日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT41] 地震観測・処理システム

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:友澤 裕介(鹿島建設)、久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

17:15 〜 19:15

[STT41-P05] 双音叉水晶振動子を用いた周波数変化型加速度トランスデューサの高感度化と常時微動デジタル計測への応用

*轟原 正義1、大戸 正之1、森 遼雅1、吉川 泰史1 (1.セイコーエプソン株式会社 マイクロデバイス事業部)

キーワード:常時微動計測、地盤振動、広帯域計測、Quartz-MEMSトランスデューサ、双音叉水晶振動子、デジタル計測IP

近年、社会インフラの老朽化に伴う維持管理や地盤・構造物ヘルスモニタリングにおいて、微動計測の重要性が高まっている。従来の微動計測では高価な速度型地震計が主に使用されており、多点計測による詳細な振動モード解析や常時モニタリングの実現にはシステムが大掛かりであった。またMEMSセンサは小型・低コストである一方、微小振動の検出に必要な感度・分解能・安定性が不十分という課題があった。特に地盤の卓越周期や構造物の固有振動数を正確に把握するためには、0.1 Hz~50 Hzの広帯域で安定した計測が必要とされ、従来のMEMSセンサではこの要求を満たすことが困難であった。本研究では、これらの課題を解決する高感度加速度トランスデューサおよび、その常時微動計測への応用について報告する。
開発したセンサは、水晶振動子をトランスデューサとして採用し、物理量に対応する共振周波数を参照周波数と比較する方式(Todorokihara et al., Proc. DGON ISS, 2018)を採用した。これにより、従来の静電容量型MEMSセンサで問題となっていた、トランスデューサと読み出し回路の特性による線形性能の劣化を根本的に解決している。周波数出力型センサの特徴として入力レンジと分解能のトレードオフが存在せず、カウンタのビット幅で測定レンジを容易に拡大できるという利点もある。
センサ素子には、高いQ値と高感度、安定したスケールファクタ、バイアスドリフト抑制を実現するため、薄型で狭幅の双音叉型(DETF: Double-Ended Tuning Fork)水晶振動子(RD Andajani et al., IEEE Sensors, 2024)を採用した。本研究では、前世代のセンサから大幅な感度向上を実現するため、リン青銅錘からタングステン錘に変更し、錘質量を増加させた。また、温度変化や外乱に対する安定性を向上させるため、6個のトランスデューサを用いた3ch差動構成を新たに採用した。この差動構成により、温度勾配や機械的応力による影響を一次のオーダーでキャンセルすることが可能となり、長期バイアス安定性が大幅に向上している。
DETFの両端を低融点ガラスでカンチレバーに固定し、カンチレバーの両側にタングステン錘をエポキシ樹脂で固定する構造とした。熱膨張係数を一致させるため、DETFとカンチレバーの両方を水晶で製作している。センサ素子は40×40 mm²の水晶ウエハから高アスペクト比のウエットエッチング(精度~1 µm)で製作した。DETFの厚さは80 µm、幅は50 µmであり、これらの寸法は有限要素解析によって最適化を行っている。また、エッチング液の混合比、液温、循環速度、ウエハ上の共振子配置などの製造パラメータを精密に制御することで、振動アームの幅を高精度に制御し、ウエハ内での均一性と歩留まりの向上を実現した。
真空セラミックパッケージ(9×7×3 mm³)に実装したセンサ素子は、約124kHzのDETF共振周波数(Q値約15,000)と約450 Hzのカンチレバー共振周波数を有し、周波数の十分な差によりDETFとカンチレバー間の干渉を抑制している。差動構成と高感度化により約550 Hz/Gの加速度感度を達成し、微動計測に必要な微小加速度の検出が可能となっている。
読み出し回路には、モアレパターンの位相感度にヒントを得たデジタル計測IP(Todorokihara, IEEE Sensors, 2021)を採用し、6chをFPGAに実装した。これにより、高速かつ高精度な共振周波数の測定を実現している。従来のレシプロカル方式による周波数測定では、高い性能を得るためにミキサやフェーズディテクタなどのアナログ部品が必要であったが、本方式では完全デジタル化を実現し、非線形性の問題を解決している。
試作した3軸加速度センサモジュール(48×24×16 mm³、30 g)は、3.3 Vで動作し、消費電流は40mA未満という低消費電力を実現した。性能評価の結果、-30℃から+85℃の温度範囲でバイアス安定性0.5 mG以下、スケールファクタ安定性500×10-6 以下を達成し、帯域1~10 Hzでノイズ0.02µG/√Hzという高い性能(Fig. 1)を実現した。これらの性能は、微動計測における微小振動の検出に十分な性能である。
発表では、本センサを用いた実際の微動計測結果についても報告する。特に、従来の微動計との比較を通じて、0.1 Hz~50 Hzの帯域における計測性能の検証結果を示し、地盤・構造物の振動特性評価における有効性を実証する。また、小型・低コストという特徴を活かした多点計測の応用例についても紹介する。