の比較

*久保 久彦1澤崎 郁1汐見 勝彦1 (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所)

キーワード:Hi-net、最大速度、KiK-net

防災科学技術研究所の高感度地震観測網Hi-netは、平均観測点間隔20kmの高密度で日本全国に整備されており、深さ100∼3,500mの井戸底部に設置された高感度地震計による連続観測を実施している。近年、Hi-net記録に基づく、大地震直後に活発化する余震活動による揺れのハザード評価の研究が進んでいる(Sawazaki et al. 2016; Sawazaki 2021)。これらの研究ではHi-net地中地震計の連続記録を基に、地中での揺れに関する確率を予測している。しかし実際のハザード評価に用いるためには、地中での揺れの確率を地表での揺れの確率に変換することが必須である。そのためには、Hi-netの高感度地震計が観測可能な揺れの強度範囲や地表での揺れとの関係を明らかにする必要がある。そこで本研究では地震時のHi-net地震計の最大速度を、Hi-netに併設されたKiK-netの地表および地中地震計での記録と比較した。
まず2016年熊本地震および2024年能登半島地震の震源域近傍のHi-net観測点の約40地点を選んだ。その際、本震および直後の余震の記録が十分に得られている観測点を選んだ。そして地震時におけるHi-net地中地震計の三成分連続波形記録から最大速度を算出するとともに、共通するイベントでのKiK-net地中地震計・KiK-net地表地震計の三成分トリガー波形記録から最大速度・最大加速度・リアルタイム震度最大値を算出した。なおHi-net連続波形記録に対してMaeda et al. (2011 JGR)の手法によって地震計特性の補正を行うことで、補正前に比べて1Hz以下の低周波数帯の振幅が強調されている。
比較の結果、Hi-net地中地震計とKiK-net地中地震計の最大速度は、0.1 cm/s程度から数cm/sの範囲においてほぼ同じ値となった。最大速度が数 cm/sを超えるとHi-net地中地震計とKiK-net地中地震計で最大速度の値に差が見られた。これらの結果から、計器特性を補正したHi-net地中地震計は0.1 cm/s程度から数cm/sの範囲では問題なく最大速度を記録できていると言える。Hi-net地震計の飽和を調べた汐見ほか(2005)では、地震波の周期によっては1 cm/s程度でも飽和が生じうることを指摘している。今回は、①地震計特性の補正によって周期数秒程度までの揺れを補足できたこと、②Hi-netの飽和は低周波成分の揺れの方が生じやすく(汐見ほか2005)、低周波成分の揺れを励起しにくい中規模内陸地震が今回の主な解析対象であったこと、③地震計の飽和が生じていたとしても軽度の飽和であれば最大速度の値には大きく影響しないこと、といった要因から数cm/s程度の最大速度までHi-net地中地震計が記録できたと考えられる。なおHi-net観測装置の特性上、数cm/sよりも大きな地震動では地震計の飽和の影響が大きくなり、記録される最大速度の値は過小となると考えられ、取り扱いには注意が必要である。
Hi-net地中地震計とKiK-net地表地震計の最大速度を比較すると、倍半分程度のばらつきはあるものの、傾きが1に近い線形関係が見られた。このことは、地中地震計と地表地震計の間における地下構造による地震動増幅の影響を評価することによって、Hi-net地中地震計の最大速度から地表での最大速度へと変換可能であることを意味する。